ディリクレ積分
\int_{-\infty}^{\infty}\frac{\sin{x}}{x}dx=\pi
とかを畳み込みとフーリエ変換で考えよう。畳み込みとフーリエ変換はそれぞれ次のように定義する。
畳み込み
(f*g)(x)=\int_{-\infty}^{\infty}f(t)\cdot g(t-x)dt
フーリエ変換
\mathcal{F}[f](x)=\int_{-\infty}^{\infty}f(t)\cdot e^{-ixt}dt
フーリエ逆変換
\mathcal{F}^{-1}[f](x)=\frac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}f(t)\cdot e^{ixt}dt
このとき、次の関係が成り立つ。
\mathcal{F}[f*g]=\mathcal{F}[f]\cdot\mathcal{F}[g]
(証明は高校数学の美しい物語さんにあったのでこちらから。ありがとうございますほんとにいつもお世話になってます。)
こいつを両辺フーリエ逆変換してあげると、
f*g=\mathcal{F}^{-1}[\mathcal{F}[f]\cdot\mathcal{F}[g]]
すなわち
\int_{-\infty}^{\infty}f(t)\cdot g(t-x)dt=\frac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}\mathcal{F}[f](t)\cdot\mathcal{F}[g](t)\cdot e^{ixt}dt
となる。唐突だがディラックのデルタ関数$\delta(x)$について考えよう。
\begin{align}
\mathcal{F}[\delta](x)&=\int_{-\infty}^{\infty}\delta(t)\cdot e^{-ixt}dt \\
&=e^{-ix\cdot0} \\
&=1
\end{align}
なので、$\delta(x)$と$1$はフーリエ変換対とかいうやつになります。よって今回の定義では
\mathcal{F}[1](x)=2\pi\delta(x)
ということになります。数学的には微妙な表記かもですが、まあ$1$と$2\pi\delta(x)$が対応するってことです。よって$g(x)=1$とおくと、
\begin{align}
\int_{-\infty}^{\infty}f(t)\cdot 1dt&=\frac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}\mathcal{F}[f](t)\cdot2\pi\delta(t)\cdot e^{ixt}dt \\
&=\int_{-\infty}^{\infty}\mathcal{F}[f](t)e^{ixt}\cdot\delta(t)dt \\
&=\mathcal{F}[f](0)e^{ix\cdot0} \\
&=\mathcal{F}[f](0)
\end{align}
となります。よって
\int_{-\infty}^{\infty}f(x)dx=\mathcal{F}[f](0)
が得られました。つまり$f(x)$のフーリエ変換が分かればこの積分も解けるわけです。$f(x)=\dfrac{\sin{x}}{x}$の場合を考えてみましょう(ディリクレ積分)。次の関数$h(x)$を考えます。
h(x)=
\begin{cases}
1 \quad&\text{if}\ |x|\le1\\
0 &\text{otherwise}
\end{cases}
このときフーリエ変換を考えます。
\begin{align}
\int_{-\infty}^{\infty}h(x)dx&=\int_{-1}^{1}1\cdot e^{-ixt}dt \\
&=\left[-\frac{e^{-ixt}}{ix}\right]_{-1}^{1} \\
&=\frac{e^{ix}-e^{-ix}}{ix} \\
&=\frac{2\sin{x}}{x} \\
&=2\,\text{sinc}\,x
\end{align}
最後はオイラーの公式を使いました。よってこれらはフーリエ変換対なので
\mathcal{F}[\text{sinc}](x)=\pi h(x)
となります。以上より$\dfrac{\sin{x}}{x}$のフーリエ変換がわかりました。よって
\begin{align}
\int_{-\infty}^{\infty}\frac{\sin{x}}{x}dx&=\mathcal{F}[\text{sinc}](0) \\
&=\pi h(0) \\
&=\pi
\end{align}
が得られました。めでたしめでたし。ちなみに同様にフーリエ変換が分かれば
ガウス積分
\int_{-\infty}^{\infty}e^{-x^{2}}dx=\sqrt{\pi}
も解けるはずです。やってないからわかんないけど。まあというわけでこの記事は以上だ。以降は君たちの手でこの公式を使ってくれ。じゃあな。
P.S. ただの数学好きの一学生が初めて書いた記事なので一部間違ってても許して!