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チームで「ふりかえり」をするとしたら? ー 「ふりかえりガイドブック」を読んで

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はじめに

現在所属しているチームで、トラブル対応やデグレード発生後の再発防止策として、その事象をふりかえり、改善アクションを考えて実践する、ということをスポット的に行いました。

この「ふりかえり」体験が個人的にとてもよく、印象に残っていました。

チームのなかでこうしたふりかえりが自然とできるような文化を根付かせたいなーと思いつつ、これまで私自身があまりふりかえりというイベントを意識して実践してこなかったため、まずは一般的にやられている「ふりかえり」をキャッチアップしてみよう!と思い、以下の書籍を読みました。

アジャイルなチームをつくる ふりかえりガイドブック 始め方・ふりかえりの型・手法・マインドセット

※以降、この本を本記事内では「ふりかえりガイドブック」と記載します

今回、ふりかえりガイドブックを読んだうえで理解したことと、実際にチームで「ふりかえり」を継続するとしたら?を整理します。

もくじ

「ふりかえり」とは?

まずは今回扱う「ふりかえり」の定義を考えます。

辞書的な意味

振(り)返る(ふりかえる) とは? 意味・読み方・使い方
1. 後方へ顔を向ける。振り向く。「背後の物音に—・る」
2. 過ぎ去った事柄を思い出す。回顧する。かえりみる。「この一年を—・る」

チーム開発での文脈的な意味

メンバー全員でこれまでのやり方を定期的に見直し、チームをよりよい報告へ少しずつ変化させていく活動

- Amazonの振り返りガイドブックの紹介文より抜粋

もろもろを踏まえた個人の解釈

チームで気持ちよくモノづくりし続けるために、常にチームをメンテナンスする活動、と捉えました。

具体的には、

チームの開発サイクルの中で、
定期的に、
チームメンバーみんなで、
前のサイクルでやったこと/よかったこと/イマイチだったことを思い出して、
それぞれの理由を考えて、
次に継続する/もっとよくする/改善するためのアイディアを出し合って、
現実的なアクションを決めて、
そのアクションを実践してみる

これを繰り返すこと、と認識しました。

以降、この認識とふりかえりガイドブックを読んで自分なりに反芻した内容をベースに記載していきます。

ふりかえりを進める際の7つのステップ

ふりかえりは大きく7つのステップに沿って進めていきます。

  1. ふりかえりの事前準備をする
  2. ふりかえりの場を作る
  3. 出来事を思い出す
  4. アイデアを出し合う
  5. アクションを決める
  6. ふりかえりをふりかえる
  7. アクションを実行する

これ以降、書籍の記載内容を参考にしつつ、モデルチームの状況に合わせてカスタマイズした内容を記載します。

モデルチーム

これ以降に記載する内容は、ふりかえりガイドブックの内容を踏まえて、「以下のようなチームで実践するとしたらこうするかな?」と想定したものです。
実際に自チームでやってみた内容ではないのでご承知おきください。

  • 1ヶ月1イテレーションで開発サイクルを回しているチーム
  • ふりかえりはイテレーション単位(=1ヶ月)、4~5名で実施
  • 全員フルリモート、多拠点のため、オンラインでのふりかえりが必須
  • 企画~設計~実装~評価を一貫してチーム内で実施
    • 大がかりな機能強化は企画を別イテレーションで実施することもある
    • CI/CD、リリース作業は別チームが主管している

1. ふりかえりの事前準備をする

何のためにふりかえりをするのか、どのようにふりかえりを進めていくかについて、チームで共通認識を作ります。

オフラインでのふりかえりの場合、会議室を予約してホワイトボードやマーカー、付箋、お菓子(羨)を用意したりし、物理的に場を整えます。

私たちのチームはフルリモート、かつ居住地も多岐にわたるため、オンライン開催です。
オンライン開催時には、予め各自の場の作り方やツールの使い方、基本的なルールを決めておくとよさそうだと感じました。

以下は、もしモデルチームで開催するなら、という想定でベースルールを書いてみました。

リモートふりかえりのベースルール

前提

  • ふりかえりはオンラインドキュメントツール(Google Docsなど)を共同編集しながら進める1
    • 実際に(独りで)チームふりかえりを試してみたサンプル

事前準備のルール

  • ふりかえりの場で話したい特定のトピックがあれば、ふりかえり開始までにDocsに書く
  • ふりかえりに集中する場を各自で作る
    • Slackの通知は/dndコマンドなどで一時的にOFFにする(たとえばSlackで/dnd 30minとすると30分間Slackから通知が飛ばなくなる)
    • 不要なアプリを閉じるか、デスクトップを切り替える(Windowsの場合、Win+Tabキーで切り替え可能。不要なアプリを視界から遮断できる)

ふりかえり中のルール

  • ファシリテーター、書記(メイン・サブ)は持ち回り
    • 書記はみんなで会話をしているときに書き込むのが主な役割
    • メインとサブ以外の人も積極的に書き込む
  • 書き込み
    • 各自が書き込むとき
      • できごとや意見を書き込むときは冒頭に自分の名前をカッコ書きで入れる
      • 書き込むときは冒頭に「・」を入れる(同じ人が複数行書いたときに、続きの内容かがわかりづらくなるのを避けるため)
      • まとめるとこう:・(${名前})xxxxx
  • 画面共有は各自の書き込み時間以外は基本ファシリがする
  • マイクとカメラ
    • 各自で書いているときはマイクやカメラはOFFでOK
      • 個人で書き終わったらカメラをONにして待機
    • 発表中は全員カメラON(マイクは任意ですが、発言しやすさ的にON推奨。もし反響してしまう人がいたらミュートにしたうえでチャットで伝える)
  • 決まったアクションはファシリがIssue化する

2. ふりかえりの場を作る

ふりかえりに入る前の確認をする

ふりかえりに集中する環境が各自整っていますか?の声掛けをします。
Slackの通知を切ったり、
不要なアプリを閉じたり、
デスクトップを切り替えたり、
各々準備が整っていることを確認します。

話しやすい雰囲気を作る

ふりかえりは、参加するメンバー全員が気兼ねなく発言しやすい場だとより効果が大きくなります。
まずMeetに入ってきたときは「おつかれさまでーす」などと声を掛け合いながら入り、最初は全員マイクONにして5分程度のアイズブレイクをします。
自然と話が始まればそれでいいですし、そうでない場合もサイコロトークガチャなどを使って雑談をすると、場が温まってこのあとのふりかえりの発言ハードルが下がります。

ふりかえりで話したいトピックを確認する

今回のふりかえりで話したいトピックがあるかを確認します。
複数トピックが候補に挙がる場合、その中から今日話すトピックを決めます。

特にトピックがない場合、テンプレートに記載があるふりかえりの流れに沿って次以降のステップに進みます。

3. 出来事を思い出す

改善のアクションを起こすためには、何はともあれある期間内に何があったのかを思い出し、チーム内で共通認識を持つ必要があります。
開発サイクル内で起こったことをそれぞれの期間を起点に思い出してみます。

ふりかえり期間が長い場合、期間をざっくり区切って思い出してみる

1ヶ月サイクルだとふりかえり期間としては長めなので、たとえば以下のように細分化して考えていくとよさそうです。

  • ~Planningくらいまで
  • ~開発期間前半くらいまで
  • ~開発締めくらいまで
  • ~評価締めまで
  • ~評価締め後
  • 期間で書けないもの

思い出す際は、上記時系列に沿って、

  • 起きた出来事
  • それに対して自分がどう感じたか

を書いてもらいます。2
そのときの感情によって、課題が浮かんだり、逆により伸ばしていくべき良い点が見えてきたりするためです。

個々人で思い出す → チームで思い出した内容を見せ合う の順番で

まずは個々人で思い出す作業をします。
最初から全員で発言を始めてしまうと、最初に話題に挙がったトピックに重点が置かれやすくなるため、まずは個人ワークをします。
基本的には思い出したものからどんどんDocsに記載していきますが、手元のメモ帳などに下書きをしたうえで貼りつけてもかまいません。

チームで管理しているカンバンなどを見ると「出来事」そのものを思い出すのは簡単ですが、まずは自分の頭の中だけで考えてみる方がよさそうです。
カンバンなどの事実ベースだと、そこに意識が固まってしまいますし、詳細を書こうとし過ぎてしまい、時間がなくなったりします。
まずは頭の中で思いついた出来事や感情を優先して記載し、思いつかなくなってたところで徐にカンバンを見て記憶の補完に使うのがちょうどいいと思います。

ベースルールに則り、個人ワークの際はカメラもマイクもOFFでOKです。
逆に書き終わったら周りのメンバーに書き終わったことがわかるようにカメラをONにします。

個々人での思い出しが終わり、Docsに記載が完了したら、思い出した内容をざっと他のメンバーに説明します。ほかのメンバーは出来事に関して適宜質問したり、連鎖的に思い出した出来事があったら追加したり、をします。

4. アイデアを出し合う

アイデアを考える

思い出した出来事に対して、どんな行動を起こしたいかのアイデアを考えていきます。
基本的には"チームで"やることを考えていきます。考える際の糸口は大きく2つあります。

  • 「チームで次に何をすべきか」を考える
  • 「自分が次に何をしたいか」を考え、チームに向けたアイデアに変換させる

まずは上記について個々人で考える時間を作り、その後チーム内で意見を出し合います。

アイデアを発散し、深めていく

各自から出たアイデアを見せ合ってみて、それぞれのアイデアについて自由に意見を言ったり質問したりします。
効果がないかも・・・言っても意味ないかも・・・などと思う必要はありません。まず言ったり書いたりしないことには何も始まらないですし、派生していろいろなアイデアが生まれるかもしれません。まずはアイデアを挙げて、どんどん膨らませてきます。

アイデアに対して話をしていると、ついついメモをしそびれてしまいますが、口頭で話したことはすぐ忘れてしまうので、その日書記担当になっている人は率先してアイデアをメモしたり追記したりします。
書記以外のメンバーも、さらに補足したりメモを足したりと協力してメモを取ってアイデアを見える形で残します。

アイデアを分類し、収束させる

ある程度アイデアを出し尽くしたら、収束に向かわせていきます。

複数のアイデアが出た場合、アイデアを分類します。
分類の軸としては以下のようなものがあります。

  • 優先順位
  • 効果
  • 影響
  • 労力

個々のアイデアに対して「効果:中/影響:小/労力:小」などとメモをした上で、
「効果は高いけど労力もかなりかかるね」「影響力はそこまで大きくはないけど労力がかからないからすぐやれそう」などと話し合いながら優先度順にアイデアを並べ替えていく、などとするのがよさそうです。

アイデアを考えるのが大変・・・というときは

ふりかえりの手法では、アイデアを考えるのに適した手法や、手法の中にアイデアを考える部分が内包されているものがあります。

例)
アイデアを考えるのに適した手法

  • 5つのなぜ
  • Starfish

アイデアを考える部分が内包されている手法

  • Fun / Done / Learn
  • KPT(Keep / Problem / Try)
  • YWT(やったこと / わかったこと / 次にやること)

ふりかえりに慣れてきたら、いろいろな手法を取り入れて心地よいふりかえりを模索するのがよさそうです。

5. アクションを決める

アイデアの中から、チームが実行するアイデアを選び、「アクション」として具体化していきます。
ポイントは以下の通りです。

  • アクションは具体的にする
  • 実行可能で小さなアクションにする
  • 計測可能、実行していると判断可能なアクションにする
  • すべてのアイデアをアクションにしようとしない
    • アイデアのうち一部を実現するためのアクションでもOK
  • アクションを試してみる
  • アクションを明文化し、チームでよく見る場所に配置する

アイデアを実現するために壮大で高尚なアクションを作成したくなりますが、現実的で実行可能なアクションにして、確実に行動に移せる方が大切です。3

6. ふりかえりをふりかえる

ふりかえりというイベントそのものをふりかえり、ふりかえり実践を継続/よりよくするためのアクションを考えます。

ここまでやってきた各ステップを、ふりかえりの場に対しても実施するイメージです。

アクションは次回のふりかえりまでに、あるいは次回のふりかえりのときに実行します。

7. アクションを実行する

あとは実行するのみです。
アクションはできる限りIssue管理し、アクションの達成または次のふりかえりまでみんなが定期的に見る場所(チームが使っているプロジェクトボードなど)に掲げておきます。

ここまでのふりかえりの流れのまとめと時間配分

仮に1ヶ月単位のふりかえりを5人で実施する場合、計75分、バッファ込みで約1時間半は取った方がよさそうだと感じました。

  1. アイスブレイク(5分)
  2. 話したいトピックの確認(2分)
  3. ふりかえりルールと進め方の確認(2分)
  4. 起きたこと・考えたことを時系列で思いだす(全22分)※話したいトピックがある場合は割愛
    1. 各自でどんどん書いてみる(10分)
    2. 書いた内容を皆に共有(1セクション2分、計12分)
  5. アイデアを出し合う(全28分)
    1. ピックアップトピック選び(3分)
    2. 各自でどんどん書いてみる(10分)
    3. 書いた内容を皆に共有(5分)
    4. 内容を掘り下げてアイデアを出す(10分)
  6. アクションを決める(5分)
  7. ふりかえりをふりかえる(5分)
  8. 次回ふりかえり用のセクションを作成する(5分)

正直最初からここまでがっつりやるのはちょっと・・・と思ったら

少しずつ取り入れる

チームメンバーは日々の開発業務で忙しいので、毎月1時間半の定期的なMTGを入れることはハードルが高い可能性があります。

たとえば日々のMTGのなかで、毎週金曜日は
次イテレーションのプランニングをするMTGが開催されている場合は、その冒頭で以下のようなふりかえり超短縮版をやってみるのもよいかもしれません。

  1. 前イテレーションで気になった点を各々5分で考える
  2. 5分で追加で話したいトピックがあるか確認する
  3. 必要に応じてスポットMTGをするよう算段を立てる

みんなであつまって個人のふりかえりをしてみる

チーム内で各メンバーが異なるタスクに従事している場合、チームでふりかえりをしたとて、チームとしてのアイデアやアクションは考えづらいのでは、と思います。

その場合、個人にフォーカスしたふりかえりを、みんなで集まってやってみる、とするといいかもしれません。

今回取り上げたのはチームとしてのふりかえりではありますが、ふりかえりそのものは個人単位で実践してもいいことはたくさんあります。
1人だと続けられなくても、チームメンバーと集まって各々でふりかえる、ふりかえり内容を共有し合って褒め合う、とすると、個人でのふりかえりを継続できるうえ、チームの雰囲気は良くなると思います。

おわりに

ふりかえりガイドブックの著者である@viva_tweet_xさんが「ふりかえりカタログ(コミュニティ版)」を公開されています。

ふりかえりガイドブックで触れられていたノウハウや各ステップでよく利用される手法の説明、参考書籍などがMiroのボード上にばばーん!と展開されています。
各手法に実際にふりかえりを実践している方々のコメントが付箋で貼られているのがまた参考になります。
これ無償でいいのか?!と度肝を抜かれました。

ふりかえりを実践する場合は、このカタログをチームメンバーと眺めながらふりかえりのやり方を考えていくとよさそうです。

  1. MiroFigJamなどのオンラインホワイトボードツールを使うとより効果が高まりそうですが、企業によってはこれらのツールの利用ができない場合もあるので、どこの企業でも使えるドキュメントツールを前提に考えてみました

  2. これは、タイムラインという手法をイメージしています。タイムラインについてはこちらの記事がわかりやすいです

  3. もちろんアクションの中には長期間にわたって実行していくべきものもあります。そのため、アクションを短期的・中期的・長期的なアクションに分類したうえで、長期的なアクションを実現するための小さなアクションを短期的なアクションとして据えるのがよさそうです。

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