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超概算見積もり

Last updated at Posted at 2016-12-13

この記事は、フリーランス残酷物語 Advent Calendar 2016 - Qiita の18日目の記事です。

フリーランスってのは自営業だ

毎度、職業欄に何って書こうかと悩む訳ですが、分類的には「自営業」です。仕事がなければ無職と紙一重だったりするわけですが、まあ、「開店休業中」ってパターンもあるし、商店街のシャッター通りみたいなのもある訳ですから、自営業は自営業です。

ちなみに、皆さん大好き?な AKB48 の面子も「個人事業主」=「自営業」ですからね。

会計を覚えよう

うちのブログで比較的アクセスが多いのが「超概算見積もり」のページです。

ソフトウェア開発の超概算見積もり | Moonmile Solutions Blog

このページは、知人への説明用に簡単に書いたページなのですが、フリーランス/個人事業主/自営業...なんでもいいんですが、自分で概算見積もりができると便利です。と言いますか、できないと派遣仲介屋さんに絞られてしまいますよね。私も、以前、ちょっと仕事が無くて苦しかった時(貯金はあったのに「仕事ないから苦しい」というのが、あとで考えると矛盾してますよね)、30万/月で常駐の仕事を受けたことがあるのですが、先方では150万円/月だったことがあります)。なので、仕事がなくても、

  • 年間でどのくらい生活費が必要なのか?(支出があるのか?)
  • 年間の収入はどのくらいなのか?

のようにキャッシュフローを抑えておくとよいです。いわゆる、自転車操業のような会社の場合(でかいところでは、ソ〇トバ〇ク)には、支出と収入のバランスが崩れると一気に倒産します。いわゆる黒字倒産というやつですよ。

個人でやっている場合は、億のような金額が動くわけではないのですが、キャッシュフローをおさえるというところは、会社と同じです。できることならば、日商簿記3級+α程度を覚えたほうがよいでしょう(プラスアルファのところは、「決算書を読める」≒与信管理ができる、というところです)。実際に日商簿記に受かる必要はありません。知識だけで十分です。

さて、この個人のキャッシュフローをどうやって把握するのかは非常に簡単です。巷では家計簿をつけたり、スマートフォンのあれこれの会計ソフトをつかったり、あれこれの専門家に頼んだりするのですが、いえいえ、キャッシュフローを把握するだけだったらもっと簡単なのです。ただし、IT 業界だけに限りますが。

IT 業界のフリーランス(自営業)は、八百屋の自営業や飲食店の自営業とは違って、収入と支出の回数が非常に少ないのが特徴です。パソコン保守のようなフリーな方の場合は、1回なんぼという計算が多いでしょうが、大抵は、月額で契約をしているか(保守契約を含む)、請負契約で収入を得るか、というパターンが多いでしょう。また、飲食店や小売店(文房具屋さんとか)の自営業とは異なり、「仕入」というものがほとんど存在しません。パソコンとか書籍ぐらいなものです。これも経費落としだったりしますよね。なので、支出のほとんどが「自分の人件費」なわけです。つまりは、自分に対して支払っている「報酬」(給与と言ってもよいでしょう)になります。

となると、収支決算は非常に簡単になりますよね。

  • 収入は、銀行に振り込まれるお金(契約先から)
  • 支出は、銀行から出して使うお金(交通費などの経費やら家賃やら光熱費やら税金やら社会保険も含めて)

な訳ですから、1年間の頭とエンドで、口座のお金がどれだけ上がったか下がったが収益になって(粗利とは違います)、総収入と総支出が簡単に出せます。最近は、銀行から CSV ファイルで収支をダウロードできるので、Excel を使えば一発です。

エンドの部分で、口座のお金が増えているように仕事をすればよいのです。一応、個人事業主の会計年度は12月末になりますが、個人で収支を考える場合には関係ありません。株式会社じゃないので、株主のために利益を出すとか出さないとかをやる必要はなく、個人的に喰えるだけのモノが残ればよいので、2,3年単位でもよいでしょう。1年ごとに一喜一憂する必要はありません。

というわけで、これが「キャッシュフロー会計」の考え方です。

特に IT 業者の自営業の場合は、仕事がない時期や、請負で収入が入らない時期が長い(半年後に数百万円レベルの収入があることも多い)ので、黒字倒産しないように、途中で口座のお金がなくならないように注意する必要があります。大体、初期状態で1年間の収入が口座にあると気分的に楽でしょう。そうじゃないと、途中で「借金」をすることになって、ムダな利息を払うことになってしまいますからね。

この考え方が身に付くと、月額でなんぼという心配をしなくなります(月での収入が0円でもよくなる)。飲み会などで言ったことがありますが、「まあ、鮑業者」のようなものです。1年に1回だけどこーんと収入があって、あとは全く収入がない状態で良いわけですよ。そのほかの時間は、仕込みやら継続的な勉強やらで過ごすことができます。

超概算見積もりを使おう

さて、スループット会計の仕組みを覚えたところで、概算見積もりをしてみましょう。何かの仕事を請けたときに、それが「どのくらいの金額で請けると赤字にならないのか」というのをきっちりと頭に叩き込みます。単純な足し算と掛け算で十分なので、相手の営業さんと会話するときでも「暗算」ができるようにしておきましょう。

年間支出から月額を割り出しておく

フリーランスは個人商店なので、働くのは自分です。まあ、ある程度までいくと外注したりしますが、大抵は孫請けだったり、中小企業から伝手で請負だったり、派遣で手伝いに行ったりしますよね。その中で、「この仕事の価値はどのくらいなのだろう」とか「自分のする仕事はどのくらいの価値なんだろう」とか、「え?私の年収、低すぎ!」みたいなことを考えるかもしれませんが、全然関係ありません。まったくそんなことを考慮する必要はありません。

まずは、口座を見て1年でどれだけ使ったのかを合計します。そして12で割ります。簡単ですね。1年で全く銀行口座の金額が変わっていなかった場合(貯金もしない)場合は、収支がトントンなわけです。計算を簡単にするために、120万円使ったとすると、月額は10万円ですよね。自営業にはボーナスのような「経営者の都合によって支払いを遅延させる仕組み」はないので、12割してしまいます。

さて、12割しましたが、先のスループット会計でわかるように、月額で10万円ずつ貰わないといけない訳ではありません。例えば、口座に120万円あれば、1年間の生活費が足りるわけですから、請負契約で12か月分を一気に120万円として貰っていい訳です。この口座の120万円はバッファになります。

どのくらい稼働するかを決めておく

毎月、10万ずつ収入があれば1年間暮らせるし、この先10万円ずつずっと貰える仕事があれば一生食えるわけです。まあ、多くは儲かりはしないけど、暮らせますよね。それで充分です。でも、毎日毎日働いているだけでは、普通の「会社員」と変わらないですよね。会社員の場合は、いろいろ保証があったりして(馘になる可能性も、会社自体がなくなる可能性もありますが)よさそうじゃないですか。なので、自営業の特権を利用しましょう。6か月だけ働くということにします。後の6か月はお休みです。

となると、月額で20万円の請求を6か月だけやればいいということなりますよね。仕事が、毎月毎月あるわけでもないので、多少多めに価格を上げる必要があることを知っていると思いますが、計算はもっと簡単です。1年に「何か月働きたいか?」を決めればよいのです。

お客が、その価格で納得するか、提示する

ひとりの自営業なので、1日忙しく働いても、だらだら働いても1人/日です。ひいひい言いながら徹夜を続けてやっとこさ仕上げても1人/月だし、あれこれと余裕を持って夜中にちょっと働いたりアニメを見ながら仕事をしたりしても1人/月です。

せっかくの自営業なので「働きぶり」を評価されるよりも、「成果物」で評価されてがっつりお金を貰ったほうがいいですよね(まあ、違うばあいもあるけど、遊びでやるとか、気分でやるとか、ボランティアとか、そこは自営業の楽しいところです)。なので、見積もりするときに、この仕事が何か月かかるのか(私は何か月休めるだろうか?)を頭にいれて、単純にさきの単価(ここでは20万円)を掛けます。

  • できるだろう人月 × 欲しい単価

これだけです。実に簡単でしょう?

あとはお客が、この価格で納得するのか(高いとか、予算がないとか、値引きしてくれとか諸々)だけの問題で、自分の側から言えば、これがボーダーラインです。これを下回ると赤字になってしまうし、会社員じゃないのだから戦略的なあれこれとか上司のあれこれとか出世のあれこれとかは無縁です。

もちろん、保険の意味で(規模見積もりを見誤ることはあるので)なんぼか足しておくのは重要ですし、「値引き交渉」に備えるために、あらかじめ値引き分を足しておくとは重要です。ほら「大阪豆ごはん」でお母ちゃんが営業をひいひい言わせながら値引きしたあとも「あれでも利益がでるんだから、楽な商売よ~」とか「謝るぐらいなら値引きを手伝ったらへんで~」とか言うのと同じです。そこは、交渉術ですからね。IT 業界の現場の方は交渉術が得意でない方が多いので、この「あらかじめ」を入れおくと心安らかになるでしょう。

できるだろう人月はどうやって出すのか?

このあたりは、人それぞれなので、会社員のように積み立て方式でやってもよいし、経験上の概算でもかまいません。チケット駆動でも、WBS でも、過去のプロジェクトでも色々あるでしょう。未知なものであれば、あらかじめ調べておくとか、予算を提示するときに概要設計まで済ませてしまうとかいう方法があります。私の場合は、概要設計までひと晩かけてやってしまうほうです。

あと、自営業なので、複数の仕事が重なるのが常です。でも、客からみればそれ専任であるかのように見えるのがよいのでスケジュールには余裕を持たせておきます(隙間仕事やパラレルで動かせるように)。これも「大阪豆ごはん」に出てきますが、家の床を修理に来た工務店さんが「そりゃ、このスケジュールでやったら、わてらやってけまへんがな~」って感覚が重要です。お客に出すスケジュールと自分のスケジュールは別会計ですよ。

という訳で、皆さまのよき自営業なクリスマスライフを応援するために。

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