はじめに
◆この記事は何?
「ベロシティ」を使用する際の注意についての記事です。
先に結論
- スクラムチームのベロシティに求められるのは安定していること
- 外部から「ベロシティを上げてほしい」と言われたときは注意が必要
- ベロシティ向上だけに意識がいくと悪い結果につながる可能性がある
良いベロシティとは安定していること
「ベロシティ」は、各スプリントで完成した仕事量のことです。
良いベロシティは安定しています。
これにより見積もりが容易になり、良好なスクラムの指標となります。
書籍『SCRUM BOOT CAMP THE BOOK』では次のように言及されています。
ベロシティに求められるのは安定していることなんだ。
安定しているベロシティが好まれるのは、先のことを読めるからだけじゃない。ベロシティが安定しているのは、良いスクラムの特徴だからだ。
プロダクトバックログの項目の見積もりに多少の誤差はつきものだし、加えてトラブルなんかもそれなりに起こるものだ。けれど、それにうまく対応できているからベロシティが安定している。つまり、スクラムチームの仕事の進め方が順調な証拠なんだ。
ベロシティはどう変化するか?
ベロシティはあるポイントまで伸びて、あるポイントから安定期に入ります。
書籍『エッセンシャルスクラム』では次のように言及されています。
チームのベロシティが日々着々と伸びていくだなんて、信じられるだろうか?
(中略)ある一定のポイントまでは伸びる。しかし、いずれきっと安定期に到達する。
※図は『エッセンシャルスクラム』を元に作成。
ベロシティが線形に伸び続けると考えるのは誤りです。
そうなれば時間とともに無限に増加してしまうからです。
周りから「ベロシティを上げて欲しい」と言われたとき、耳を傾けてはいけない
上位職から「ベロシティを上げて欲しい」と言われたときは注意が必要です。
「ベロシティを上げて欲しい」という外部からの作用は、悪い結果をもたらすことがあります。
書籍『SCRUM BOOT CAMP THE BOOK』では次のように言及されています。
スクラムチームとしてはベロシティを安定させたいと思っていても、周りから上げて欲しいという声があがるかもしれない。だけど、その声に耳を傾けてはいけない。
ベロシティを上げることに意識がいくと、別の悪影響が出てくる。それはベロシティを上げるように細工してしまうことなんだ。
たとえ故意にするつもりはなくても、無意識にだ。
(中略)
でも、このような行為は、スクラムチームがどれぐらい実現できるのかをわからなくするので、この先の予測が信用できなくなってしまう。
例えば、次のような細工を無意識にやってしまうことがあります。
- 最初から多めに見積もる
- 手抜きをして完成を増やして、見かけのベロシティを増やす(=技術的負債にもなる)
書籍『エッセンシャルスクラム』でも同様に指摘されています。
チームの生産性をベロシティで判断してはならない。ベロシティをそんなふうに誤用すると、無駄の多い危険な振る舞いを促してしまう。
書籍『MORE EFFECTIVE AGILE』での指摘は次のとおりです。
ベロシティを使ってチームのパフォーマンスを比較しようとしたことがあるリーダーによれば、そうした行為は有害である。
(中略)結果として、チームのモラルと生産性が低下し、チームを比較するそもそもの目的とは逆の結果になる
このように「ベロシティを上げろ」と外部から言われたときは注意が必要です。
そのようなときは、まずは背景や理由を理解しようとすること、次にベロシティの役割について説明をするのが望ましいです。
おわりに
この記事では、ベロシティの注意について紹介しました。
もし、周りから「ベロシティを上げて欲しい」と言われることがあれば、思い出していただけると幸いです。