In a nutshell
MITライセンスは,改変・再配布・商用利用が自由な非常に緩やかなライセンスである.但し,以下の2点を守ることが必須である.
- 元の著作権表示(Copyright)を削除しない
- MITライセンス文(LICENSEファイル)を保持する
この2点さえ守れば,オリジナル作者の許可なく,修正や公開が可能である.初学者にとっても取り組みやすく,世界中で広く使われている.
はじめに
あるVSCodeの拡張機能を自作するにあたり,既に公開されているスクリプトを軸に機能を追加することとした.今までは簡単な機能であったため,自作も容易であったが,先駆者が作成したものを活用し,それを公開することも検討する段階に入った.今回対象としたスクリプトはMITライセンスで配布されており,その再配布に対する姿勢は非常に寛容であった.本稿では,MITライセンスの意図と目的,そして実際に守るべきルールについて整理する.
予想される読み手
- 初めて他者のソースコードを参考に拡張機能やツールを開発しようとしている開発者
- オープンソースのライセンスについて最低限の理解を持ちたいプログラミング初学者
- VSCode拡張やOSS貢献を検討している個人開発者
MITライセンスの概要
MITライセンスは,以下のような特徴を持つ.
- 改変・再配布が自由である.
- 商用利用が可能である.
- オープン・クローズドの両方のソース形態で再利用可能である.
- ライセンス文と著作権表示を保持する限り,作者への許可は不要である.
- 上記を満たす,非常に寛容なライセンスである.
ちなみに,「MIT」とは,Massachusetts Institute of Technology に由来する.
使用時に守るべきルール
MITライセンスの下で公開されたソフトウェアを修正・再配布する際には,以下のルールを守らなければならない.
1. 著作権表示の保持
元のソースコードに含まれている著作権表記(例:Copyright (c) 2021 Original Author
)を削除してはならない.
すべての再配布物(バイナリ形式・ソース形式のいずれも)にこの表記を含める必要がある.
2. MITライセンス文の保持
MITライセンスの全文(通常は LICENSE
ファイル)を削除せず,必ずそのまま同梱する.
3. 自身の修正内容の記述(推奨)
修正を行った場合は,自身の著作権表記や変更内容を追加してもよい.
これは義務ではないが,責任範囲の明確化やバージョン管理の観点から推奨される.
例:
Copyright (c) 2021 Original Author
Modified by Your Name (c) 2025
Released under the MIT License.
オリジナルへの許可は不要
MITライセンスは,「このライセンス文を守る限り,誰でも自由に使ってよい」とあらかじめ許諾されているライセンスである.
そのため,以下のような場合においても逐一オリジナル作者の許可を得る必要はない.
- 改変して再配布する場合
- 新しいプロジェクトのベースとして利用する場合
- 商用製品の一部に組み込む場合
公開の際の注意点
修正後にソフトウェアをGitHubなどで公開する際には,以下の点に注意する.
- 元の
LICENSE
ファイルを削除せず,そのまま含めること. - README等に「本プロジェクトは○○をベースに改変したものである」と記載すると,誤認を避けることができる.
- 拡張機能ストア(例:VSCode Marketplace)で配布する際には,「MITライセンス」であることを明示すること.
他のライセンスとの違い
MITライセンスは,再利用の自由度が非常に高く,商用化にも適している.
一方で,他のライセンスでは以下のような制約や追加条項がある.
以下に,マークダウン形式で正しく表示されるように整形し,記号(◎,〇,×,▽)で要件を視覚的に整理した表を提示する.
ライセンス | 改変・再配布 | 商用利用 | クローズドソース利用 | 元作者への許可 | ライセンス条項の保持義務 |
---|---|---|---|---|---|
MIT | 〇 | 〇 | 〇 | ▽ | ◎(ライセンスと著作権) |
GPL | 〇 | 〇 | ×(再配布時はOSS義務) | ▽ | ◎(ライセンス全文) |
Apache 2.0 | 〇 | 〇 | 〇 | ▽ | ◎(著作権とNOTICEファイル) |
BSD | 〇 | 〇 | 〇 | ▽ | ◎(著作権) |
- ◎:必須(削除・省略不可), 〇:可(自由に実行可能),×:不可(ライセンス上認められていない),▽:不要(明示的な許可や連絡は不要)
MITライセンスが使われている例
MITライセンスは,以下のような著名なソフトウェアでも採用されている.
商用・オープンソースを問わず,世界中で幅広く使用されている.
- React:Facebookによって開発されたUIライブラリ
- VSCode:Microsoft製のコードエディタ
- Three.js:WebGLによる3D表現ライブラリ
- jQuery:DOM操作のためのJavaScriptライブラリ
Summary
- MITライセンスは,非常に自由度の高いオープンソースライセンスである.
- 再配布・商用利用・改変が自由であり,クローズドソース化も可能である.
- 著作権表記とライセンス文の保持が義務である.
- オリジナルへの事前許可は不要である.
- 公開時には元プロジェクトへの敬意を示す記述を加えることが望ましい.
- 他のライセンスと比較しても制約が少なく,個人・商用を問わず使いやすい.
References
Open Source Initiative - Popular / Strong Community > MIT License
GitHub Docs - Repositories > Manage repository settings > Customize your repository > Licensing a repository