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PoEケーブルなんて物は無い.PoEは有線LANケーブルで給電も行える技術のこと

Last updated at Posted at 2025-02-15

背景

PoE(Power over Ethernet)は,イーサネットケーブルを使ってデータ通信と電力供給を同時に行う技術である.
当初,「PoE専用のケーブル」が存在するのではないかと考えていたが,PoE対応機器を用いれば通常のLANケーブルで給電できることが分かった.
本記事では,PoEの概要,技術的背景,導入コスト,適用例について整理する.

要点

  • PoEはLANケーブルを使った給電技術であり,「PoE専用のケーブル」は存在しない.
  • PoEは2003年に標準化され,監視カメラやWi-Fiアクセスポイントの分野で普及.
  • PoE対応機器は通常のLANケーブル(Cat5e以上)で動作するが,PoEスイッチやインジェクターが必要.
  • PoEの導入コストはやや高めだが,電源工事が不要なため,長期的にはコスト削減につながる.
  • PoE++(最大90W)でもノートPCのフル充電は困難で,USB-C PDが適している.

PoEの概要

PoE(Power over Ethernet)は,イーサネットケーブルを使ってデータ通信と電力供給を同時に行う技術である.通常のLANケーブル(有線LAN)を利用するため,PoE専用のケーブルは存在しない.

PoEを活用することで,電源コンセントが不要になり,配線が簡素化される.特に,監視カメラ・Wi-Fiアクセスポイント・VoIP電話などの機器で広く使われている.

なぜ通常のLANケーブルでは給電できないのか?

通常のLANケーブルは,もともとデータ通信専用として設計されている.そのため,電力供給の仕組みがない.しかし,PoEではLANケーブルの一部の配線を利用して電力を送る技術が追加されている.

PoEの仕組み

LANケーブルは,8本の銅線(4ペア)で構成されている.従来の10/100Mbpsの通信では,そのうち4本(2ペア)しかデータ通信に使用されないため,未使用のペアを電力供給に活用する方式がある.また,ギガビット通信(1000Mbps以上)では全8本がデータ通信に使われるため,データと電力を同じ線で同時に送る方式が採用されている.

つまり,通常のLANケーブルでは給電を想定していないため,PoE対応の機器と技術が必要になる.

現在はギガビット通信が当たり前に行われているので,PoEを実装すると通信速度が制限されると考えてよい

PoE.jpg
(画像の引用元 : PANDUIT 2021/03/10 コラム > なるほど・ザ・LANケーブリング > LANケーブルの規格(カテゴリ)についての知識を高めよう https://www.panduit.co.jp/column/naruhodo/7848/)

色が付いていて断面がわかりやすい.
4色の配線と,8つの穴がある事がわかる.

PoEの歴史

PoEは2003年にIEEE 802.3afとして標準化され,当初はVoIP電話機や監視カメラ向けに導入された.
2009年にはIEEE 802.3at(PoE+)が策定され,30Wの給電が可能となり,Wi-Fiアクセスポイントの利用が拡大.
2018年にはIEEE 802.3bt(PoE++)が登場し,最大90Wの給電に対応.現在はスマートビルディングやIoT機器の分野で活用が進んでいる.

PoEの規格

PoEには複数の規格があり,供給できる電力が異なる.

  • IEEE 802.3af(PoE):最大15.4W
  • IEEE 802.3at(PoE+):最大30W
  • IEEE 802.3bt(PoE++):最大60Wまたは90W

PoE対応スイッチやインジェクターを使用することで,非対応機器にもPoEを活用できる.

現在主流なのは単なる有線LANか?PoE対応か?

用途によって異なるが,一般的な家庭やオフィスでは「通常の有線LAN(データ専用)」が主流である.一方で,監視カメラやWi-Fiアクセスポイント,IoT機器ではPoEの導入が進んでいる.

  • 一般的なオフィス・家庭用ネットワーク → 通常の有線LANが主流
  • 監視カメラ,Wi-Fiアクセスポイント,IoT機器 → PoE対応が増加
  • 企業ネットワーク(特に大規模なもの) → PoEの普及が進行中

特に,Wi-Fi 6(802.11ax)対応のアクセスポイントやスマートオフィス機器の増加に伴い,PoEの利用が拡大している.今後,IoT機器やスマートビルディングの普及により,PoEの採用がさらに増えると考えられる.

PoEケーブルは存在するのか?

「PoEケーブル」という専用のケーブルは存在しない.PoEは一般的なLANケーブル(Cat5e,Cat6,Cat6aなど)を使用して,データ通信と電力供給を同時に行う技術である.

PoEを利用するには,PoE対応のスイッチまたはインジェクターと,PoE対応の受電機器(例:IPカメラ,Wi-Fi AP,VoIP電話)が必要になる.LANケーブル自体に特別な違いはないが,Cat5e以上が推奨される.

PoE導入コストと通常の電源供給の比較

PoEをデバイス側(例:防犯カメラ)に実装する場合のコストは,PoE対応機器の価格,PoEスイッチやインジェクターの導入コスト,設置コストによって決まる.以下,PoEと通常の電源供給方式のコスト比較を示す.

PoEの導入コスト

PoE対応デバイス(防犯カメラなど)

  • PoE対応カメラの価格:15,000~50,000円
  • PoEスイッチ(4~8ポート):10,000~30,000円
  • PoEインジェクター(単体給電用):3,000~8,000円
  • LANケーブル(Cat5e以上):100~200円/m

PoEの利点

  • 電源コンセント不要:電源工事が不要で配線がシンプル
  • 設置コスト削減:天井や高所に設置する場合の工事費が削減
  • 一括管理が可能:PoEスイッチで給電管理ができる

PoEの欠点

  • PoEスイッチの導入コストが発生
  • 最大90Wまでの給電制限がある(高出力機器には不向き)

通常の電源供給方式のコスト

通常の防犯カメラ(電源アダプター使用)

  • 防犯カメラ(PoE非対応):10,000~40,000円
  • 電源アダプター(12V/24V):1,500~5,000円
  • 電源延長ケーブル:500~1,500円/m
  • コンセント増設工事:10,000~30,000円(業者による)

通常電源の利点

  • PoEスイッチを用意する必要がない
  • 高出力機器(モーター駆動カメラなど)に対応可能

通常電源の欠点

  • 設置場所にコンセントが必要(天井や屋外では電源確保が難しい)
  • 配線が増えるため設置が複雑化
  • 電源配線工事が必要な場合,コストがかさむ

コスト比較(概算)

項目 PoE方式 通常電源方式
デバイス本体(防犯カメラ) 15,000~50,000円 10,000~40,000円
給電設備(PoEスイッチ/電源アダプター) 3,000~30,000円 1,500~5,000円
配線コスト(LANケーブル/電源延長) 100~200円/m 500~1,500円/m
工事コスト(電源増設が必要な場合) なし 10,000~30,000円

→ PoEの方が初期投資はやや高めだが,電源工事が不要なため長期的にコストを抑えられる場合が多い.


どちらを選ぶべきか?

  • PoEが適している場合

    • 電源の確保が難しい場所(天井・屋外・広いオフィス)
    • 複数のデバイスを一括管理したい場合
    • 長期的に運用コストを抑えたい場合
  • 通常の電源供給が適している場合

    • 設置場所にコンセントがある場合
    • 高出力の機器を使用する場合
    • PoEスイッチの導入が割に合わない場合(単体機器のみ)

PoEでラップトップPCは充電できるだろうか?

現在のPoE規格では,一般的なラップトップPCをフル充電するのは難しい.

ラップトップPCの消費電力は50W~100W程度が一般的であり,PoE++(IEEE 802.3bt)で最大90Wの給電が可能ではあるが,電力ロスや給電の安定性の問題があるため,安定した充電は困難である.

一部の超低消費電力のノートPC(例:Chromebookや小型のビジネス用ノートPC)であれば,PoE++による充電が可能な場合もあるが,通常のUSB-C PD(Power Delivery)の方が適している.

今後,PoEのさらなる高出力化や効率化が進めば,ラップトップPCの充電も現実的になる可能性がある.

参考文献


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