問題文
次の問いに答えよ。
(1)$\log_23 = \frac{m}{n}$を満たす自然数$m,n$は存在しないことを証明せよ。
(2)$p,q$を異なる自然数とするとき、$p \log_23$と$q\log_23$の小数部分は等しくないことを証明せよ。
(3)$\log_23$の値の少数第1位を求めよ。
読んで思ったこと
- 背理法じゃん。
- (3)は、いま数学系YouTuberがこぞって取り上げている「不等式評価」というやつ。$\log_23$を上下から評価して少数第1位を決定する。
- 不等式評価を知らなければ、(1)(2)は解けないとダメだねぇ、そうだろう当時のワイくんよ。
解答
(1)
$\log_23 = \frac{m}{n}\ \dots\ [1]$を満たす自然数$m,n$が存在すると仮定する。
[1]式より
2^{\frac{m}{n}} = 3\\
\Leftrightarrow\ \ 2^m = 3^n
となり、左辺は偶数、右辺は奇数であるため、上式は成り立たない。
よって[1]式を満たす自然数$m,n$は存在しない。
(2)
$p,q$を異なる自然数とし、$p\log_23$と$q\log_23$の小数部分が等しいと仮定する。$p>q$としても一般性を失わないので$p>q$とし、$l$を自然数として$p\log_23 - q\log_23 = l\ \cdots\ [2]$と表せる。
[2]式より
(p-q)\log_23 = l\\
\Leftrightarrow\ \ \log_23 = \frac{l}{p-q}
上式は(1)の結果に反するので、$p\log_23$と$q\log_23$の小数部分は等しくない。
(3)
★少数第$N$位を決定するには不等式評価★
実数$x$の少数第1位が3であるとき、
1.3 < x < 1.4
が成り立つ。
同様に少数第2位が5であれば1.35 < x < 1.36
が成り立つ。
このように、$x$を上下から挟んでやることで、目的の位の数を決定することができる。
決定する位が深いほどより厳しい評価が必要になるため奇抜なアイデアを要することがあるが、今回は少数第1位だけでよいのでパッと思いつくガバガバ評価で十分かもしれないし、不十分かもしれない。
今回の場合、$\log_22 < \log_23 < \log_24$と評価すると$1 < \log_23 < 2$となり、小数部分を1つも決定できない。
対数の性質として、真数が大きくなるほど対数の増加は穏やかになり、$\log_23$をわざと自然数倍してから評価することで厳しい評価が可能になる。
$\log_28 < \log_29$より$3 < 2\log_23\ \ \Leftrightarrow\ \ 1.5<\log_23\ \cdots\ [3]$
👆ほんとは$\log_28 < \log_29 < \log_2 10$としたいが、$\log_25$の値が与えられていないので不可能。一旦下からの評価だけしておく。
$\log_2 243 < \log_2 256$より$5\log_23 < 8\ \ \Leftrightarrow\ \ \log_23 < 1.6\ \cdots\ [4]$
👆$\log_2 3^s$を$\log_2 2^t$で上から押さえつけられる、かつ対数の値が一番近くなるような$s,t$をいろいろ試して探してみる。($s$を1ずつ増やしてやってみるのが得策)
このとき[3]から少数第1位は5だとわかっている(頭でわかっているだけで数学的に示されたわけではない)ので、不等式を変形した結果<1.6
となればゴールイン。
実際に$s$を変化させて$t$を決め、不等式評価してみると...
- $s=2$
- $\log_2 3^2 < \log_2 2^4\ \ \Leftrightarrow\ \ \log_23 < 2$ ガバガバ
- $s=3$
- $\log_2 3^3 < \log_2 2^5\ \ \Leftrightarrow\ \ \log_23 < 1.666 \cdots < 1.7$ 惜しい
- $s=4$
- $\log_2 3^4 < \log_2 2^7\ \ \Leftrightarrow\ \ \log_23 < 1.75$ まだダメ
- $s=5$
- $\log_2 3^5 < \log_2 2^8\ \ \Leftrightarrow\ \ \log_23 < 1.6$ OK!!
[3]式と[4]式から$1.5 < \log_23 < 1.6$であるため、$\log_23$の少数第1位は5。
おまけ
まぁ、入試問題にせずともコンピュータに計算させちゃえば一発なんですけどね
ふりかえり
- (2)で$p\log_23 - q\log_23 = k$ (0以外の整数)とすると、最後の分数の分母が負の数になる可能性があり(1)の結果から結論を導けないというところで減点されてしまいます。
- 不等式評価はいろんな問題で出るから、マスターするとメチャ強い。