はじめに
◆この記事は何?
この記事では、情報の透明性が低い場合の課題と、透明性を高めるコツを紹介します。
◆対象は?
チーム開発に関わる方
特に、内部の会議が多過ぎて困っている方、情報を得られなくて困っている方
◆この記事のねらい
情報の透明性を高める第一歩や向上のきっかけになれば幸いです。
こんな状況はないでしょうか
皆さんの組織では、次のような状況に遭遇したことはないでしょうか。
- 「私は聞いていない」と怒る人がいる
- 開発に必要な情報が書かれていない、手に入らない
- 必要な情報を得るために会議が開かれ、会議がどんどん増えていく
これらの問題の原因は「情報の透明性」にあります。
先に結論
- 「情報の透明性」とは、プロダクトを開発する上で必要な情報が全て書かれていること
- 透明性が低いと、心理的安全性が下がり、生産性が下がる
情報の透明性とは
開発チームにおける「情報の透明性」とは、プロダクトを開発する上で必要な情報が全て書かれていることです。
書籍『エッセンシャルスクラム』では次のように表現されています。
透明性とはすなわち、プロダクトを作り出すための重要な情報は全て、プロダクトの構築に関わる人が入手できなければならない、ということだ。
「情報の透明性」は、情報のアクセシビリティが大きく寄与します。
「入手できる」手段は、「聞いて入手できる」よりも「読んで入手できる」状態の方がアクセシビリティが高いです。後から何度でも参照できるためです。
これは多くのエンジニアに納得いただけるかと思います。
情報の透明性が低いと何が起きるか?
情報の透明性が低いと、組織の大部分に悪い影響を及ぼします。
(1)生産性が下がる
情報の透明性が低いと「橋渡しのコミュニケーション」が多くなります。
チームとチームの橋渡し、リーダーとメンバーの橋渡しなどです。
必要な情報が書いてあれば、読んで理解できる状態になります。しかし、書いてないことで「打ち合わせをしよう」という発想になり、チーム内の打ち合わせがどんどん増えていきます。そして、情報を得るための時間が必要になります。
関わる人が増えれば増えるほど、情報の透明性の重要度が増していきます。
LayerXの福島CEOのnote『情報の透明性はなぜ大事なのか ー情報の秘匿は善意から始まるー』で次のように言及されています。
個々人の仕事の成果(アウトプット)は、その個々人の能力だけではなく、「情報のアクセシビリティ」によっても変わると考えます。
情報の透明性が下がると、効率よく成果を出すのが難しくなります。
(2)課題が早期発見できなくなる
情報の透明性が低いと、チームの課題を発見しにくくなります。
書いてあることで議論が生まれ、課題が見つかり、解消につながっていきます。
書籍『SCRUM BOOT CAMP』では次のように言及されています。
問題になりそうなことを見つけるのは想像以上に難しい。スクラムではそうしたことを早く見つけるために、透明性を大切にしている。
例えば、マネジメント層が情報を隠すようになると、メンバー層も無意識に情報を隠してしまいます。
その結果、悪い情報が共有されなくなります。そして、課題の発見が遅れ、対処できなくなるということがあります。
書いてないこと、書こうとしないこと、発信しようとしないことで課題の発見が遅れていきます。
(3)心理的安全性が低くなる
情報の透明性が低いと、知らない情報が増えていきます。
その結果、次のようなことが引き起こされます。
- 「私は聞いていない」と怒ってしまう
- 仕事のコントロール感を失ってしまう
- 疎外感を感じてしまう
結果的に、チームの心理的安全性が低くなっていきます。
心理的安全性が下がると、前述した生産性や課題の発見にも悪い影響が出ます。負のサイクルに入ります。
つまり、組織の大部分に負の影響が出始めます。
透明性を上げるために具体的にどうするか?
情報の透明性を上げるためには、身近なところから改善できます。
(1)基本は書いて伝える
伝えたいことは書くようにします。「書いていないことは伝わらない」と思うことで、書く文化が醸成されていきます。
具体的には次のように取り組みます。
- 会議の前に話したい内容を書いておく
- 会議のメモは全員が見れるところで書く
- 口頭で話した内容を整理してチャットに投稿する
- 「先ほど口頭で会話した内容です!」などと後から投稿する
自然と「その場にいない人に伝わるような仕組み」にもなります。
会議に不参加な人がいたとき、不参加な人へ後からメモを共有する/不参加になった人は自ら情報をとりにいく必要があります。
「出社して対面の回数を増やそう」と言っているだけでは、情報の透明性は上がりません。
書いて伝えることができるようになれば、自然に良い開発ドキュメントが書かれるようになります。
(2)チャットコミュニケーションはオープンにする
チャットツールの使い方を工夫することで情報の透明性を上げることができます。
具体的には次のように取り組みます。
- クローズなやり取りをできるだけしない
- 特にDMをできるだけ使わない
- クローズドなチャンネルが存在することを伝える
- 何をクローズドな情報でやり取りしているかを伝える
クローズドなやり取りは、情報の差を生みます。
検索性が下がり、情報のアクセシビリティも下がっていきます。
できるだけオープンなチャンネルでやり取りすることが重要です。
また、どうしてもクローズドなやり取りが必要な場合は、クローズドにする理由をオープンにするようにします。そうすることで、心理的安全性の低下を予防できます。
情報の透明性のための心掛け
情報の透明性を上げるためのマインドセットを紹介します。
次の内容を心がけることで、情報の透明性は上がっていきます。
(1)気を遣い過ぎないない
「この情報は伝える必要がないだろう」という善意から情報の秘匿が始まります。
情報の透明性は、意識しなければ、自然と下がっていきます。
チームメンバーに気を遣いすぎず、オープンなチャンネルでやり取りしていきます。
(2)書くのは面倒だと思うが、実際は一番早い
書くのは面倒だと思われがちですが、チームで活動するときは効率がよくなります。
書籍『GitLabに学ぶ世界最先端のリモート組織』より引用します。
すべてをドキュメント化することは、直感的には手間がかかりスピードが落ちるように感じるかもしれません。しかし、ドキュメント化は本質的なスピードを向上させる取り組みです。
書く方が生産性が高いと理解したチームには、良質なドキュメントが増えていきます。
(3)透明性を上げてよかったと感じてもらう
チームで「透明性をあげてよかった」とメンバーが感じる経験を積んでいくことで、情報の透明性が上がっていきます。
有効な取り組みの一つが振り返りです。
- 振り返りで、改善点を書く
- 対話や議論を生む。書くことで改善されていく
- また振り返りで改善点を書く
このような経験を積んでいくことで、情報は発信されるようになります。
おわりに
この記事では、情報の透明性について紹介しました。
透明性が低いときの問題点、透明性を上げるコツを紹介しました。
みなさんの組織の情報の透明性の向上に寄与できれば幸いです。