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ドワンゴAdvent Calendar 2024

Day 22

高校情報科の教材制作のお話

Last updated at Posted at 2024-12-23

はじめに

こんにちは。株式会社ドワンゴでプログラミングや高校情報科の教材の企画制作をしております。moesukeです。
この記事は、ドワンゴ Advent Calendar 2024 22日目の記事です。

2021年よりZEN Study 情報科教材の制作に携わっております、制作に関するお話を少しだけしようと思います。

高校情報科について

まず、高校情報科については昨年のアドベントカレンダーでも記事にしておりますので、よろしければご覧ください。

教材制作において参考にした資料

情報Ⅰは2022年度に必修科目として設置、情報Ⅱは2023年度に選択科目として設置された新科目です。新科目と言っても全く新しい内容というわけではなく、旧情報科「社会と情報」や「情報の科学」の内容を整理したりアップデートされたものです。
旧科目が存在するとはいえ、新しい科目として設置されるので教材制作のためには、通常の科目以上にキャッチアップが不可欠でした。
制作開始時、参考にしていたのは下記の資料です。

教材制作において留意した点

教材制作において留意した点をいくつか紹介します。

特定の教科書に依存しない

情報Ⅰの検定教科書は10冊以上あります。
10冊あるといっても、生徒が選べるわけではなく自治体や高校単位で何れかの教科書を採用します。
教材制作にあたり、検定教科書を一通り目を通し、内容の選定、用語表記の違いにも対応しました。

例えば、教科書によって同じ対象を表す用語であっても、くりかえし構造|反復型構造|反復構造|繰り返し構造 といった表記の違いがあります。
共通テストをはじめとした大学入試において、どの表記で出題されるかわかりませんので併記しています。
また、教科書用語のみならずIPAの試験で使用される一般的な情報技術用語も併記しました。場合によってはIPAの用語を重要用語とし他の表記をかっこ書きにすることもありました。

教科書用語について気になる方は情報処理学会情報入試委員会の方で作成されている情報科全教科書用語リストをご覧ください。

多くの生徒・受講者に体験を提供する

検定教科書では PC の OS について Windows 前提するものがほとんどです。
N高グループではmac OSを利用している生徒も多いのでmacOSを用いた体験も無視できませんでした。
教材制作時は以下のデバイスを利用前提として制作しました。

  • macOS
  • Windows 10、11 それぞれHomeおよびPro Edition

また、表計算・ドキュメント・スライド制作については、Microsoft office製品は有料であることからGoogle Workspace を用いるようにしました。
なお、これに伴いVBAを用いたプログラミング学習は見送りました。
その他のツールについては下記を利用しました。

3Dモデリング => blender
Web会議システム => Zoom
HTMLのエディタ => VSCode

大きな選定理由は

  • 無料で利用できる
  • 解説のための製品スクリーンショットの商用利用ライセンスに問題がない
  • OS間での使い勝手に大きな差がない

といったところです。ZoomについてはMeetでも良かったのですが、N高グループで使っているICTツールなので採用に至りました。

情報Ⅰ・Ⅱで用いた主なプログラミング言語と環境は下記です。

  • Scratch
    • オンラインエディタ
  • Python
    • PCに環境を構築
    • Google Colaboratory
  • JavaScript
    • p5.js
  • R
    • PCに環境を構築
  • etc...

特定のプログラミング言語の習得は目的としませんでした。あくまでプログラミングを体験し、興味がある場合はプログラミングの課外講座へ誘導する形で制作しました。
練習問題などではフローチャートの問題をはじめとしたロジックやアルゴリズムを理解できているかどうかを重要視しました。

誰でも戸惑わず読めるように

重要用語については教育漢字であるかどうかに関わらず、ふりがなを振りました。
また、英単語にも読み方を書いたり、英略語には元の単語をかっこ書きし意味を理解できるよう留意しました。
例: LAN(Local Area Network:ローカルエリアネットワーク)

学習にあたって心理的障壁を減らすために図解やイラスト多く使うなどの工夫もしました。
図解だけでは抽象的になってしまうことがあるので、文章との併用をすることが多かったです。

教材制作の技術面の話

授業スライドや教材ページの執筆・管理にはVSCode および GitHubを利用しました。
複数名での執筆やレビューをするため都合が良かったのです。

スライドの制作は Marp を用いてMarkdown形式で進めました。
リッチなアニメーションは不要でしたので、必要十分でした。
低コストでシンタックスハイライトを導入したりできたので情報科のスライド制作にはかなりおすすめです。

レビューには GitHub の issues や Pullrequest を活用しました。複数人でパワーポイントを編集していくよりも、差分管理が明確にでき便利でした。

また、textlint-jaを導入し日本語の文法チェックや表記揺れの対策もしました。
Markdownでの執筆を選択したからこそできた方法でした。Markdown + VSCode + GitHub での執筆おすすめです!ぜひチャレンジしてみてください。

終わりに

今回は高校情報科の教材制作についてお話ししました。
年明けの共通テストでは「情報」が導入されます。新科目の導入についてはいろんな意見がありますが、個人としては大学入試に生徒が新しい科目を選択できるということは素晴らしいことだと思っています。(情報関係基礎は数学②の選択科目だったため数Ⅱ・B等を選択する場合は選べなかった)
試験科目が増えたことより生徒の負担増という問題の一端になっていますが、それについては個別の科目が原因というよりは、入試のシステム自体の問題だと思っています。
私も受験生だった頃、朝から晩までセンター模試を受けるのは億劫でしたし、もっと良い入試のシステムが構築されると良いなと思います。

受験生の方に向けて。新科目なのは全員一緒です、情報科目をうまく活かして希望の進路に向かわれることを願っています!
教育に携わっている方へ向けて。共に生徒に良い体験を提供できるよう頑張りましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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