株式会社ピーアールオー(あったらいいな!を作ります) Advent Calendar 2022の12日目、前日は「Markdown+PlantUML環境をdevcontainerで構築する 」でした。
ベテランほど「初心にかえる」のは大事。
印刷もWebも経験があるものの、うろ覚えの部分も多いので、「解像度とサイズ」について再確認用にまとめてみます。
解像度と単位
解像度とは、1インチ(25.4mm)あたりのドットやピクセル(画素)の数を表します。印刷ではdpiですが、ppiという単位もあります。
「同じ」「ほぼ同じ」と解説しているサイトもあるけど本当に?という辺りからまとめてみます。
dpiとppiが「同じ」という認識は正しいのか?
ひとくちに「解像度」と言っても、dpiとppiでは使用する対象が違う。
名称 | 単位 | 対象と意味 |
---|---|---|
出力解像度 | dpi | 出力機器の解像度を指す。出力機器とはプリンターやディスプレイのこと |
入力解像度 | dpi | 入力機器で原稿を読み取るときの解像度。「スキャナー解像度」とも |
画像解像度 | ppi | 画像そのものの解像度を指す |
「同じ」って解説しちゃダメだろう…
ただ、いくつ説明を読んでも、ほんとーにわからないのですよ(間違っている情報もある)。
DTP専業でもない限り無理無理の無理 ㌦ァァァァァ(ノ ゚Д゚)ノ ==== ┻━━┻
じゃあ、「ほぼ同じ」と解説している理由はどこにあるのか?という点を含め、つらつら書いてみる。
1インチあたりの「数」という点では同じ
dpiもppiも、1インチあたりのドットまたはピクセルの事なので、「数」という点では同じです。
ところが、カラー情報の持ち方や表現の仕方は全く違ったりします。
ppiはカラー情報を持ち、dpiは持っていない
単位 | カラー情報 |
---|---|
dpi | 白黒 |
ppi | フルカラー |
衝撃的な事実。dpiは白黒の点(ドット)の集まりで、色を持たない。
dpiは白黒のドットの情報です。階調(グラデーション)やカラー情報を持ちません。
対して、ppiは階調ありのカラー情報を持っています。
出力解像度の項目で「出力機器とはディスプレイ」だと書いてあるので混乱しますが、私たちが使うディスプレイの単位はppiです。カラー情報を持っています。
ディスプレイは1pxあたり3つのサブピクセル(RGB) を持ち、このサブピクセルの点灯でカラーを表現します。
対してオフセット印刷ではCMYKのインクを使い、ドットの密度や重なりでカラーを表現します。
ディスプレイで表現されたカラーを印刷で完全再現するのは困難
ディスプレイで見たカラーを印刷でも使いたいとリクエストされる事もありますが、再現不可能なカラーもあります。
ディスプレイは「光の三原色」と呼ばれるRBG、印刷では「色の三原色」と呼ばれるCMY(K=黒を除く) で表現します。
RGBは混ぜるほど白に近づきます。しかし、CMYは混色するほど黒に近づくため、再現不可能な色も出てくるのです。
印刷における「350dpi」という数の根拠
さらに脱線しますが、印刷とセットで出てくるのが「画像は350dpiで入稿してください」。
大多数の人は、なぜ「350」という数になるのか疑問に思うのではないでしょうか。
オフセット印刷には「スクリーン線数(lpi)」という概念があります。
線数とはドット(網点)の細かさの事で、1インチにドットがいくつ入るか示しています。
この線数が大きければ細密な表現が期待できます。
一般的なカラー印刷のスクリーン線数は175線。これは1インチあたり175個のドットで表現するという意味です。
印刷物で使用する画像の必要解像度は線数の2倍と言われているため、「175 × 2 = 350dpi」という計算になり、「印刷に最適な解像度は印刷原寸で350dpi(1インチ350個のドットで表現する)」という事になります。
ベスト解像度は350dpiですが、280dpiでも良質な印刷結果を得られた事があります。
とはいえ、依頼する印刷会社の機材により印刷結果は変わる1ので、依頼先のアドバイスに従うのが正しいです。
なんだかんだ言っても、解像度は印刷原寸で最低300dpiは欲しいところ2。
ちなみに同じ印刷でも、インクジェット印刷は網点を使わないため、スクリーン線数は関係ありません。ただ、印刷の詳細度の尺度としては利用されています。
ここまでが、主に印刷に関する「解像度」のおはなし。
これで終われば混乱せず平和に終わらせられるけど、ディスプレイに話を移した途端、さらなるカオスの海が待っているんだなあ…これが
ディスプレイにおける解像度
ディスプレイにおける「解像度」とは、正しくは「画面解像度」のこと。「ディスプレイ解像度」とか「モニター解像度」とも表記されます。
初期の画像解像度については、Macは72dpi、Windowsは96dpiで設計されていました。
「ディスプレイでdpiを使うのはおかしい」と思った方。あなたは前項のとりとめない文章を真面目に読みましたね?いい人です
今でこそカラーディスプレイは当たり前ですが、1984年に発売された「Macintosh」のディスプレイは白黒でした。
カラーディスプレイの登場は、1987年の「Macintosh II」 発売まで待つことになります。
私は新社会人の頃からずーっとMac利用者なので、Windowsの動向がさっぱりわからないのですが、YouTubeで起動動画を発見。
拝見するとWindows2.xがカラー化されているので、Windowsも1987年以降はカラーをサポートしていることがわかります。
初期のmacOS3やWindowsは、画面で見たものとほぼ同じに出力できる「WYSWYG (What you see What you get)」 ことを目指して設計されているのですが、なぜかOS間でdpiが微妙に違う。
macOSの場合、文字サイズの単位(pt)4がほぼ1/72インチであることに注目し、画像解像度が72dpiに近いディスプレイを採用したというのが理由だったようです。
参考:WYSIWYG - Wikipedia
対してMicrosoftは自分達でPC本体を製造せず、OSを提供するビジネスモデルです。
当然、無数にあるディスプレイの仕様を制御できるはずもなく、実際のdpi値を使用せず、論理値として扱う事にしました。
96dpiという数値が選ばれた理由は、
ディスプレイと紙の印刷物では、目からの距離が異なるため、その分を調整した
引用:ASCII.jp:Windowsのディスプレイとモニター いまだ96DPIが基準
画面解像度とは縦横に並んだピクセルの数
まるっと「解像度」と呼ぶ事の罪深さよ
「解像度」と付いてますが、印刷現場における「解像度」とは別物と考えないと非常に混乱します。
「WebデザインにPhotoshopを使用する時の画像解像度は72dpi(ppi)」と聞く事もありますが、対象がディスプレイの場合、画像解像度dpi(ppi)の値は表示サイズに影響を及ぼしません。
例えば「1024px × 500px」の画像を作るとする。
画像解像度144ppiで作っても72ppiで作っても、ディスプレイに表示されるサイズは「1024px × 500px」 で変わりはありません。
画像の1pxはディスプレイでも1pxとして描画される。
…はずだったんだけどな。ちょっと前まで
1px = 1px が成り立たないRetinaディスプレイ
「Retinaディスプレイ」とは、いわゆる「高精細ディスプレイ」の事です。
スマホアプリの開発に携わっている人なら、とっくの昔に心得ている話だとは思いますが、デスクトップを主なターゲットとしているWebサービスやサイト制作の場合は、ちょっと縁が遠いかもしれません。
MacにしろiPhoneにしろ、Appleのプロダクトは画像描画の美しさに定評がありますが、従来型の描画では限界があります。
そこで「ピクセル」に2つの概念を与えました。
デバイスピクセル (物理ピクセル) = 画面に収まっているピクセル数
論理ピクセル (CSS Pixel) = 実際に表示するピクセル数
iPhone(2007年) | iPhone 3GS(2009年) | iPhone 4(2010年) | |
---|---|---|---|
デバイスピクセル | 320 × 480 | 320 × 480 | 620 × 980 |
論理ピクセル | 320 × 480 | 320 × 480 | 320 × 480 |
ppi | 163 | 163 | 326 |
参照:The Ultimate Guide To iPhone Resolutions
初代iPhoneとiPhone 3GSはデバイスピクセルと論理ピクセルに違いはありません。
しかし、iPhone4はデバイスピクセルが2倍になります。
論理ピクセルとは、複数のデバイスピクセル(物理ピクセル)を擬似的に1つのピクセルとみなすピクセルです。
iPhone 4では、画面上の620 × 980のピクセルを使い、320 × 480ピクセルのコンテンツを描画する事になります。
2px × 2pxを1pxとして描画するので、細やかな色の階調がより表現しやすくなります。しかし画面サイズは他の端末と変わりません。
このようなスケーリングのあるデバイスに対して必要な画像は、デバイスピクセルに合わせて制作する事になります。
論理ピクセルに合わせた画像は、スケーリングの際に無理やり画像を引き伸ばす格好になり、表示した時にぼやけます。
…iPhoneが出てきたら当然Androidの話も必要だし、「高精細ディスプレイ」に関してはもう少し調べたい。「Webやアプリ」とか言いつつ、ごく最初のさわりだけしか書けなかったなあ
今回は時間切れとスタミナ不足でギフアップ。ちまちま更新したい…
単位は難しい
単位については、Qiitaにはとってもいい記事があるんですよ。
体系的に調べていて、メートル・インチ・ポイントまで網羅しています。
記事のコメントも参考になります。
「解像度」というのは本当に難しくて、一体誰が正確な情報を持っているのか?という感じです。
歴史的な背景も相まって、「どれも間違いではない」という事も多い。
そんなわけで、この記事も下書きが3ヶ月ほど塩漬けになっていたのですが、最後に下書きを更新してから3ヶ月なので、実際は1年くらい半塩漬けになっていた気がします。調べるのがつらいw
参考URL
解像度 / dpi / ppi
- 解像度 - Wikipedia
- 画面解像度 - Wikipedia
- 出力解像度とは - コトバンク
- 入力解像度 | 株式会社プロトソリューション
- dpi - Wikipedia
- ppi - Wikipedia
- PPIとDPIは何が違うのでしょう? - 99designs
- 第5章 解像度と出力の素敵な関係|Adobe Illustrator使い方と出力講座:Adobe Illustrator お茶の子サイサイ
- 印刷用画像データを解像度350ppi(350dpi)にする理由の一例 | カラーマネジメント実践ブログ 〜フォトレタッチの現場から〜
- ASCII.jp:Windowsのディスプレイとモニター いまだ96DPIが基準
- サブピクセル(副画素)とは - 意味をわかりやすく - IT用語辞典 e-Words
- Webにおける解像度のお話 | ザリガニデザインオフィス
- CSS pixel - MDN Web Docs 用語集: ウェブ関連用語の定義 | MDN
印刷全般
- オフセット印刷 - Wikipedia
- インクジェットプリンター - Wikipedia
- スクリーン線数 - Wikipedia
- スクリーン線数 | 用語集 | 大同印刷株式会社
- スクリーン線数 | 賢者の印刷用語集
- スクリーン線数 【印刷用語集】|バンフーオンラインショップ
- 印刷におけるスクリーン線数を解説!使用例と使い分けのための条件 | ラクスルマガジン
- 画像解像度と線数 | 技術情報 | InDesign(インデザイン)専門の質の高いDTP制作会社―株式会社インフォルム
- 線数と画像解像度の関係|たつみ印刷
- 高精細印刷を評価する単位、dpi と線数について
- 「光の三原色」と「色の三原色」の原理と仕組み|色が見える仕組み(7): 光と色と
- WYSIWYG - Wikipedia
アプリデザイン制作時に参考になる資料
- The Ultimate Guide To iPhone Resolutions
- iOS Resolution // Display properties of every iPhone, iPad and iPod touch Apple ever made
- What Dimensions & Resolution Should Use For iOS And Android App Design? | Altamira