背景
弊社、株式会社リンクアンドモチベーションでは生成AIを活用した生産性向上プロジェクトを2024年から本格的に行なっています。
これまでは、事業部がエンジニアに依頼しエンジニアがツールを開発する、という開発フローでしたが、多様化する社内ニーズに対応するための開発速度が課題となっていました。
この課題を解決し、生産性向上を加速する手段として、事業部のコンサルタントをDifyエンジニアへと育成する取り組みが始まりました。
事業部のDifyエンジニア育成の目標と実績
目標
2025年末までに、
「コンサルタント全員、Difyエンジニア」を目標としています。
それにより、
・コンサルタントが自業務で効率化したいツールを自分で作る
・コンサルタントがプロトタイプを作成し、部分的なコーディングのみ開発部門へ依頼を出す
上記の開発フローへと変化を遂げ、開発生産性の向上を目指しています。
現在の実績
2024年9月から1部署にて取り組みを開始し、2か月で以下の成果を創出しています。
開発実績
・コンサルタント6名がDifyエンジニアとしてツール開発に従事。
・2か月で12個のツールを開発。
具体的な開発物
ツール名 | 概要 |
---|---|
組織サマリくん | 顧客名を入力すると、統合報告書などから業界や企業の現状と今後の展望を要約する。 |
資料分析bot | 顧客に関するPDF資料を入れると、特定の項目で情報を整理する。 |
PM相談bot | 過去の事例や業界データをもとに、コンサルタントがプロジェクトを推進する上での質問や相談に回答する。 |
効果
・Difyツールで年間100時間/人の業務削減を実現。
・要求整理や要件定義の時間が短縮され、ツール開発までのリードタイムが約50%短縮。(15日 → 8日)
・自案件のコンサル業務をその場でDifyによって効率化し、1案件あたり30時間の時間短縮。
育成における課題と打ち手
Difyエンジニア育成において、起こった課題に対して、打ち手を講じました。
-
ツールの概念を理解できず、開発が進まない
<課題>
・「変数」「RAG」などの概念が理解できず、Difyを上手く使うことができない。
<打ち手>
・座学はほとんどせず、とりあえず楽しく使ってみるところから始める。
・サンプルをいくつか用意し、ノードをコピー&ペーストするところから始める。
・週1回のペアプログラミングにより、即座に疑問点が解消できる体制を整える。
-
プロンプト設計の難しさ
<課題>
・プロンプト設計ができず、アウトプットの精度を高められない。
<打ち手>
・AI人材要件を策定し、Dify開発に必要なプロンプトスキルを事前に習得した状態で開始する。
AI人材要件 | 概要 |
---|---|
レベル4 | ノーコードツールや基本的なコーディングを用い、外部サービスとの連携処理ができる |
レベル3 | Difyを用いて、簡易的なAIツールの開発を行うことができる |
レベル2 | プロンプトエンジニアリングを駆使し、自業務の効率化ができる |
レベル1 | AIツールを業務で日常的に使う習慣がある |
-
時間が捻出できず作れない
<課題>
・通常業務を優先し、Difyを触る時間が取れない。
<打ち手>
・コンサルタントの期初の目標設計にDifyツール開発に関する目標を置く。
・目標設計に応じた稼働割合の計画を事前に実施する。
まとめ
Difyをコンサルタントが活用し始めてから、以下のメリットを感じています。
-
事業部での自立的に生産性向上ができる
・課題発見~開発までコンサルタントが行い、自部署の業務の効率化が自分自身で実行できる -
エンジニアの一部民主化
・簡易的なツールをコンサルタントが作ることで、開発部門のエンジニアはより高度で中長期的な課題解決に専念できる
個人的には、Difyエンジニアの方から、「出来ることの広がりを感じて仕事が楽しい」との声をもらっているので、一人ひとりのキャリア形成にも好影響を及ぼしていけたらと思っています。