これは『作って動かす ALife』の1章の要約です。
正しくない箇所、疑問に思う箇所がある場合はコメントでご教示いただけると幸いです。
ALife のアプローチ
Alife は、すでに存在する生命体を観察することで「生命とは何か」を理解しようとする方法をとりません。「生命の本質とはこうではないか」と仮説をたくさん立て、それを元に人工的なシステムを作ってしまい、作りながら生命の本質を理解しようとするアプローチをとります。
生命の定義
遺伝子工学のようにテクノロジーやエンジニアリングと生命性が結びつくことで、私たちがもつ生命の認識は徐々に変容しています。生命は変わることのできない所与のものではなく、目的に応じて変更可能なものへと変化するのです。例えば、身体障がい者の義肢(= 生命の一部)が高度化(= 変更可能なもの)すれば、健常者よりも速く走る(= 目的)ことが可能となります。
「そもそも生命は目的があって存在するのか」という見解もあります。ダーウィンが提唱した自然選択説の立場をとると、自然淘汰のプロセスは目的を持って行われるものではありません。例をあげて説明します。私たちは空飛ぶ鳥を見ると「羽根は空を飛ぶために適応したものだ」と考えます。しかし実際には、羽根がもっていた本来の機能は飛ぶことではなく、保温のためだったと考えられています。保温のために進化した羽毛が、性選択によって様々な模様を描けるような平板状の羽根に進化し、それがたまたま飛ぶための翼として使われるようになったのではないか、という仮説です。
計算と意識
アラン・チューリングは「計算可能なもの」という概念を作りました。この概念を土台に、実際に計算を実行できる機械(= コンピューター)の基本原理が考えられました。それでは、私たちがもつ「意識」は計算可能なものでしょうか。近年注目されている「人工知能」は意識をもつのでしょうか。
それを知るには、人間がどのように知覚しているのかを簡単に整理していきましょう。私たちがもつ「意識」は、センサー(五感)から入ってくる情報を精査して、身体への運動へとつなげています。外を見たら雨が降っている(= 五感から入ってくる情報を精査)ので、今日は傘を持って家を出よう(= 身体への運動)というように。これを「感覚運動のカップリング」といいます。深層学習が得意とするのは、センサーから受け取る情報に対して、カテゴリー分けをすることで必要な情報を抽出する作業です。しかし、現実の知覚プロセスはもっと複雑です。
同じ情報を与えられたとしても、どう行動するのかは状況によって変わります。ユクスキュルの環世界論を引用すれば、ヤドカリにとってのイソギンチャクとは、お腹が空いたときはエサになる。お腹が空いていなければ、殻の装飾となる。つまり同じインプットに対しても、コンテキストによって異なるアウトプットが起こりえるのです。
このように、コンテキストを汲んだ複雑な処理部分を生み出すのはとても難しい。生命の意識のように柔らかい、作り込まれていないシステムが必要となります。
まとめ
- 人工知能と ALife(人工生命)は違うよ。
- ALife は「計算」「生命」「システム」という諸概念を引き継ぎながら、生命とその生命からなる環世界を理解していくよ。