この記事は 株式会社 LOB Advent Calendar 2018 21日目の記事です。
Coursera はデータサイエンスや機械学習といった文脈で語られることが多いですが、それ以外にも多種多様な講座が教育機関および企業から提供されています。本稿は、その中でも Google Cloud がオフィシャルに提供する GCP の入門講座を紹介するものです。私はもともと GCP 認定の資格勉強のために始めたのですが、講座としてのクオリティの高さも相まって最後まで楽しく学べました。後述しますが、受講料金の方もなんとかなるので、GCP の習得に意欲がある方は気軽に始めてみてはいかがでしょうか。
Coursera とは
Udemy, edX を始めとする MOOC サービスの一つです。MOOC(ムーク)とは "Massive Open Online Course" の略で、直訳すると「大規模公開オンライン講座」になります。世界的にも有名な大学の授業をオンラインで誰でも受けられるとして世界的に広がっていて、教育機関の他に個人や企業によるオンライン講座も現在では多く開かれています。
特に Coursera は、スタンフォード大学 Ng 教授の Machine Learning コースをきっかけに、日本でも認知度が大きく上がったサービスです。このコースは機械学習界隈で最もスタンダードな入門教材の一つで、私もこのコースを受講した経緯でアカウントを持っていました。
Coursera の GCP 講座
Coursera では、数週間に渡った受講を想定した「コース」と、コースを組み合わせた「専門講座(Specialization)」の二つで構成されます。コース単位で各トピックを学び、専門講座に含まれる一連のコースを通して、想定する技能が身につくというイメージです。また、受講料の支払いはコース単位でも可能なので、自分の気になるトピックのみを受講したい場合は、コース単位での受講も可能です。
Google Cloud は執筆時点で 10 の専門講座と、52 のコースを提供していますが、今回の記事ではその中でも最もベーシックな「Architecting with Google Cloud Platform Specialization」を取り上げます。コース構成は次の通りで、GCP の概観、各サービスの特集、事例紹介の大きく3つに分かれます。
コース | レベル | 講義内容 |
---|---|---|
Google Cloud Platform Fundamentals: Core Infrastructure | 約10時間 | Conpute Engine, Cloud Storage などの主要サービスを一気にさらう。 |
Essential Cloud Infrastructure: Foundation | 約6時間 | Conpute Engine、ネットワーク仕様について。 |
Essential Cloud Infrastructure: Core Services | 約7時間 | Cloud IAM、各種ストレージサービス、Cloud Resource Manager、Stack Driver について。 |
Elastic Cloud Infrastructure: Scaling and Automation | 約7時間 | 各種ネットワークサービス、負荷分散、オートスケーリング、Cloud API による自動化、デプロイ関連サービス、ストリーミング処理基盤について。 |
Elastic Cloud Infrastructure: Containers and Services | 約3時間 | Cloud Pub/Sub、Cloud Functions、コードリポジトリ、AppEngine、Kubernetes Engine について。 |
Reliable Cloud Infrastructure: Design and Process | 約10時間 | いくつかのユースケースから GCP を使ったサービス設計や運用技術を学ぶ。 |
初心者向けのまとまった資料が得られる
ここから具体的に、Coursera で GCP を習得するメリットを紹介します。まず一つ目は、講座で用いられる情報や資料のクオリティが高いことです。ファーストパーティである Google Cloud が提供しているという点で、信頼性に疑いの余地がありません。これはサードパーティが提供する講座や書籍からは、得られないメリットです。
また、講座の中で提示される図や表が、整理だっていて非常に分かりやすいです。例えば、GCP では6種類のストレージサービスが用意されていますが、中には特徴の似通ったものもあったりと覚え始めの時期はその違いに戸惑います。それに対して講座の中では、各ストレージサービスの機能比較表やどのストレージサービスが適しているかを見つけられるフローチャートといった資料が提供されます。
もちろん本番投入といったガチユースしていく上では詳細なドキュメントが役に立ちますし、地道に読み続けていくというのも学習方法の一つだと思います。しかし、その方法はあまり効率がよくありませんし、眠たくなりがちです。学習初期の時点ではこういったよくまとまった資料の方が、大局観が得られて知識の定着が捗ります。
Qwiklabs による体験学習
Coursera の特徴の一つは、提供される講座の多くがクイズ形式の課題を設けていることです。修了条件としてこれをこなして、一定以上の正答率を達成する必要があります。さらに講座修了には期限が設けられていて、一定のバッファが設けられているものの計画的な受講が必要になります。さらに GCP 講座では、これらに加えて Qwiklabs を利用した実技課題が設けられています。こちらも修了条件に含まれていて、実技の中で一定の条件を達成する必要があります。
補足しておくと Qwiklabs というのは、クラウドサービスの体験学習を売りにしたプラットフォームです。現在のところ GCP と AWS を取り扱っていて、このサービス単体でも利用可能です。なので Coursera で物足りなかったトピックに関して、Qwiklabs の講座で補足するといった使い方もできます。
空いた時間でサクッと受講できる
ビデオオンデマンドなサービスなので、スクールと違ってブラウザとインターネット環境があればいつでもどこでも受講することができます。あと、Coursera のモバイルアプリが提供されている点が個人的に魅力的でした。GCP 講座についても実技課題を除いて、全コースに関してモバイル環境からの受講が可能です。
私の場合はあらかじめ動画データをダウンロードしておいて、通勤中に受講するというのをやっていました。家庭を持つ身としては自由に使える時間も限られているので、自宅で PC の前に座らないと受講できなかったとすると、受講を継続できなかったと思います。
受講料金の心配は不要
料金設定は私が履修した時点で、1コースあたり 5702 円の買い切り、もしくは1専門講座あたりの 5588 円の月次サブスクリプションの2種類でした。一見すると若干高いんですが、スクールに通うことと比べれば時間も費用も節約できます。もちろん、ドキュメントや書籍ベースでの学習であればかなり費用が抑えられますが、そういった学習で必要になる集中力を保つ工夫や情報を収集するコストの対価として料金を支払ったという認識です。
ただし、専門講座のコースを全て買い切りで支払うと3万越えなので、経済的に支払うのがムリって人も出てくると思います。実は Coursera には学資援助(Financial Aid)のシステムがあって、このシステムを利用することで履修にあたって必要な支払いを免除できます。なので「GCP 覚えたいけどそんな余裕ないよ」という学生や所得の低い方も躊躇する必要はありません。
まとめ
GCP のサービス開始からすでに10年が経過し、昨今のエンジニアリングにおいてクラウドインフラは無視できない存在となりました。私も一エンジニアとしてクラウドインフラの重要性を感じていたものの、前職で担当していたサービスが100%オンプレミスだったこともあり、なかなかキャッチアップできずにいました。後追いは後追いなりに完成度の高い教育サービスを利用することで、効率よく覚えることに注力するのが良い戦略だと思っていて、今回紹介した Coursera の GCP 講座はそういった点で最適な選択だったと考ええています。
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