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【検証:GPT-4o-mini】LLMを用いたサーベイ効率化の検討

Last updated at Posted at 2024-08-07

はじめに

サーベイは研究や技術調査にとって、現状把握や課題特定のために重要ですが、幅広いサーベイを人手で行うには大きなコストがかかります。LLMによる要約や情報抽出は、そうしたコストをどの程度削減できるのでしょうか。
本記事では、サーベイ対象の項目を整理し、整理した項目に従ってGPT-4o-mini[参考1]に過去のQiita記事から情報を抽出させ、その内容を評価します1

使用モデル

  • ChatGPT API (gpt-4o-mini-2024-07-18) [参考1]
  • ChatGPT API (gpt-4o-2024-05-13)[参考2](比較用)

サーベイ対象項目

今回のサーベイ対象項目を表1に整理しました。サーベイ対象のイメージは図1の通り、論文や技術解説の記事2にしばしば見られる構成を念頭に置いています。

表1:サーベイ対象項目

項目 概要
背景とテーマ - 「テーマ」の注目理由(世間的な盛り上がりに関連)
- 1つ以上の専門用語によって代表させる
- 目的、取り扱う範囲、位置付けも説明することがある
用語説明 - テーマを代表する用語の説明、定義(世間で揺れている場合)
- 種類、機能、関連分野、技術範囲・規模を説明
動向 - 技術、市場、企業のこれまでの流れ
- 半年から1年前程度前までが対象
最新動向 - 先行研究の紹介、直近の技術革新(少なくとも一年以内のもの)
制約事項 - 原則、ルール、規制、法律、ガイドライン
- 国別の比較、関連法、法整備
課題 - テーマに係る観点ごとに整理
- 代表的事例で表現
取組 - 事例、既存サービス、事件
注目ポイント - 執筆者の思い、メッセージ(仮説)
活用方法、専門家の見解 - 実際活用するための方法、分野を代表する有識者の見解
分析 - 仮説・手法・実験・評価・結果
展望 - 見通し、予測される変化
- 考察、提言、推奨アクション

図1:サーベイ対象のイメージ3

分析対象

以下のQiita記事(自著)を対象とします(内容は表2に整理)。LLMの出力が正しいかの判断がしやすいように分量が少ない記事を選びました。

  • 【検証】ChatGPTでテーブルデータの外れ値以外の異常を検知させるには[参考3]

表2:項目別に見た分析対象の内容

項目 概要
背景 - 2023年7月にChatGPTの機能にCode Interpreterが追加され、テキスト入力だけでデータ分析が手軽に行えるようになった
テーマ - テキスト入力するだけでテーブルデータに含まれる複雑な異常(典型的な外れ値以外の異常)を検知できるかを検証
用語説明 - SAA+:プロンプトを用いた画像の異常検知手法
動向 - 背景で記載の内容と同じ
注目ポイント - 最新の異常検知技術の性能・特徴
分析:提案仮説 - 画像の異常検知手法(SAA+)で有効とされる方針がLLMへのテキスト指示による異常検知にも有効
分析:実験方法 - 身長と体重に関するテーブルデータに対して、ChatGPTに異常を検知させる
- テキスト指示は2種類の方法を検証(「粗く取得後に細かく抽出」と「細かく取得後にさらにフィルタリング」)
分析:評価方法 - 検知結果を観察
分析:実験結果 - テーブルデータに対してもSAA+と同様の方針が有効である可能性が示唆
結論 - LLMへのテキスト指示による異常検知でも、小さいデータなら複雑な異常を抽出できる可能性が示唆

プロンプトの作成

表1と表2を元にプロンプトを作成しました。今回は異常検知技術に注目した観点で抽出します(他の観点で活用する際は<観点>のところを変更してください)。今回は、比較用に内容の一部を出力します。

プロンプト
あなたは一流の先端技術リサーチャーとして、文献調査をします。
以下の流れで出力してください。出力は<出力列データ>を列としてCSV形式です。

1. 添付ファイルを情報源として、<関連文献の抽出>を行う
2. 1.の結果について、<観点>に注意して<整理方法>に則った出力を行う。

# <関連文献の抽出>
- <観点>に関連するものだけを抽出(関連するものがない場合はその旨を出力)

# <整理方法>
- タイトル
    - 記事のタイトル
- 要約
    - 内容を要約
    - 貢献を要約
    - ビジネスとして何に役に立ちそうかを要約
- <観点><注目ポイント>(太字)
    - どう関連するか
- キーワード
    - キーワードの用語説明
    - キーワードは太字
- 動向
- 課題
- 提案仮説
- 実験方法
- 使用技術・モデル
- 評価方法:具体的に
- 実験結果
- 結論
- 展望
- 以下は関連するものがあれば記載
    - 最新動向:直近一年
    - 活用方法
    - 制約事項:活用可能な範囲や位置付け、規制など
    - 提案以外の仮説
    - 専門家の見解

# <観点>
- テーマ: 異常検知技術
- <注目ポイント>
    - 最新の異常検知技術の性能
  - 最新の異常検知技術の特徴

# <出力列データ>
- ID
- Title
- 内容(要約)
- 貢献(要約)
- ビジネス活用(要約)
- <観点><注目ポイント>(関連項目)
- <観点><注目ポイント>(関連内容)
- キーワードと説明
- 動向
- 提案仮説
- 実験方法
- 評価方法
- 実験結果
- 結論
- 展望

実行結果

プロンプトを実行した結果は表3のようになりました。

表3:実行結果

項目 GPT-4o GPT-4o-mini
Title ChatGPTでテーブルデータの外れ値以外の異常を検知させる方法 検証】ChatGPTでテーブルデータの外れ値以外の異常を検知させるには
内容(要約) - 2023年7月、ChatGPTにCode Interpreterが追加され、テキスト入力だけでデータ分析が可能に
- LLMを用いた複雑な異常検知を検証
- SAA+の方針に基づき2つの方法を検証し、②の方法が有効であることを示唆
- 本記事ではChatGPTのCode Interpreterを用いて、テーブルデータに含まれる複雑な異常を検知する手法を検証。
- SAA+という異常検知手法をモデルとして、異常をどのように抽出するかを考察。
貢献(要約) - LLMを用いてテーブルデータの異常(複合異常)を検知する新しい方法を提案
- 従来の異常検知手法よりも具体的な指示とフィルタリングを行うことで精度向上を目指す
- 異常検知におけるプロンプト設計の重要性を確認。
- 特定の異常についての検知能力向上に寄与。
ビジネス活用(要約) - データの精査が容易になり、異常データ検出の効率が向上
- 特に複雑な異常を抽出する際に有用
- ユーザーが異常を特定しやすくするためのプロンプト設計のノウハウを提供。
- データ品質管理の効率化が期待される。
<注目ポイント>(関連項目) - 最新の異常検知技術の性能、最新の異常検知技術の特徴 - 最新の異常検知技術の性能。特に複雑な異常(外れ値以外)の検知に価値がある。
<注目ポイント>(関連内容) - LLMと具体的なプロンプトの使用により、異常検知の精度が向上し、特に複雑な異常の検知が可能に 最新のAI技術や新しいアルゴリズムの開発が進行中で、特にLMMの進化が注目されている。
キーワードと説明 - LLM:大規模言語モデル
- 異常検知:データの異常を検出するプロセス
- SAA+:画像の異常検知手法
- 異常検知: データ内の異常値や異常パターンを特定する技術。
動向 - LLMを使った異常検知が注目されており、特に具体的なプロンプトを使用した方法が有効であることが示唆されている - 最近のAI技術と新しいアルゴリズムの開発が進展中。
提案仮説 - 2つの検出方針:「粗く取得後に細かく抽出」と「細かく取得後にさらにフィルタリング」 - 明確な仮説の設定と複数の指示を提示する方法が効果的。
実験方法 - ChatGPTを使ってテーブルデータの異常を検知する実験。異常検知方法として具体的な指示を行い、フィルタリングを行う - 身長と体重のテーブルデータを用いて、異常を抽出する2つの方針を検証。
評価方法 - 具体的な異常タイプをLLMに提示させ、それに基づいて異常を抽出
- さらにフィルタリングを追加
異常をタイプ分けし、どの程度異常であるかを評価。
実験結果 - 抽出した異常が、意図した「複合異常」以外の異常(外れ値など)を含むことが課題
- フィルタリングを行うことで解決
一見正常に見えるが複数の観点で異常なレコードが見つかった。
結論 - LLMを使った異常検知は特に複雑な異常の検知に有効であることを示唆
- ただし大規模なデータセットでの効果は未検証
- 抽出された異常がその異常とは限らないため、文脈に応じたフィルタリングが必要。
展望 - LLMを用いた異常検知手法が、より適切なフィルタリングや具体的指示によってさらに向上する可能性がある
- 大規模データセットでの適用も今後の課題
- 最初の粗い取得からフィルタリングを通じて、より正確な異常を把握できる可能性が示唆された。
- 異常検知の新たなアルゴリズムの必要性が浮き彫りに。

評価・考察

表2をもとに表3を評価した結果を表4に整理しました。全体としてGPT-4oの方がGPT-4o-miniよりも性能が高いように思われます。本件の使い方をする際は、GPT-4o以上のモデルがよいかもしれません。

表4:項目別に見た実行結果の評価
◎:完璧、〇:概ね正しい、△:多少誤解を招く表現がある、×:誤りが含まれている、!:抽出元の記事に厳密に記載がないが記載は間違っていない
※太字の部分は抽出元の記事に明確な記載なし

項目 GPT-4o GPT-4o-mini
Title
内容(要約)
貢献(要約)
ビジネス活用(要約) ×
<注目ポイント>(関連項目)
<注目ポイント>(関連内容)
キーワードと説明
動向 × ×
提案仮説 ×
実験方法
評価方法
実験結果
結論
展望

GPT-4oは、実行結果は文字数が3割程度になり、論文のアブストよりは細かい雰囲気を知れる、といった印象を受けました。ただ、抽出元の記事に記載のない項目は、工夫なしではハルシネーションを起こすようで、誤った情報を抽出するリスクを考えると、一概に効率的になるとはいえなさそうです。

大量の情報をリサーチする際に、中間ファイルとして活用するような使い方が妥当と感じました。多くの記事をCSVファイルに整理すれば、各項目の全体傾向を見ることもできそうです。

まとめ

本記事では、サーベイ効率化を目指し、設定したサーベイ対象の各項目に対して、GPT-4o-miniに過去のQiita記事から情報を抽出させ、その内容を評価しました。
検証の結果、比較的簡単に効率化できそうな項目は以下と考えられます。

  • 大量の文献から調査目的に近い対象を選出するための要約作成
  • 調査観点に絞った情報の抽出

また、カテゴリごとに調査対象を絞り、各項目の抽出結果を俯瞰することで、全体の動向を掴むことができるかもしれません(解釈は別途行う必要あり)。

本記事のプロンプトが巷に溢れる様々な情報抽出のためのプロンプトと比較して、何かの観点で優れているとは限りませんが、LLMによる情報抽出・要約の一例として参考にしていただけますと幸いです。改善点やご質問などあれば、コメントよろしくお願いいたします。

参考文献

  1. https://openai.com/index/gpt-4o-mini-advancing-cost-efficient-intelligence/
  2. https://openai.com/index/hello-gpt-4o/
  3. https://qiita.com/motonobu_ut/items/29e7ab1cd4b64bbc0b42
  1. 本記事では、現時点で簡単に検証できる範囲でどの程度のことができそうかを調査することを目的としており、LLMベースのサービスや最新研究を活用すれば異なる結果・評価となる可能性があります

  2. 世間的な盛り上がりを背景としたあるテーマについて、キーワードを軸に展望へ至るまでを解説しているような文献

  3. 図1の灰色の部分は最新技術を対象としたレポートや論文では重視されますが、それ以外では重視されないことがあります

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