こんにちは。
今回の記事はシステム開発に携わる人であれば、ぜひ全員に読んでもらいたい記事です。
長文になってしまいましたができれば最後までお付き合いただければ幸いです。
様々な「契約」の種類#
さて、
いきなりですが、以下の違いについて
皆さんは明確に答えられるでしょうか?
(愚問と感じる方も大勢いらっしゃる事とは思いますが。)
①委託契約
②委任契約
③準委任契約
④請負契約
なんとなくのニュアンスで理解している方は
多いかと思いますが、
明確な違いを説明できるかというと
みなさんどうでしょうか?
民法上の契約区分##
では大事なことから先に述べましょう。
民法上、明確に定義されている「契約区分」は
以下の2種類しか存在しません。
委任契約
請負契約
ではこれらの契約の違いとは何なのでしょうか?
端的に言ってしまうと、
「責任の重さの違い」です。
委任契約について##
委任契約の場合では、
注意義務(職業や生活状況に応じて、
抽象的な平均人として一般に要求される程度の注意義務)
が発生しますが、仕事の完成義務までは発生しません。
また、③の準委任契約とは法律行為以外の事務となります。
(システム開発の委任契約の場合は準委任契約ですね。)
請負契約について##
対して、請負の場合には、仕事を完成する義務が発生します。
成果物を作り上げて、納品(=仕事を完成)しない限り、
原則として報酬はもらえません。
また、成果物に対して、瑕疵が発生した場合には
瑕疵担保責任を負うことになるのです。
(2019年1月 記事執筆時点。記事を最後までお読みいただけると幸いです)
瑕疵担保責任##
瑕疵担保責任の具体的内容は以下になります。
①修補請求
②損害賠償請求
③契約の解除
また、瑕疵担保責任の追求には期間が設けてあり、
成果物の譲渡時(仕事の完成時)から1年と定められています。
契約の違い##
準委任契約:労働時間に対する報酬
請負契約:成果物に対する報酬
という認識をしている方は多いかと思います。
(私自身もそうでした。。。)
実際、準委任契約の場合は完成責任を伴わない点から、
遠からずともいえますが、
民法上では正確には違うのでここは覚えておきましょう。
さて、②~④についてはこれで説明がつきました。
では、①の委託契約とはどういう契約なのでしょうか?
結論から述べましょう。
何なのか分かりません。
その答えの意味が分からないですって?
少し言い方を変えましょう。
民法上、委託契約という区分は存在しません。
つまり、委託契約という場合には
「民法上では、はっきりとした取り決めはしないけど
とりあえず仕事を委託(受託)することを契約する」
という事になります。
さて、これは非常に危険ですよね?
受託側としては名前が似ている準委任契約のつもりで
契約していたかもしれません。
つまり、システム(成果物)に瑕疵が有った場合でも、
瑕疵担保責任を負うつもりはなかったかもしれません。
しかし委託側は請負契約のつもりで契約していたとしましょう。
こちらとしては瑕疵担保責任を負ってもらう必要があります。
双方にこういった認識の相違が生じた場合、
大きなトラブルへと発展してしまうことが考えられます。
システムに関する契約を結ぶ場合には
契約書の書面内容にしっかりと目を通しておきましょう。
自分が結んでいる契約内容は
準委任契約なのか?
請負契約なのか?
明確に理解しておく必要があります。
参考:ヒルトップ行政書士事務所
民法改正について#
さて、ここまでは前置きです。
2017年5月26日付で、
120年ぶりに民法が改正されました。
また、この改正された民法は2020年6月2日までには施行されます。
また、この改正された民法は2020年4月1日に施行されました。
特に改正内容としては
システム開発における分野への影響が大きいとされています。
以下に、大きな変更内容をあげていきます。
瑕疵から契約不適合への変更##
改正後の民法では
「瑕疵」という言葉が削除され、
「目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない」
(=「契約不適合」)
という言葉に変更しました。
内容自体には大きな変更はないようです。
責任の内容について##
改正前の瑕疵担保責任は
①修補請求
②損害賠償請求
③契約の解除
でした。
改正後の契約不適合時の内容では
ここへ1つ項目が追加されています。
④代金減額請求
つまり、民法改正後では
システムの請負契約を負った場合、
過度の契約不適合があった場合(バグの多発などでしょう)には
代金の減額が請求されるようになります。
責任追及期間の変更##
民法改正前では
成果物の譲渡時(仕事の完成時)から1年が
瑕疵担保責任の追求期間でした。
改正後では
契約不適合を「知った」ときから1年
となります。
また、
責任追及ができる期間は譲渡時から5年以内
となるそうです。
つまり、成果物を納品してからも、
5年以内に契約不適合が発覚した場合には
そこから1年間、
契約不適合の責任追及が可能になるわけです。
補修請求の制限##
これまでは、受託側に不利な内容が多かったですが、
こちらは受託側が有利になる内容です。
改正前では
瑕疵が重大な場合に、過分な費用がかかる場合でも
修補請求ができました。
つまり、瑕疵が見つかった場合、
どれだけその修正にお金がかかったとしても
受託側には修補の責任があったわけです。
改正後には
修補に過分な費用が発生する場合には、
修補請求はできない
というように
制限が設けられています。
ただし、
そういった場合にはおそらく受託側は
損害賠償請求としての責任が負われることになると思われます。
請負契約の頓挫時##
民法改正前の請負契約では
成果物の報酬は成果物の発生時に初めて発生しました。
つまり、逆を言うとプロジェクトが途中で終わってしまった場合には
報酬が発生しなかったともいえます。
しかし、民法改正後には
その未完成のシステムであっても、
クライアントにとって価値がある場合には、
作成した割合に応じて、報酬が請求できる
という形に改正されました。
これもシステム開発の
委託側には不利で、
受託側にとっては有利な変更点といえるでしょう。
2種類の準委任契約##
民法改正前では準委任契約には
仕事の完成義務がありませんでした。
それが改正後の
準委任契約には以下2つのタイプができます。
履行割合型
成果完成型
履行割合型は
労働時間や工数をもとに報酬を支払うタイプの準委任契約
です。
つまり、今までの準委任契約と概ね同じものといえるでしょう。
対して、
成果完成型の準委任契約では、
仕事が完成して、成果報酬が発生します。
請負契約と似ていますが、
明確な違いは改正前の民法と同様に
「責任の重さ」です。
準委任契約の成果完成型は、契約不適合の責任がなく、
請負契約には、契約不適合の責任が発生します。
契約による自由な変更##
そしてもっとも重大な変更点ともいえるかもしれません。
民法改正後では
いずれも、当事者の契約によって自由に変更ができます
これまで述べてきた、民法改正後の内容は、
契約書に書かれていなかった場合に適用されるのです。
契約書に違った記載内容が存在した場合、契約書の内容が優先されます。
これは極めて重大な点だと思われます。
システムにまつわる契約を結ぶ際には、
民法改正後では実に注意を払って内容に目を通さなければ
重大なトラブルへと繋がる可能性が大いにあります。
民法施行のスケジュール##
改正された民法は2017年6月2日付で「公布」されています。
そして、施行日は、
「法律が公布された日から最大で3年以内」
というルールになっているそうです。
改正民法の「施行」は、
遅くとも2020年6月2日までには行われることになります。
改正民法は、
2020年4月1日に「施行」されました。
最後に#
改正された民法の施行後では
システム開発の契約に関する部分において
細かな点で変更がなされています。
特に最初に述べたような、
委託契約を結んでいた場合には
(特に受託側は)
重大なトラブルに巻き込まれる可能性が
高い内容になっています。
契約を結ぶということを大きく捉えて、
自分達の身を守るためにも
不明な点などがあればきっちりと明確にして
書面上に残しておくことが大切です。
長くなりましたが、ここまでになります。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。