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AWS DataSyncとMGNの違いを徹底比較:データ移行とサーバー移行の最適な選択肢

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概要

AWSのデータ移行サービスであるDataSyncとMGN(Application Migration Service)は、どちらも移行作業を支援しますが、用途と機能が大きく異なります。本記事では両サービスの特徴、適用場面、料金体系を詳しく比較し、移行プロジェクトに最適なサービス選択をサポートします。

目次

  1. はじめに
  2. AWS DataSyncとは
  3. AWS MGN(Application Migration Service)とは
  4. DataSyncとMGNの詳細比較
  5. 選択基準とベストプラクティス
  6. 実践的な移行パターン事例
  7. 終わりに
  8. 参考文献・参考サイト

はじめに

クラウド移行プロジェクトにおいて、最初に直面する重要な判断の一つが「何を使って移行するか」です。AWSには様々な移行支援サービスが用意されていますが、特にDataSyncとMGNは名前が似ており、どちらも「移行」に関わるサービスのため混同されがちです。

しかし実際には、この2つのサービスは全く異なる目的と機能を持っています。間違った選択をすると、移行期間の延長やコスト増加、さらには移行失敗のリスクを抱えることになります。

本記事では、以下の疑問を解決します:

  • DataSyncとMGNはそれぞれどのような場面で使うべきか?
  • 料金体系や機能面での具体的な違いは何か?
  • 自分のプロジェクトにはどちらが適しているか?

AWS DataSyncとは

基本概念と主要機能

AWS DataSyncは、オンプレミスとAWSストレージサービス間でデータの移動を自動化・高速化する安全なオンラインサービスです。簡単に言えば、「ファイルコピーの自動化ツール」のような存在で、大量のデータを効率的に転送することに特化しています。

image.png

DataSyncの主要機能には以下があります:

データ転送の自動化
手動でのファイルコピー作業を自動化し、スケジュール実行も可能です。転送中にデータの整合性チェックも自動実行されるため、転送エラーの心配がありません。

帯域制御と最適化
ネットワーク帯域の制御機能により、業務時間中の影響を最小限に抑えながらデータ転送を実行できます。また、差分転送機能により、変更されたファイルのみを効率的に転送します。

暗号化とセキュリティ
転送中のデータはTLS暗号化により保護され、VPCエンドポイント経由での転送も可能です。

対応するデータソースと移行先

DataSyncは、NFS共有、SMB共有、Hadoop分散ファイルシステム(HDFS)、セルフマネージドオブジェクトストレージ、Google Cloud StorageやWasabi Cloud Storageなどの他クラウドのオブジェクトストレージ、Azure Files、Azure Blob Storage、Amazon S3、Amazon EFS、Amazon FSx for Windows File Server、Amazon FSx for Lustreなど、幅広いストレージシステムとの間でデータをコピーできます。

この多様性により、DataSyncは以下のような幅広い移行シナリオに対応できます:

  • オンプレミスのファイルサーバーからAWS EFSへの移行
  • 他クラウドプロバイダーからAWS S3への移行
  • AWS内でのストレージサービス間の移行

主要なユースケース

DataSyncが特に効果を発揮するのは以下のようなケースです:

大容量ファイルサーバーの移行
数十TB〜数百TBのファイルサーバーをAWSに移行する際、DataSyncなら従来の手動コピーと比較して大幅な時間短縮が可能です。

定期的なデータ同期
オンプレミスとクラウド間でのバックアップ目的や、ハイブリッド環境でのデータ同期にも活用できます。

クラウド間のデータ移行
他のクラウドプロバイダーからAWSへの移行時にも、DataSyncが強力な選択肢となります。

AWS MGN(Application Migration Service)とは

基本概念と主要機能

AWS Application Migration Service(MGN)は、仮想、クラウド、物理サーバーからAWSへのアプリケーション移行を簡素化・迅速化するサービスです。最小限のビジネス中断で、分単位のカットオーバー時間でのオンタイム・オンバジェット移行を実現します。

MGNは「サーバー全体の移行」に特化したサービスで、オペレーティングシステム、アプリケーション、設定、データを含むサーバーの完全なレプリカをAWS上に作成します。

image.png

移行プロセスの概要

MGNの移行プロセスは以下の段階で構成されます:

初期レプリケーション
ソースサーバーにMGNエージェントをインストールし、ブロックレベルでの継続的なレプリケーションを開始します。初回の完全同期後は、差分のみを転送するため、業務への影響を最小限に抑えられます。

テスト段階
本番移行前に、レプリケートされたデータからテスト用のEC2インスタンスを起動し、アプリケーションの動作確認を行います。

カットオーバー
テストが完了したら、最終的な差分同期を実行し、本番用のEC2インスタンスを起動します。この段階での停止時間は通常数分程度です。

主要なユースケース

MGNが最適なのは以下のようなケースです:

リフト&シフト移行
既存のサーバー環境をそのままAWSに移行したい場合に最適です。アプリケーションの変更を最小限に抑えながら移行できます。

レガシーシステムの移行
複雑な依存関係を持つレガシーシステムや、ソースコードが利用できないアプリケーションの移行に特に有効です。

大規模サーバー移行
数十台〜数百台のサーバーを効率的に移行する場合、MGNの一括管理機能が威力を発揮します。

DataSyncとMGNの詳細比較

機能面での違い

比較項目 AWS DataSync AWS MGN
移行対象 ファイル・フォルダ・データ サーバー全体(OS・アプリ・データ)
移行方式 ファイルレベル転送 ブロックレベルレプリケーション
ダウンタイム データ同期中は通常業務継続可能 カットオーバー時のみ(数分程度)
継続的同期 ○(スケジュール実行可能) ×(移行完了で終了)
対象システム ファイルストレージ・オブジェクトストレージ 物理・仮想・クラウドサーバー
アプリケーション移行 ×(データのみ) ○(完全なサーバー環境)
設定の移行 ×(ファイル内容のみ) ○(OS設定・アプリ設定含む)

対象システムの違い

DataSyncの対象
DataSyncは「ストレージ」に焦点を当てています。ファイルサーバー、NASデバイス、オブジェクトストレージなど、データの保存場所からデータを移行します。

MGNの対象
MGNは「サーバー」全体を対象とします。Windowsサーバー、Linuxサーバー、仮想化環境、クラウドインスタンスなど、オペレーティングシステムが稼働している環境を移行します。

移行方式の違い

この違いを料理の引っ越しに例えると分かりやすいでしょう:

  • DataSync:冷蔵庫の中身(食材)だけを新しい家に運ぶ
  • MGN:キッチン全体(調理器具、調味料、設定、レシピ、すべて)を新しい家に再現する

料金体系の比較

DataSyncの料金
DataSyncは、ストレージ間で転送されるデータ量に対して、GB単位の定額料金を支払う、シンプルで予測可能な従量課金制を採用しています。初期費用や最低料金はなく、Enhanced mode使用時は基本料金に加えてタスク実行ごとの料金も課金されます。

具体的な料金目安:

  • 基本転送料金:0.0125 USD/GB(リージョンにより変動)
  • Enhanced mode:追加でタスク実行料金が発生

MGNの料金
各移行サーバーに対して、MGNサービス料金は90日間(2,160時間)無料で利用できます。無料期間を超える場合、継続的なレプリケーションに対して時間あたり0.042 USDが課金され、月額約30 USD/サーバーとなります。

レプリケーション期間中は、MGNがデータレプリケーションのために提供するAWSインフラストラクチャ(EC2、EBSなど)の料金も別途発生します。

選択基準とベストプラクティス

どちらを選ぶべきか:判断フローチャート

image.png

以下の質問に答えることで、最適なサービスを選択できます:

1. 移行したいものは何ですか?

  • ファイルやデータのみ → DataSync
  • サーバー全体(OS、アプリケーション含む) → MGN

2. アプリケーションの移行が必要ですか?

  • 不要(データ移行のみ) → DataSync
  • 必要(アプリケーション環境も移行) → MGN

3. 継続的な同期が必要ですか?

  • 必要(定期バックアップなど) → DataSync
  • 不要(一回限りの移行) → どちらも選択可能

4. ダウンタイムの許容度は?

  • 長時間OK(データのみなので影響限定的) → DataSync
  • 最小限に抑えたい(サーバー全体の移行) → MGN

併用パターンの紹介

実際のプロジェクトでは、DataSyncとMGNを組み合わせて使用するケースも多くあります:

パターン1:段階的移行

  1. 大容量の共有ファイルをDataSyncで事前移行
  2. アプリケーションサーバーをMGNで移行
  3. 最終的にデータの整合性を確認

パターン2:ハイブリッド環境

  1. アプリケーションサーバーをMGNでAWSに移行
  2. オンプレミスの共有ストレージとAWSストレージをDataSyncで定期同期

注意点とトラブルシューティング

DataSync使用時の注意点

  • 大容量転送時はネットワーク帯域の計画が重要
  • ファイル権限やメタデータの移行可否を事前確認
  • 転送スケジュールは業務時間を考慮して設定

MGN使用時の注意点

  • ソースサーバーの要件(対応OS、必要な権限)を事前確認
  • レプリケーション開始前にテスト計画を策定
  • カットオーバー時の手順書と切り戻し計画を準備

実践的な移行パターン事例

DataSync適用事例

事例1:ファイルサーバーのクラウド移行

ある企業では、500GBのWindowsファイルサーバーをAmazon EFSに移行する必要がありました。

移行前の課題:

  • 夜間にしか実行できない手動コピー作業
  • 転送エラーの頻発とやり直し作業
  • 差分同期の困難さ

DataSync導入後:

  • 初回転送:約4時間で完了(従来は2-3日)
  • スケジュール実行:毎日深夜に自動同期
  • エラー率:ほぼゼロ(整合性チェック機能により)

この事例では、DataSyncの導入により移行時間を80%短縮し、管理工数も大幅に削減できました。

MGN適用事例

事例2:レガシーWebアプリケーションの移行

製造業の企業が、15年間稼働してきたオンプレミスのWebアプリケーション(3台構成)をAWSに移行しました。

移行前の課題:

  • アプリケーションの詳細仕様が不明
  • 複雑なサーバー間の依存関係
  • 24時間稼働のため、長時間停止が困難

MGN導入後:

  • レプリケーション期間:2週間(業務継続しながら)
  • テスト期間:1週間(本番同等環境で検証)
  • カットオーバー:深夜3時間で完了

この事例では、MGNのブロックレベルレプリケーションにより、アプリケーションを一切変更することなく移行を完了。停止時間もわずか3時間に短縮できました。

ハイブリッド構成事例

事例3:大規模ECサイトの段階的移行

大手小売業が、ECサイト全体をAWSに移行する際に、DataSyncとMGNを段階的に活用しました。

移行戦略:

  1. Phase 1(DataSync):商品画像・動画ファイル(10TB)をS3に事前移行
  2. Phase 2(MGN):Webサーバー、アプリケーションサーバー(5台)を移行
  3. Phase 3(DataSync):残りの共有ファイルを継続同期

結果:

  • 総移行期間:3ヶ月 → 1.5ヶ月に短縮
  • サービス停止時間:予定8時間 → 実際2時間
  • 移行後の安定稼働を実現

この事例は、両サービスの特性を理解し、適材適所で活用することの重要性を示しています。

終わりに

DataSyncとMGNは、どちらもAWSへの移行を支援する優れたサービスですが、その用途と特性は大きく異なります。

DataSyncは「データの移行」に特化し、ファイルレベルでの効率的な転送と継続的な同期を実現します。ファイルサーバーの移行や定期バックアップ、クラウド間のデータ移行などに最適です。

MGNは「サーバーの移行」に特化し、OS・アプリケーション・データを含むサーバー環境全体をAWSに複製します。リフト&シフト移行やレガシーシステムの移行に威力を発揮します。

選択の鍵は「何を移行したいか」を明確にすることです。データだけならDataSync、サーバー環境全体ならMGN、そして複雑な要件では両者の組み合わせも検討してください。

次のステップ

移行プロジェクトを成功させるために、以下のステップを推奨します:

  1. 現状分析:移行対象の詳細な棚卸し
  2. 要件定義:ダウンタイム許容度、コスト制約、スケジュールの明確化
  3. PoC実施:小規模環境での事前検証
  4. 移行計画策定:段階的な移行スケジュールと切り戻し計画
  5. 本格移行実行:計画に基づく段階的な移行実施

適切なサービス選択により、安全で効率的なクラウド移行を実現してください。

参考文献・参考サイト

AWS公式ドキュメント

技術記事・ブログ

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