こんにちは。
株式会社ドワンゴで情報科やプログラミングの教材を担当しております、moesukeです。
この記事は2023年N予備校プログラミングコースアドベントカレンダーに投稿します。
この記事はN予備校のPRを含みます。
高校情報科について
今年のアドベントカレンダーでは高等学校の情報科についてお話ししたいと思います。
2022年度より、プログラミングを学習内容として含む「情報Ⅰ」が必修化されました。また、2025年度大学入学共通テストにも新たな出題科目として「情報Ⅰ」が加わります。
今回はその「情報Ⅰ」でどんなことを学ぶのかについてお話しします。
そもそも情報とは
そもそも情報とはどのように定義されているかを確認しておきます。
事実,事象,事物,過程,着想などの対象物に関して知り得たことであって,概念を含み,一定の文脈中で特定の意味を持つもの
JIS(日本工業規格)
情報とは,物事に関する知らせであり,それを受け取る主体に判断や振る舞いの基準を与えるものである。
東京書籍:情報Ⅰ Step Forward! 2ページ
情報とは,一般に,人間が判断をしたり,行動を起こしたりする際に必要なものと考えられている。
実教出版:情報Ⅰ Python 4ページ
情報とは,わたしたちの考えや行動といった意思決定の材料となるものを指すが,一般には,データや知識まで含めた広い意昧で用いられることも多い。
日本文教出版:情報Ⅰ 17ページ
これを踏まえた上で高校情報科でどのような資質・能力を身につけていくのかをお話しします。
情報科で育成する資質・能力
早速ですがクイズです! ジャジャジャンッ!
Q1.高等学校の情報科ではどのような資質・能力の育成を目指しているでしょうか、当てはまるものを全て選びなさい。
ア.知識及び技能
イ.思考力,判断力,表現力等
ウ.学びに向かう力,人間性等
正解は全てです。
今回の改訂では,知・徳・体にわたる「生きる力」を生徒に育むために「何のために学ぶのか」という各教科等を学ぶ意義を共有しながら,授業の創意工夫や教科書等の教材の改善を引き出していくことができるようにするため,全ての教科等の目標や内容を「知識及び技能」,「思考力,判断力,表現力等」,「学びに向かう力,人間性等」の三つの柱で再整理した。
(文部科学省【情報編】高等学校学習指導要領 (平成30年告示) 解説より)
情報科に限らず全ての教科でこれらの資質・能力の三つの柱の育成を目標としています。
今回はこの三つの柱のうち高校情報科で取り扱う「知識および技能」についてお話しします。
情報科で習得する知識・技能
第2問 ジャジャンッ!
Q2.情報Ⅰではどのような知識や技能を習得するでしょうか?当てはまるものを全て選びなさい。
ア.プログラミング
イ.モデル化とシミュレーション
ウ.ネットワーク
エ.情報セキュリティ
オ.データベース
カ.情報デザイン
キ.情報モラル
ク.情報の扱いに関わる法令や制度
ケ.メディアとコミュニケーション手段
コ.情報技術と社会
サ.コンピュータのしくみ
シ.アルゴリズム
ス.問題発見・解決の方法
セ.情報の取り扱い
ソ.データの収集と分析
正解は全てです。(ざっくり分けています)
情報に関する科学的な見方・考え方を働かせ,情報技術を活用して問題の発見・解決を行う学習活動を通して,問題の発見・解決に向けて情報と情報技術を適切かつ効果的に活用し,情報社会に主体的に
参画するための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 効果的なコミュニケーションの実現,コンピュータやデータの活用について理解を深め技能を習得するとともに,情報社会と人との関わりについて理解を深めるようにする。
(2) 様々な事象を情報とその結び付きとして捉え,問題の発見・解決に向けて情報と情報技術を適切かつ効果的に活用する力を養う。
(3) 情報と情報技術を適切に活用するとともに,情報社会に主体的に参画する態度を養う。
(文部科学省 高等学校学習指導要領 (平成30年告示) 第10節 情報より)
情報Ⅰではプログラミングやコンピュータの仕組みなどの情報技術を学習するものと捉えている人が多いのではないでしょうか?
情報Ⅰ・Ⅱでは情報技術だけでなく、情報そのものの取り扱いについても学習します。
学習の幅が広く勉強が大変そう、と感じるかもしれませんが、中学校までの学習で習得してきたことをより深く知っていったり、ふわっと知っていたことをより明確に知っていくことの方が多いです。もちろん中には聞いたことなかったという知識もあるかもしれませんが、この先、生きていく上で重要な情報です。
高校情報科のプログラミング
高校情報科では、以下のようなプログラミング言語を取り扱っています。
- Scratch
- Python
- JavaScript
- VBA
- Swift
- ドリトル
- R
(参照した教科書:東京書籍 情報Ⅰ StepForward! 情報Ⅱ、実教出版 高校情報Ⅰ Python 情報Ⅱ、日本文教出版 情報Ⅰ 情報Ⅱ)
上記以外にも SQL や HTML/CSS なども取り扱います。
情報Ⅱは機械学習の内容を多く含むためPythonを使う実習が多くなっています。
具体的な処理としては
- 変数
- 条件分岐
- 繰り返し
- 配列
- 関数
を学習します。
ライブラリやAPIの利用についても学習します。(教科書によります。)
どの言語で学んでおくと入試で有利なのか気になりますね。
大学入学共通テストにおけるプログラミング
大学入試共通テスト(以下共通テスト)の情報Ⅰでは公平性を保つために、独自の擬似言語(日本語でのプログラム表記)により出題されます。
プログラミングに関する問題を出題する際のプログラム表記は,授業で多様なプログラミング⾔語が利⽤される可能性があることから,受験者が初⾒でも理解できる⼤学⼊試センター独⾃のプログラム表記を⽤いる。
大学入試センター 令和7年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テストの出題教科・科目の問題作成方針に関する検討の方向性について 「情報」の問題作成方針に関する検討の方向性 より
擬似言語の仕様については当日まで公表されないと思われます。特定の言語が使えるか、ではなくプログラミングの原理を理解しているかを測るためです。
どうしても擬似言語の練習がしたい!という場合は、センター試験・共通テスト過去問の数学 情報関係基礎のプログラミングの問題や基本情報技術者試験の過去問を参照してください。後者はWeb上で解説されているものがあります。
独立行政法人大学入試センター過去の試験情報: https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/kako_shiken_jouhou/
基本情報技術者試験ドットコム: https://www.fe-siken.com/
プログラミング以外はどのようなことを学習するのか
前述した通り、情報Ⅰではプログラミングなどの情報技術に限らず広い範囲で「情報」について学習します。
全て解説したいのですが、今回は簡単にキーワードを紹介します。
単元 | キーワード |
---|---|
情報の取り扱い | 情報の特性、情報の評価、情報の信憑性、情報の定義、情報バイアス、情報操作... |
メディアとコミュニケーション手段 | メディアの特性、コミュニケーション手段とその特徴、コミュニケーションの変遷、ソーシャルメディア... |
情報デザイン | 抽象化、可視化、構造化、ユーザビリティ、アクセシビリティ、ユニバーサルデザイン、色の三原色、光の三原色、UI/UX、プレゼンテーション、ポスターセッション、動画制作、Webページ、HTML/CSS... |
情報モラル | メディアリテラシー、インターネットトラブル、炎上... |
情報の扱いに関わる法令や制度 | 著作権法、不正アクセス禁止法、プロバイダ責任法、個人情報保護、 青少年インターネット環境整備法... |
問題発見・解決の方法 | PDCAサイクル、ブレーンストーミング、KJ法、ロジックツリー... |
情報技術と社会 | 情報システム、POSシステム、AI、ロボット、Society 5.0、スマート農業、EdTech、機械学習... |
コンピュータのしくみ | アナログ、デジタル、2進法、16進法、ビットとバイト、文字コード、圧縮、標本化、量子化、符号化、CPU、主記憶装置、補助記憶装置、入力装置、出力装置、ソフトウェア、ハードウェア、OS... |
アルゴリズム | 二分探索、線形探索... |
ネットワーク | WAN、LAN、プロバイダ、ハブ、ルータ、プロトコル、TCP、IP、UDP、IPアドレス、HTTP |
情報セキュリティ | コンピュータウィルス、ランサムウェア、フィッシング、ファイアウォール、認証技術、セキュリティホール、暗号化、電子署名、SSL/TLS |
データベース | データベース、関係データベース、データベース管理システム、データモデル、演算、結合、選択、射影... |
データの収集と分析 | オープンデータ、誤差、外れ値、欠損値、テキストマイニング、表計算、分散、標準偏差、偏差、データの尺度、ヒストグラム、クロス集計... |
モデル化とシミュレーション | モデル化、シミュレーション、モンテカルロ法... |
プログラミング | フローチャート、変数、条件分岐、繰り返し、配列、関数、機械語、プログラミング言語、演算子、引数、返り値... |
ざっとこのような内容を学習します。
データの収集と分析の単元については数学Ⅰのデータの分析でも扱っています。他の単元も小中とさまざまな教科で学習したきたことの総復習になっている部分が多くなっています。
どうやって勉強すればいいの?
情報科のおすすめの勉強法を書いていきます。
教科書をしっかり読む
手元にある「情報Ⅰ」の教科書をしっかり読みましょう。
教科書の中に問題が出題されています、一つ一つ解いてみましょう。
他の教科書も読んでみる
情報Ⅰの教科書は11冊出版されています。それぞれ違った角度から解説されていたり、図解が多かったり、文書の解説が多かったり、最終的に学習することは同じですが書き方が違っています。学校で買ったものとは他の教科書を入手してみるのもいいかもしれません。
教科書は特約店で購入します。 amazon にも出品されていますが、定価より高くなっています。
一般社団法人教科書供給協会: http://www.text-kyoukyuu.or.jp/
買う前に定価を確認しておきましょう。1000円〜1200円で購入できます。(2023/12時点)
一般社団法人教科書協会 https://www.textbook.or.jp/textbook/textbook-price.html
N予備校を使ってみる
N予備校の大学受験コースには情報Ⅰの参考書があります。参考書と一問一答の問題解説がついています。問題集は随時追加されています。
N予備校:大学受験 情報Ⅰ: https://www.nnn.ed.nico/courses/1679
プログラミングを勉強したい場合はプログラミングコースもあります!
JavaScriptはWebアプリ入門、Pythonは機械学習コースで基礎から学習できます。
N予備校には大学受験対策、プログラミング以外にもWebデザインや動画編集、グラフィックデザインなど、さまざまな教材・授業が準備されています。
市販の参考書を読んでみる
今回はおすすめの参考書を3冊紹介します。
学校で習っていなくても読んで理解できる 藤原進之介の ゼロから始める情報I
著者:藤原 進之介
出版社:KADOKAWA
判型:A5判
ページ:354p
定価:1,650円(税込)
東進などで予備校講師をされている藤原先生の著書です。354ページぎっしり網羅的に情報Ⅰの解説が詰まっています。教科書の補足事項などもしっかり入っていておすすめです。
情報Ⅰ 大学入学共通テスト対策 会話型テキストと動画でよくわかる
著者:植垣 新一
監修:稲垣 俊介
出版社:インプレス
判型:B5判
ページ:288p
定価:1,980円(税込)
カラーで判型が一回り大きくて嬉しいです。具体例を交えて詳しい解説で進んでいきます。プログラミングの問題にもしっかり対応していて嬉しいです。全ての内容の動画解説付きです。
高校の情報Ⅰが1冊でしっかりわかる問題集
編著:鎌田 高徳/御家 雄一
出版社:かんき出版
判型:B5判
ページ:144p
定価:1,540円(税込)
基礎的な問題集です。要点がまとまっていて、問題の解説もすごくわかりやすいです。カラー印刷されていてポップな印象を持ちます。教科書で躓いてしまった人にもおすすめの本です。
情報Ⅰ 映像でわかる共通テスト対策問題集
編集:日本文教出版編集部
発行所:日本文教出版株式会社
判型:B5判
ページ:244p
定価︰990円(税込)
副読本としても販売されていますが、解説がしっかりしているので、他の出版社の教科書しか持っていなくても勉強できます。教科書や上述した書籍で学習後にこちらの問題集に取り組むと良さそうです。一問一答式の問題からプログラミングの問題、大学の過去問まで幅広く取り組めます。
マーク式基礎問題集 情報I
編著:米田 謙三/木村 剛隆/田中 忠司/大西 洋
出版社:河合出版
判型:A5判
ページ:208p
定価:1,320円(税込)
共通テストに対応したマーク形式の問題集です。教科書や上述した書籍で学習後にこちらの問題集に取り組むと良さそうです。
情報関係基礎の過去問を解いてみる
過去3年分の過去問は大学入試センターのWebページで配布されています。
それ以前のものは情報処理学会によって配布されています。
上記の2つのページで問題・解答は配布されていますが解説は配布されていません。
情報処理学会・学会誌note 教科「情報」の入学試験問題って? にて、共通テスト「情報」のサンプル問題、センター試験・共通テスト「数学 情報関係基礎」の過去問解説を始め、私大の情報科入試問題が解説されています。( [Φ一」(中の人さま)](https://x.com/jnsgsec?t=7tnqELQInpnZ6qsbtnnlFA&s=09) 情報提供ありがとうございます。)
特に 小池ケイコさんの「幸いさ」の解説が面白くてオススメです。
また、残念ながら今のところ情報関係基礎の解答解説の参考書も出版されていません。~~(上述した日本文教出版の情報Ⅰ映像でわかる共通テスト対策問題集で解説されていました。)
また、情報関係基礎は「情報Ⅰ」とは異なる教科ですので問題の形式は変わります、特に、第4問の表計算は情報Ⅰでは出題されません。考え方の練習としては役に立つので解いてみるのはいいとおもいます。
実際に手を動かしてみる
プログラミングや情報デザインの部分については実際に手を動かすのが習得の近道です。
N予備校プログラミングコース: https://www.nnn.ed.nico/genres/2
情報デザインについては実際にプレゼンテーション用のスライドやホームページを作ってみるといいでしょう。
自己紹介のプレゼンテーションや、自分の好きなものの紹介ページをつくる。勉強したノートを他の人に伝わるように綺麗にかき直すことでも情報デザインの技能が身につくと思います。
新聞やニュースを読む
情報の取り扱いについては、新聞やニュースを読みましょう。
どのようなことを伝えるためにどのような技術や表現を使っているか観察してみましょう。
まとめ
- 高校情報科では情報技術に限らず、情報そのものの扱い方や、情報デザイン、情報社会など多岐にわたって学習します。
- N予備校ではいろんな教材・授業が受講できます。
参考資料
文部科学省【情報編】高等学校学習指導要領 (平成30年告示) 解説: https://www.mext.go.jp/content/000166115.pdf
東京書籍: 情報Ⅰ StepForward! 情報Ⅱ
実教出版: 高校情報Ⅰ Python 情報Ⅱ
日本文教出版: 情報Ⅰ 情報Ⅱ
独立行政法人大学入試センターホームページ: https://www.dnc.ac.jp
一般社団法人教科書供給協会ホームページ: http://www.text-kyoukyuu.or.jp
一般社団法人教科書協会ホームページ: https://www.textbook.or.jp
情報処理学会 情報入試委員会: https://sites.google.com/a.ipsj.or.jp/ipsjjn/home