はじめに
Googleの研修がベースになっているというサーチ・インサイド・ユアセルフを読んでみました。
きっかけは単純で、Kindle Unlimitedの対象になっていたのを見つけた、という現金なものです。
普通の人にはあまり馴染みのない「瞑想」をテーマにした本なので、どの程度響くかは個人差があると思います。
個人的には実践の価値がある内容だと感じていて、興味のある方がいればその後押しをしたいな、という思いで記事にしてみました。
どんな本なの?
サーチ・インサイド・ユアセルフ ― 仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法 -Amazon
Googleのロゴを連想させる表紙なので、なんとなく印象に残っている方も多いと思います。
私も見かけて「どんな本なんだろう」と気になってはいたものの、実際読むまでどんな内容かは知りませんでした。
最初にも書いたとおり、セルフコントロールや対人関係に関する能力を向上させることを目的として、その手段として「瞑想」をテーマに扱っている本となります。
ジャンルとしては自己啓発書になるかと思います。
瞑想というとあまり馴染みがなく宗教臭もするので、人によってはちょっと怪しく感じるかもしれません。
(最近は座禅体験も流行っているようなので、市民権を得つつあるのかもしれませんが。
全然関係ないですが世の中には「座禅街コン」なるものもあって衝撃でした。煩悩とは)
ただ、この本では宗教色を排除して、科学的な視点から瞑想の効用を分析し、さらに瞑想の実践方法を解説しています。
Googleで実際に導入されている研修がベースとなっていることもあり、説得力はあると感じました。
また、著者がもともとエンジニアとしても実績がある方で、エンジニアの目線から言及してる箇所も多く、エンジニアからすると理解しやすいものになっていると思います。
事前に知っておいた方が良さげなこと
サーチ・インサイド・ユアセルフは、そもそも「EQ(emotional intelligence quotient)」という研究/概念から派生して生まれたものとなっています。
そのため、本の中でEQ界隈の用語や著名人の名前が解説もそこそこにポンポン出てくるので、最初の方はやや面食らってしまいました。
また、こういう本にありがちですが、謎の人物(自分が無知なだけ)による序文や前書きがあり、著者との関係や立ち位置がよくわからなくて内容がスッと入ってきませんでした。
読んでて気になって調べたことを以下にまとめますが、ここをざっと見てからの方がスムーズに読み進めることができると思います。
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EQ
Emotional Intelligence Quotientの略。
セルフコントロールや対人関係における能力に対する指標であり、情動的知能、こころの知能指数、情動指数と訳されます。
本書では、人生をより良いするものにするためには、一般的に重要視されている学力やIQよりもEQに優れる方が重要であると説いています。
また、EQを伸ばすために後述の「マインドフルネス」に至ることが必要としています。 -
情動
・(心理学用語)怒り、恐れ、喜び、悲しみなど、比較的急速に引き起こされた一時的で急激な感情の動きのこと
・比較的短期の感情の動き
情動 - Wikipediaより
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マインドフルネス
本書ではマインドフルネスを「今の瞬間に、評価や判断とは無縁の形で注意を払う(状態)」と定義しています。もっとシンプルには「あるがままでいるときの心」と言えるとのこと。
このマインドフルネスに至るための瞑想を「マインドフルネス瞑想」と呼び、本書のなかでもその手法を詳しく解説しています。
ただ、本書の中でもキーとなる概念として出てくるんですが、上に記載している通り非常に感覚的なもので、ちゃんと理解するのは難しい概念だと思います。
このマインドフルネスの感覚がしっくりこないために、本全体に対してもぼやけた印象を抱いてしまうかもしれないです。 -
サーチ・インサイド・ユアセルフ(SIY)
本書のタイトルにもなっていますが、Googleで創始されたマインドフルネスに基づくEQ開発のカリキュラムが元となります。
Google内部で非常に人気を博したことから他の企業向けにも展開され、さらにその内容を書籍化したものが本書となっています。 -
チャディー・メン・タン
本書の著者。元Googleのエンジニアで、サーチ・インサイド・ユアセルフのカリキュラムを開発した経歴を持つ人物です。 -
ダニエル・ゴールマン
アメリカの著名な心理学者。著書の「EQ こころの知能指数」でEQという概念を広く浸透させた人物です。
サーチ・インサイド・ユアセルフの開発にも関わっています。 -
ジョン・カバットジン
マサチューセッツ大学医学大学院教授・同大マインドフルネスセンターの創設所長。
マインドフルネス瞑想を一般的な医療に組み込んだ第一人者です。
所感
非常にいい本だと思います。
情動面の能力を重視したり、刺激に対する反応(評価)の仕方に注目するという考えは、「7つの習慣」といった有名な自己啓発書で説かれているものと本質的に同じだと感じました。
EQやマインドフルネスは知らなくても、そういった本を読んでいる方であれば馴染みやすい内容であると思います。
この本の非常に優れているところは、情動面の能力を向上させる具体的な方法を、誰でも実践しやすい形で示している、という点だと思います。
ありがちな話ですが、自己啓発書で推奨されるような「教え」は、もちろんそれ自体は正しく、実践すれば間違いなく効果が得られるものだということは理解できるのですが、実際にやるとなると時間や難易度の面でハードルが高かったります。
一方、この本で提唱されている瞑想ですが、宗教でやるような仰々しいものではなく、肩の力を抜いてできるような形で説明されています。
(「忙しくて時間がなければ一呼吸分だけ集中すれば良い」とまで言っている)
現代の社会人でも無理なく実践できる内容であり、しかも科学的にも説得力を持たせているので、「試してみようかな」という気持ちにさせられるような内容になっています。
ただ、マインドフルネスの項目でも書きましたが、重要な概念が非常に感覚的なもので、なかなかピンとこない内容も結構ありました。
たぶんちゃんと理解できていないんだろうなーと。
しっかり理解するためには前提となっている本や文献も読む必要がありそうだな、と感じました。
瞑想による効果を実感して、もっと追求したいと思うようになったらチャレンジしてみようかと思います。そんな日は来るのか。