思ったように実装が進まなかったり、差し込み課題がたくさんあったりとプロジェクトがうまく進まないことは少なくないと思います。
しかししっかりとした管理で解決するということは少なくないと思います。そこで進捗管理の手法の1つであるEVMについてまとめてみました。
EVM(Earned Value Management)とは
プロジェクトの進捗状況を定量的にリアルタイムで把握できる手法です。米国防総省が作成した資材の調達に関する評価方法だったものを改定し、ANSI(American Nationl Standard Institute)が標準規格としました。プロジェクト全体の進捗を予算や出来高、実際にかかったコストなどの金銭価値で分析することができる規格 となります。
期待されること
EVMを導入することによって期待される効果は大きく分けると2つです。
- コストとスケジュールを加味した進捗管理
- 部門ごとの進捗状況を統一した尺度で把握
コストとスケジュールを加味した進捗管理
プロジェクト成功には
- 予算内で行うこと
-
納期に間に合わせること
この2点が重要となります。納期に間に合わせるために人員を増やしても、予算オーバーでは元も子もありません。このような失敗を予防することが期待されます。
期待できること
部門ごとの進捗状況を統一した尺度で把握によってプロジェクトが、コストとスケジュールの2つを指標にしての管理が期待できます。
3つの基本的構成要素
EVMは以下に示す3つの基本的構成要素が重要になります。
1.PV(Planned Value : 計画価値)
PVとは、予定した作業に対して期間ごとに割り当てられた計画段階の予算のことです。予算設定のプロセスで作成されます。顧客や経営者の承認を得た後にプロジェクトが完了するまで、パフォーマンス測定のベースラインとして利用されます。
PVの月別コストの合計値のみを表示するケースや、以下に示す機能数と機能別標準工数(時間)などで管理するケースなどがあります。
上記の場合、1月の計画予算は400(時間)になります。同様に2月の計画予算は800時間で、2月終了時点での累計は1,200時間ということになります。私だけかもしれませんが、コストの単位を時間とすることに違和感がありました。しかし理解できると予算とスケジュールの両方の観点からプロジェクトの遂行を定量的に評価するEVMでは最適な表記なのかもと思えてきました。
2.AC(Actual Cost : 実コスト)
ACとは、その期間内に実際に費やされたコストのことです。予定した作業に対して期間ごとに割り当てられた計画段階の予算を表します。
上記の場合、2月には外部設計で1機能未完成にも関わらず、計画値を40時間もオーバーしていることが読み取れます。生産性の見積もりが甘かったのか、不測の事態があったのか・・・なんらかの理由で予想したよりも工数がかかってしまったと判断できます。逆に内部設計では、−40時間となっています。これも計画値と乖離しており、よろしい状況とはいえません。
3.EV(Earned Value : 達成価値)
EVとは、計画価値の達成度を表す指標です。達成価値という言葉が示すように達成した機能数と計画段階で求めた価値(すなわち標準工数)とを乗じて求めることができます。下記の例では2月のEVを算出すると、達成した機能数は14であることから600×(14/15)よりEVは560時間ということになります。
EVMで算出する数値
前述した3つの基本的構成要素を総合的に比較し、分析していく必要性があります。そのときに4つの指標値を用います。
SV(Schedule Variance)スケジュール差異
EV-PV=SV
SVとは現時点で完了した実績作業分の予算コスト「EV」と、計画段階の予算コスト「PV」が必要です。SVがマイナスの数値だと、計画より遅延していることがわかります。プロジェクト進行中、定期的にSVを算出することで、差異にあわせて全体スケジュールの見直しなどを行えることが期待できます。
CV(Cost Variance)コスト差異
EV-AC=CV
CVは「Cost Variance」の略であり、特定の時点までに実際に発生したコスト「AC」と、現時点までに完了した実績作業分の予算「EV」の差になります。CVがプラスであればその時点までのコストが予算内であることを意味します。逆にマイナスの場合だと、その時点までのコストが予算を超過していることになるため、調整しなければなりません。
SPI(Schedule Performance Index)スケジュール効率指標
EV/PV=SPI
SPIは「Schedule Performance Index」の略であり、スケジュールの進み具合を示す指標です。現時点で完了した作業の予算コスト「EV」を、計画時に見積もった予算コスト「PV」で割り、算出できます。SPIが1よりも大きければ当初の計画よりも進んでいるため、順調といえるでしょう。また、1であれば計画どおりに進んでいるといえます。1よりも小さい場合は計画よりも遅れていることを意味するため、スケジュールを調整しなければなりません。
CPI(Cost Performance Index)コスト効率指数
EV/AC=CPI
CPIは「Cost Performance Index」の略であり、プロジェクトの進捗に対して、計画と比べてどのくらいのコストがかかっているかを算出します。現時点で完了した作業の予算コスト「EV」を、実際に発生したコスト「AC」で割り算出します。CPIが1であれば予算どおりですが、1よりも大きく異なる場合は計画コストの見直しが必要です。なお、1より大きければ計画していたよりもコストが発生しておらず、1よりも小さければ計画よりも大きいコストが発生していることになります。
プロジェクトの予測
プロジェクト完了時の予測を以下の4指標から算出することができます。
BAC(Budget At Completion:完成時総予算)
BACとは、完成時総予算(完了時の実行予算総額)のことで、上記で説明したPVの合計値になります。
EAC(Estimate At Completion:完成時総コスト見積り)
EACとは、プロジェクト期間中にその時点までの情報に基づいて、プロジェクト完成時に最終コストを見積もるときに使われる指標です。下記の計算式より求めることができます。
AC+ETC=RAC
この値が正の値なら予算オーバーで負の値なら予算内になリます。
VAC(Variance At Completion:完了時差異)
VACとはEACと目標とするBACの差のことです。下記の計算式より求めることができます。
BACーEAC=VAC
この値が正の値なら予算オーバーで負の値なら予算内になリます。
TCPI(To-Complete-Performance-Index:残作業効率指数)
TCPIとはBACやEACを達成するために、残作業によって達成しなければならないコスト効率のことをいいます。残作業をBAC-EV、残資金をBAC-ACと表すことで、下記の計算式より求めることができます。
TCPI = (BAC – EV) / (EAC – AC)
グラフで考えよう
上記で求めた値をグラフに起こし、効率的に分析をすることが可能となります。グラフについては下記の記事を参考にしてみてください。
感想
EVMの算出は大変だなと感じるかもしれません。しかし様々な数値から多く情報を得ることができます。そのため大切なことと考えます。プロジェクト管理ツールを使って効率的に行う方法も方法もあるようです。必要に応じて利用し、適切に分析できるようになりましょう。
長くなりましたが、ここまでお読みいただきありがとうございました。
感謝!