はじめに
近年,AI技術の進化により,個人の生活や仕事をサポートする新しいツールが続々と登場しています.その中でも,「Second Me」は,個人の記憶や思考を学習し,ユーザーの分身として機能するAIアシスタントとして注目を集めています.本記事では,「Second Me」の概要と,実際に使用してみた体験を共有します.
Second Meとは
「Second Me」は,ユーザー自身の記憶や思考パターンを学習し,個人の代理として機能するAIアバターを作成できるオープンソースプロジェクトです.ローカル環境で動作するため,個人データのプライバシーを保護しながら,ユーザーの知識や経験を反映したパーソナライズされたAIを育成できます.
主な特徴として,以下が挙げられます.
- 階層型メモリーモデル(HMM):短期的なインタラクションから長期的な認知メモリーまで,三層のメモリ構造を持ち,ユーザーのパターンを迅速に認識し,適応・進化します.
- Meアライメント:強化学習技術を基に,ユーザーのデータを深く個別化された理解に変換します.
- 完全なプライバシー:ローカル環境で動作し,個人データの完全な制御をユーザーに提供します.
- Second Meプロトコル(SMP):独立したAIエンティティが相互に学習し進化する分散型AIフレームワークで,各「自己」は完全な独立性を保ちながら,安全に他のエンティティと通信します.
お題
今回は,Second Meを用いて,「Second Me」を作成し,その有用性を検証します.
結果
「Second Me」をセットアップは用意でdocker composeで起動すれば動作しました(dockerで動作させる場合,動きは少し遅い).自分の業務に関して問い合わせると,先週やったことなどを適切に回答してくれました.
セットアップ
私が普段やっている業務内容をテキスト形式でインプットします.また,QwenというモデルをローカルにダウンロードしてそこでFine-tuningを行ないます.embeddingにはOpen AIのEmbeddingモデルをAPI経由で利用します.
記憶の作り方
Memoriesをするにあたり,インプットとして与えたドキュメントを,LLMを用いて整理していきます.この過程では,想定質問を作成し,Q&Aのセットを作成したり,Graphragを用いて,ドキュメントからナレッジグラフを作成して,ドキュメントから得られる情報を上手く整理しています.
(Q&Aを作成中)
(内部で作成したGraph.可視化してみると以下のようになっていました.GraphragやGraphについてはこちらに有益な記事があります.)
(Training完了.大したドキュメントではないにも関わらず,およそ1時間かかりました.)
チャットで自身の業務内容を確認してみる
「私の業務内容はなにか?」尋ねたところ,それなりに回答されました.Fine-tuningされたモデルと作成したMemoriesを元に回答しているようです.
所感
「Second Me」を実際に使用してみて,以下の点が特に優れていると感じました.
- パーソナライズ性:自分の行動や思考パターンを学習するため,一般的なタスク管理ツールよりも柔軟で適切なサポートを提供してくれます.
- プライバシー保護:ローカル環境で動作するため,個人情報が外部に漏れる心配がなく,安心して使用できます.
- 進化するAI:使用すればするほど,AIが自分の特性を理解し,より適切なサポートを提供するようになります.
私の認識としては,この個人の特徴を記憶させる機構がSecond Meの肝であると理解しています(論文のタイトルもAI-native Memory 2.0: Second Meとなっているので).アプリケーションも準備されており,この記憶の作成をUI上で簡単に実現できることが素晴らしいと感じました.ネットワーク上で他のユーザーとコミュニケーションを取ることができるなど,できることが拡張されており,さらなる発展が期待できます.
まとめ
「Second Me」は,個人の記憶や思考を学習し,ユーザーの分身として機能する革新的なAIアシスタントです.プライバシーを重視しながら,パーソナライズされたサポートを提供する点で非常に魅力的です.今後,さらなる機能拡張やユーザビリティの向上が期待されますので,引き続きウォッチします.
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