お前は何がしたいんですか?
「映画監督になれるやつっていうのは、映画監督になりたいやつじゃなくて、映画を撮りたいやつ」 昔、たけしがこういう感じの事を言ってたんだけど、これはまさにバスっと的を得ているなあと、頭に残っておりました。
映画監督って、俳優に囲まれて華々しく見えて、なんかクリティブでカッコイイよねって事で、特に撮りたい映画もないのに、映画監督っていう職業になりたいなあっていうのは、なんか筋が外れているよね。
映画っていう表現が三度の飯より好きで、それに取り憑かれ、で、撮り続けた結果、世間的に映画監督という肩書きになっているわけであって。
坂本龍一も、自分はプロのミュージシャンっていう意識がなくて、何となく音楽をずっと作り続けてきただけなんだっていう事を著書に書いていて、通じるものがあるなあと感じました。
Pixerのジョン・ラセターも、芸大を卒業し、ずっとコンピューターで作るアニメに取り憑かれてきて、ジョブスが元々グラフィック用ハードウェアを作るためにLIMのCG部門を買収してPixerを立ち上げた後も、営業用にと言い訳しながら、ジョブスに隠れてずっとアニメーションを作り続け、結局ハードウェア事業はポシャり、アニメがヒットし、いつの間にかPixerはアニメーションの会社として大成功を収めてしまったというストーリーもある。
で、プログラマーである。
ロードマップに乗って、ロードで野垂れ死にしないように
これからはITの時代で、生活のあらゆるとこにプログラムがあり、派手な株式上場や、成長率が前年比何倍っていうのはほとんどがIT企業で、少し前は仮想通貨、今はAI関連がなんかよく分からんけど凄いことになっている様な気になってくる。
で、今自分のやっている仕事は何の成長も見込めない、このままではアカン、将来野垂れ死にや、これからはプログラマーっていう職業が良いに違いない、その為にはなんかプログラムを勉強せなあかん、となって、始める人はかなり多いんじゃないかと思う。
つまり、プログラマーっていう職業になりたい人です。
プログラムを組んで作ってみたいものやイメージも無いのに、職業としてプログラマーになりたいという所がスタート地点になっている。
第一、第二世代くらいの活躍したプログラマーは、中学生とか高校の時にプログラムと出会い、ゲームだったりを作っていた人達が多い。つまり、職業以前に、何か作りたいものがあったわけだ。これって、やっぱり健全だと思う。
特に作りたいものもなく、イメージもなく、プログラマーという職業になりたい場合、一体どこからスタートするのか?どこにモチベーションを求めれば良いのか?これはかなり難しいスタート地点だと思う。それは、才能があるとかないとか、そういうのと別の次元で。
よく、どの言語を勉強すれば良いんですか?みたいな愚問を、エンジニア系のコミュニティーで見かけるけど、そんな事聞いてる時点で、やめた方がええと思ってしまう。
何か作りたいものが先にあれば、どの言語が必要で、どういったステップで習得していけば良いかは、もう歩いていけば自然に見えてくる。
巷のスクールは、そういった初心者迷子プログラマー向けに、とりあえずPHPとかJavaScriptとかを教えてウェブサイトを作るようなコース設定をしている所が多いけど、そういうパスってもう凄いレッドオーシャンで、スクール出たところで就職先など無いってなると、心折れへん?だって、就職するっていう目標の為に一生懸命勉強したわけで、それが叶わないと、一体数ヶ月の勉強は何だったのかとなるわけで、元々こういうウェブサイトやオンラインのサービスを作りたいっていうイメージを持っていれば、別に就職に多少失敗しても、その後も自分で作りたいものを作りつつ、腕を磨き、その先に就職っていうパスも見えてくる。
色んなところにロードマップ的なマニュアルがいっぱい出ているけど、そこに書かれている道筋は1、2年経つと、もうかなり違うものになっている。
目的地が見えていると、多少道筋が変わっても、対応していけるけど、辿り着きたい場所が分からないのにとりあえずそのロードに乗っちゃうと、かなり絶望することになる。
つまり、モチベーションがダダ下がりになり、苦痛を感じる様になり、そのロードの途上で野垂れ死ぬこととなる。
確かに、プログラマーやエンジニアって、他の多くの職業と同様に、一業種であって、その職種に就きたいからスキルを学ぶっていうのは、全然間違っていないし、それで新しい未来が開けることはよくあるし、間違いなくポジティブなこと。
ただ、なぜこういう事を書いてるかっていると、ロックダウンで自分自身仕事を失い、貯金も失い、とりあえずオンラインで外人に日本語を、日本人に英語を教えたりしてたんだけど、日本人に英語を教える場合、なんか凄く勉強っていう意識なんだよね。
何のために勉強したいのって聞くと、ステップアップとか、転職に生かしたいとか、TOEFLのスコアがとか、本当にそういう仕事の為の動機が多い。漠然としていて、イメージが湧きにくい。
行ってみたい国があって、一人で旅行できる様になりたいとか、海外で彼女を作りたいとか、世界中に友達が欲しいとか、そういうんじゃないんですよ。
外国人が日本語を習いたい理由を聞くと、好きなアニメをオリジナルで見たいとか、日本を旅行して、寿司やラーメンを食べたいとか、日本人の彼女が欲しいとか、そういうモチベーションが多い。すごくイメージしやすいし、その先に何か楽しそうな事が待ち受けてそうな気持ちになる。
勉強っていう意識でやってると、やっぱりつまらないっていうか、言語っていう凄く使えて楽しいツールを学ぶのが辛くなってくるような気がするんだよね。正しい発音とか、正しい文法とか。点数とか個別のスキルじゃなくて、もっと近い将来、海外できれいな彼女と屋台で飯食ってるとか、パリの落ち着いたカフェのテラスでカフェオレを飲んでいるとか、ギリシャの絵本みたいな街で、夜の散歩を楽しんでいるとか、そういうイメージがあった方が、楽しく、かつ上達も速いと思うんだよね。
これはプログラミングにも全然当てはまるなあと思うんですよ。
何の作りたいものも、イメージもなく、職業としてイケてそうイメージだけで、巷に溢れているスクールやロードマップに乗った結果、その途上で野垂れ死にという悲劇は避けて欲しいなあと。
その為には、一度色々と調べてみて、おっ、こんなん作ったら面白いんちゃうか というものを最初の時点で見つけておき、必要なスキルを学習した暁には自分の手で形にしてみるというイメージをしっかり持っておくというのは、ロードマップに乗る前に非常に大切だと思いますよという事を言いたかったのでした。