1. 名前解決の概要とDNS
1.1 名前解決の必要性
TCP/IPネットワークではデバイス間の通信にIPアドレスを使用しますが、数値形式のIPアドレスは記憶が困難です。これを解決するため、www.wang.orgのような人間に優しいドメイン名を使用します。DNS(Domain Name System)はこのドメイン名をIPアドレスに変換する分散型データベースサービスです。
主な利点:
- ホスト名とIPアドレスの分離(IP変更時も名前維持可能)
- インターネットリソースへの直感的なアクセス
1.2 名前解決方法の種類
ローカルホストファイル
# Linux: /etc/hosts
# Windows: %WINDIR%\system32\drivers\etc\hosts
122.10.117.2 www.wang.org www
93.46.8.89 www.google.com google
DNSシステムの特徴
- アプリケーション層プロトコル
- C/Sアーキテクチャ
- 使用ポート:53/udp, 53/tcp
- BIND(Berkeley Internet Name Domain)実装
1.3 ドメイン名構造
階層 | 例 | 説明 |
---|---|---|
ルートドメイン | . | 13台のルートサーバー |
トップレベル | .com .org .jp | 組織/国別コード |
セカンドレベル | wang.org | 組織専用ドメイン |
サードレベル | study.wang.org | 最大127階層まで可能 |
2. DNSの動作原理
2.1 クエリタイプ
再帰的クエリ(Recursive Query)
クライアントとローカルDNS間で使用。DNSサーバーが最終結果を返すまで責任を持って解決。
特徴:
- 単一のクエリで解決
- クライアント負荷軽減
反復クエリ(Iterative Query)
DNSサーバー間で使用。参照先情報を返し、クライアントが直接問い合わせ。
特徴:
- 複数クエリが必要
- トラフィック分散効果
2.2 DNSキャッシュ
# WindowsでのDNSキャッシュ確認
ipconfig /displaydns | findstr redhat
# Linuxでのキャッシュクリア
systemctl restart nscd
キャッシュ戦略:
- TTL(Time To Live)値に基づき保持
- クエリ効率向上
- ネットワーク負荷削減
3. DNSサーバーの実装
3.1 主要コンポーネント
コンポーネント | 説明 |
---|---|
プライマリサーバー | マスターデータ保持 |
セカンダリサーバー | ゾーン転送でデータ複製 |
キャッシュサーバー | クエリ結果を一時保存 |
フォワーダー | 特定クエリを上位サーバーに転送 |
3.2 逆引きゾーンの設定
# named.conf設定例
zone "117.243.177.in-addr.arpa" {
type master;
file "117.243.177.rev";
};
4. 高度なDNS構成
4.1 CDN連携
コンテンツデリバリネットワーク:
- 地理的位置に基づく最適サーバー選択
- レイテンシ削減
- 負荷分散
4.2 スマートDNS
# GeoIPデータベース連携例
view "internal" {
match-clients { 192.168.0.0/16; };
zone "example.com" {
type master;
file "internal.example.com.zone";
};
}
機能:
- クライアント位置情報に応じた応答
- ネットワーク最適化
- 障害回避
5. インターネットDNSアーキテクチャ
5.1 ルートサーバー構成
重要な事実:
- IPv4ルートサーバー:13台(米国10、欧州2、日本1)
- 雪人計画(IPv6):25台(中国1主3従含む)
5.2 セキュリティ強化
DNSSEC実装:
- デジタル署名による応答検証
- キャッシュポイゾニング防止
- 完全性保証
6. 実践的な設定例
6.1 サブドメイン委任
# 親ドメイン設定
subdomain IN NS ns1.subdomain.example.com.
ns1.subdomain IN A 192.168.1.10
6.2 フォワーダー設定
options {
forwarders {
8.8.8.8;
8.8.4.4;
};
forward only;
};
7. トラブルシューティングツール
# 主要コマンド
dig www.example.com
nslookup www.example.com
host 192.168.1.1
whois example.com
チェックポイント:
- ゾーン転送の正常性
- TTL値の適切性
- 逆引き設定の整合性
8. 最新動向(2023年)
- DoH(DNS over HTTPS)の普及
- 量子コンピューティング耐性アルゴリズム研究
- 自動ゾーン管理のクラウド統合