#日本は公開が原則、海外は非公開が原則
日本の学校や国家試験、民間試験は公開が原則で(運転免許や危険物といった受験回数、受験者が多い試験は非公開もあるが)毎回違う問題を作成するという原理原則のフローになっていると思うが海外では非公開が原則で試験問題の再利用は珍しくない。学校教育もしかり、国家試験もしかりだ。
#過去問販売 / 共有サイトの横行
少し古いが、
http://www.pearsonitcertification.com/articles/article.aspx?p=1941411
https://www.networkworld.com/article/2281542/microsoft-cracks-down-on-certification-exam-cheating.html
によると2008年時点で328もの過去問販売/共有サイトが発見されたそうだ。この手のサイトは一般に"braindump", "brain-dump", ブレインダンプサイトと呼ぶ。その昔は今ほど試験問題をコピー(撮影、録画)が困難だったことから、頭の中に暗記してきたものを全て吐き出すという意味の言葉が今でもそのまま使われていることによる。
どこから試験問題が流出しているのかという話だが、試験実施団体のスタッフも考えられるが世界中のテストセンターから流出している可能性が極めて高い。テストセンターのスタッフ自身か不正に強力しさえすれば今となっては漏洩はそれほど難しくないからだ。事実としてトルコ、中国、インド、パキスタンの4カ国はハイリスク国としてマイクロソフトによるベータ試験は受験できず受験も三カ国は現地の滞在許可がなければ現地で受験できないという決まりで運営されているという。
#公開行為
過去問を公開するのは私の知る限り全ての(海外の、テストセンター形式の)試験実施団体で禁止事項になる。"NDA" Non-Disclosure Agremeent (日本語でいうところの守秘義務)を試験申し込み時、受験前に承諾(承諾といってもマウスでボタンをクリックがほとんどだが)しなければ受験できないはずだ。日本では学校の期末試験、入試試験、国家試験等の問題はなぜか公開の原則があり非公開にしておく同意書にサインをすることはないのでこの時点から違和感がある人も多いのではないかと思う。
#試験対策行為
先の試験問題をそのままネットへの公開や試験中の不正なら剥奪等の処分の理解はできるのだが、「試験開始までの対策」にまで言及して禁止している試験実施団体は珍しいかもしれない。Microsoftは未承認資料は見てはいけないと閲覧行為まで禁止している(というか、はっきり brain-dump という言葉まで登場させ過去問が転がっていることを自ら認めている。
"Using unauthorized material in attempting to satisfy certification requirements (this includes using "brain-dump" material and/or unauthorized publication of exam questions with or without answers) 認定要件を満たすための未承認資料 (「ブレインダンプ」資料や、解答の有無にかかわらず試験問題に関する許可されていない出版物を含む) の使用"
では、ネットで検索してMicrosoftが言うところの「未承認資料」を閲覧して試験対策した者が資格剥奪された過去があるのか調べてみたが、ネットでどれだけ調べてもMicrosoftもMicrosoftではないどの試験団体の事例も見つけることはできなかった。実際には誰もいないのではないかという記事を見かけることもある。Microsoft自身がbraindumpサイトを運営しているのではないかという噂話(上記URLにも言及あり)も見かけるが(それによって受験者がある程度特定もできるので)本当か嘘かはっきりした情報は見当たらない(おそらく運営はしていないと思う)。上記の文章からは「資格取得要件達成」のために未承認資料を活用することはダメだと言っているが、資格取得要件でなければ見ても良いのかという疑問が残る。さらに難しいのは、未承認資料ないしはbraindumpで準備したことを証明をするのは試験中の不審な動作の記録をしているとしても実証はかなり困難に見える。強硬手段で資格剥奪をできなくもないのだろうが、アメリカは訴訟社会でもあるので根拠なく動くのも無理があるように見える。
さらに厄介なのが、承認された出版物って何?という話。ネットに転がっている教育資料の多くで何がbraindumpで何がbraindumpでないのか釈然としないケースがあることだ。知らず知らずのうちにネット検索したらbraindumpだったという受験生もあり得るわけで、インターネットを普通にgoogle検索、bing検索した人などの救済措置がどうなのかも釈然としない。検索結果や練習問題として閲覧したものが実際は本試験の問題ということもあるわけだ。ところで、最近、udemyというオンライン教育が有名になりつつあるが、ではudemyの学習プログラムをマイクロソフトが一つ一つ承認しているかというとそうではないはずだし(この段階で未承認資料?)、俗に言うbraindumpが一問もないかというと正直わからない。udemy自身も掲載している学習プログラムの過去問で一問も含まれていないことをわざわざ保証することは実際には(試験問題が何か公開されていないがゆえ)無理なはずだ。
#試験実施団体は明確に承認された出版物の一覧を定義できるのか?
例として "free braindump" で検索してトップに出てくる free-braindumps.com というサイトならドメイン名からしてもなら braindump だと名前から推察がつくはずだが、では "free exam prep" という一般的な検索キーワードでトップに登場する “examtopics.com” や ”download free pdf net“ と言った一般的な検索キーワードでトップに登場する ”downloadfreepdf.net“ といったサイトがどうかというとまずは中身を見てみないとドメイン名からでは不正を助長しているサイトかどうかはわからないと思う。他にもいろいろな検索結果が予測でき、意図せず間違えてクリックすることもあるだろう。インターネットで試験関係の情報の検索を一切することを禁止することには無理があるようにも見える。このあたり各試験実施団体はどう考えているのだろうか。どこどこのサイトの情報の閲覧を禁止すると明言すると今度は逆にそのサイトにいけば試験問題があるとわかり受験者が殺到する気がしないでもない。
#結局のところ
世界中一斉配信であることもあり試験がリリースされた翌日には既にパブリックになってしまういたちごっこが続いているようだが、試験実施団体・受験者双方によって一番良さそうな対策は試験問題の数自体を増やすことかなと思う。あるトピックについて500〜1,000問の試験プールから50問出題ともなれば500〜1,000問を習得すること自体のハードルがまず大変だしそれだけ数をこなしていればスキルセット的には本来目的としている内容をそれなりにカバーしているのではないかと思う(丸暗記だとしても)。あともう一つ思い浮かぶ案としては独占禁止法に抵触しそうだが、資料、本やトレーニングを「購入する場合」は全て承認されたものに限定し未承認は全て不正行為とすること。まずは悪徳有料事業者を撲滅にすると言う意味で。ただし、結局無料ならどうなんだという疑問は残ってしまう。
が故、インターネットには様々な情報があふれており、情報自体を遮断すると言うより公開されてしまうことが前提にするよう考え直す過渡期ではないかとつくづく思う。