基本情報技術者試験(以下、基本情報)は、プログラミングの基礎知識を持っていることを証明する国家試験です。基本情報は出題範囲が広いことで知られています。ここでは 18 歳の新入社員向けに基本情報技術者試験の概要を説明します。
基本情報を受検する目的
基本情報を受検するいくつかのメリットを挙げます。
IT の基礎知識の習得
コンピュータの仕組み、プログラミング、ネットワーク、データベースなど、ITの基礎知識を体系的に学ぶことができます。
継続的な自己成長
資格取得のための勉強をすることで、常に最新の技術や知識を学び続ける習慣が養われます。
資格手当や昇進のチャンス
多くの企業では、基本情報技術者の資格を取得することで資格手当が支給されたり、昇進の際、有利になることがあります。
受験方法
基本情報技術者試験は通年で随時実施されます。詳細な受験法は試験業務を担当している情報処理推進機構(IPA)のホームページをご確認ください。
試験の科目
試験は主に知識を問う「科目A」と技能を問う「科目B」に分けられます。
試験区分 | 科目名 | 試験時間 | 問題数 | 出題形式 | 合格点 | 配点 |
---|---|---|---|---|---|---|
基本情報技術者試験 | 科目A | 90 分 | 60 問 | 四肢択一 | 600 点 | 1000 点 |
基本情報技術者試験 | 科目B | 100 分 | 20 問 | 多肢選択式 | 600 点 | 1000 点 |
科目A の出題範囲
科目A ではテクノロジ、マネジメント、ストラテジ分野の問題が 60 問出題されます。
テクノロジ分野
1 基礎理論
離散数学,応用数学,情報に関する理論,通信に関する理論,計測・制御に関する理論
2 アルゴリズムとプログラミング
データ構造,アルゴリズム,プログラミング,プログラム言語,その他の言語
3 コンピュータ構成要素
プロセッサ,メモリ,バス,入出力デバイス,入出力装置
4 システム構成要素
システムの構成,システムの評価指標
5 ソフトウェア
オペレーティングシステム,ミドルウェア,ファイルシステム,開発ツール,オープンソースソフトウェア
6 ハードウェア
電気・電子回路,機械・制御,論理設計,構成部品及び要素と実装,半導体素子,システムLSI,SoC(SystemonaChip),FPGA,MEMS,診断プログラム,消費電力など
7 ユーザーインタフェース
ユーザーインタフェース技術,UX/UIデザイン
8 情報メディア
マルチメディア技術,マルチメディア応用
9 データベース
データベース方式,データベース設計,データ操作,トランザクション処理,データベース応用
10 ネットワーク
ネットワーク方式,データ通信と制御,通信プロトコル,ネットワーク管理,ネットワーク応用
11 セキュリティ
情報セキュリティ,情報セキュリティ管理,セキュリティ技術評価,情報セキュリティ対策,セキュリティ実装技術
12 システム開発技術
システム要件定義・ソフトウェア要件定義,設計,実装・構築,統合・テスト,導入・受入れ支援,保守・廃棄
13 ソフトウェア開発管理技術
開発プロセス・手法,知的財産適用管理,開発環境管理,構成管理・変更管理
プロジェクトマネジメント分野
14 プロジェクトマネジメント
プロジェクトマネジメント,プロジェクトの統合,プロジェクトのステークホルダ,プロジェクトのスコープ,プロジェクトの資源,プロジェクトの時間,プロジェクトのコスト,プロジェクトのリスク,プロジェクトの品質, プロジェクトの調達, プロジェクトのコミュニケーション
15 サービスマネジメント
サービスマネジメント,サービスマネジメントシステムの計画及び運用,パフォーマンス評価及び改善,サービスの運用,ファシリティマネジメント
16 システム監査
システム監査,内部統制
ストラテジ分野
17 システム戦略
情報システム戦略,業務プロセス,ソリューションビジネス,システム活用促進・評価
18 システム企画
システム化計画,要件定義,調達計画・実施
19 経営戦略マネジメント
経営戦略手法,マーケティング,ビジネス戦略と目標・評価,経営管理システム
20 技術戦略マネジメント
技術開発戦略の立案,技術開発計画
21 ビジネスインダストリ
ビジネスシステム,エンジニアリングシステム,e-ビジネス,民生機器,産業機器
22 企業活動
経営・組織論,業務分析・データ利活用,会計・財務
23 法務
知的財産権,セキュリティ関連法規,労働関連・取引関連法規,その他の法律・ガイドライン・技術者倫理,標準化関連
科目B の出題範囲
科目B はプログラミングに関する技能を問う問題が16 問、情報セキュリティ分野の問題が 4 問出題されます。(基本情報では擬似プログラム言語を扱います。)
24 プログラミング全般
実装するプログラムの要求仕様(入出力,処理,データ構造,アルゴリズムほか)の把握,使用するプログラム言語の仕様に基づくプログラムの実装,既存のプログラムの解読及び変更,処理の流れや変数の変化の想定,プログラムのテスト,処理の誤りの特定(デバッグ)及び修正方法の検討 など
25 プログラムの処理の基本要素
型,変数,配列,代入,算術演算,比較演算,論理演算,選択処理,繰返し処理,手続・関数の呼出し など
26 データ構造及びアルゴリズム
再帰,スタック,キュー,木構造,グラフ,連結リスト,整列,文字列処理 など
27 プログラミングの諸分野への適用
数理・データサイエンス・AI などの分野を題材としたプログラム など
28 情報セキュリティの確保
情報セキュリティ要求事項の提示(物理的管理策,技術的管理策及び組織的管理策),マルウェアからの保護,バックアップ,ログ取得及び監視,情報の転送における情報セキュリティの維持,脆弱性管理,利用者アクセスの管理,運用状況の点検 など
問題の例
科目 A の過去問を「基本情報技術者試験ドットコム」にて無料で見ることができます。
合格率と学習時間
資格予備校の TAC によると、基本情報は偏差値 49 に相当し、独学で合格する場合は 200 時間の学習時間が必要との事です。合格者の平均年齢は25歳で、過去には8歳の小学3年生が合格した事があります。
試験名 | 合格率 | 勉強時間 |
---|---|---|
基本情報技術者試験 | 23~27% | 200時間 |
参考書
栢木(かやのき)先生の基本情報技術者教室が有名です。毎年改訂されており、古い版でもよければ古本屋で安く購入できます。
まとめ
この記事では、基本情報技術者試験の概要と出題内容、過去問と参考書を紹介しました。基本情報技術者試験は、ITの基礎をしっかり学びたい人にとって非常に有益な試験です。プログラマだけでなく、テスト担当者、情シス担当者、IoT エンジニアなど、業務で IT に関わっている社会人にお勧めします。
参考文献