はじめに
私の属性は以下の通りです。
- 元Webエンジニアで現介護士の30歳
- 親の介護施設を継ぐ予定で介護業界に転職
- ものづくりは好きなので空いた時間でWebアプリの開発をしている
今回内製化(リリース)したアプリ
今回、リリースしたアプリは介護の連絡帳作成アプリ 「らくケアノート」 です。
利用者ごとの情報を入力した後に紙で一括印刷できるという至ってシンプルなものです。
介護現場の現状
「らくケアノート」を作った経緯や業界について説明します。
人手不足
厚労省の調査結果からもわかるように介護現場の人手不足が顕著になっています。
要介護(支援)認定者が増えているのにもかかわらず、職員数が微増もしくは減少 となっています。
私が所属するデイサービスでは、小さい規模の事業所ではありますが、長く勤めてくださる職員さんや定期的に応募があるので、幸いにも人手不足はありませんが、業界全体では人手が不足しています。
倒産件数の増加
介護事業所は、基本的に「介護報酬」によって運営されます。
介護事業の特徴として利用者を安定的に集めることができれば、一定の売上を立てることができます。言い換えれば、安定した収入を確保できる と言っていいかもしれません。
逆にいうと売上は基本的に利用者数に比例し、他業種の企業とは違い大きな売上を立てることが難しいということです。
また、「介護報酬」は国によって決められますので、 報酬が改定され引き下げられれば経営の危機 になってしまうという問題点があります。
実際に2024年度の介護事業者の倒産件数は、過去最大となっています。
倒産の原因として、人手不足というのもありますが、「訪問介護事業」の報酬改定などの 「売上不振」 が原因で倒産件数が増えている模様です。
東京商工リサーチ - 2024年「介護事業者」倒産が過去最多の172件 「訪問介護」が急増、小規模事業者の淘汰加速
ICT・DX化について
ICT・DX化の面から見ると「介護」はまだまだ発展途上のところがあるかと思います。
国も介護現場の業務負担軽減を推進するために、ICT・DX化の支援や補助を行っています。
ツールはたくさんあります(下画像参照)が、資金繰りの面 や 現場と経営層の温度感のギャップ などもあり、ICT化がイマイチ進んでいないように見えます。
国(国保連)にデータを提出する際に利用するソフトや施設情報を公開するためのWebアプリなどは国の施策にもかかわらず、各事業所が料金を負担することになっています。
私の考えでは、国の机上の空論が原因でICT・DX化が遅れているのも一因と考えています。
なぜ「らくケアノート」を内製化したのか
上記で述べたように以下の点が多くの施設で問題としています。
- 資金繰り
- 人手不足
- ICT・DX化による業務効率化
実際、私の勤務しているデイサービスでもいわゆるノート型の連絡帳を使っており、
責任者が事務作業の合間の時間を使って手書きでバイタルなどを記入しています。
勤務先では、毎日15名程度の利用者なので手書きでも問題ないですが、他の施設ではより多くの利用者を抱えているため、その人数分の記入時間がかかります。
そのため、カンタンに作成できる連絡帳アプリがあったらいいなと感じ作成に至りました。
「らくケアノート」の特徴
前提
前提として、パソコンに慣れていない方にも使っていただきたいので、できるだけ機能は省きました。
無料・登録不要
各施設がコスト削減を行っているのに、有料化していたら元も子もないので、無料 で使えるようにしています。
また、個人的には会員登録系の作業は面倒くさいので 登録不要 で使えるようにしています。
サーバーに送信しない
アプリの性質上、個人情報を扱うので情報の漏洩には注意したいです。
そのため、最初の要件定義の段階で、サーバーへの送信は検討せず、クライアント側で処理が完結するように決めました。
保存機能
やはりブラウザ上で入力作業していると間違ってタブを閉じてしまうことがあります。(私がよくやります💦)
閉じてしまったタブを再度復元すると、さっきまで入力していた内容が消えてしまったとなると1から入力しないといけません。
それを防ぐためにもブラウザのIndexedDBを使った保存機能を作成しました。
コピー機能
「作業が楽になってほしい」という思いから、できるだけ同じ入力を繰り返さないようにコピー機能をつけました。
技術スタック
- Next.js
- Cloud Run(GCP)
今後の展望
今回、MVP(Minimum Viable Product)でリリースしました。
機能面もデザイン面もまだまだ改善の余地があります。
特にデザインでは、直感で実装した部分が多いため、改善を施していきたいです。
また、無料・登録不要で提供していますが、いずれは収益化も検討していきます。
直近としてはユーザーの声や利用状況なども分析しつつ、機能アップデートに励みたいと思います。
最後に
介護の業界というのは、なかなか良いイメージを持たれる方が少ないかなと個人的に思っています。
いわゆる介護は3K(「きつい」「汚い」「危険」)と呼ばれる職種ではありますが、実際に体験するとその仕事のありがたさを感じるとともに、もっとエッセンシャルワーカーの評価がもっと上がってほしいと思っています。
そういった中で少しでも介護士の負担軽減やイメージ向上や、給与アップなどについて、これからもITを使って変えられないか考えていきたいです。
最後までご覧いただきありがとうございました。