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TurboModule について解説 🚀 React Native の次世代ネイティブブリッジ!

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TurboModule(ターボモジュール) は、React NativeにおけるJavaScriptとネイティブコード間の通信をより効率的かつ型安全に行うための新しいシステムです。従来のネイティブモジュール(Bridge)に代わる技術として開発されており、特にアプリの起動時間の短縮やランタイムパフォーマンスの向上を目的としています。⚡

📝 TurboModule の背景と目的

React Nativeは、JavaScriptを使ってiOSやAndroidのネイティブUIコンポーネントを構築できる素晴らしいフレームワークです。しかし、JavaScriptスレッドとネイティブスレッド間の通信(一般にブリッジと呼ばれます)は、特に複雑なデータのやり取りや大量の通信が発生する場合に、パフォーマンスのボトルネックになることがありました。

従来のブリッジでは、JavaScriptとネイティブコード間の通信はJSON形式のメッセージをシリアル化/デシリアル化して非同期に送受信していました。これによりオーバーヘッドが生じ、特にアプリの起動時や頻繁なネイティブ機能呼び出し時に、性能問題を引き起こすことがありました。

TurboModuleは、この問題に対処するために開発されました。

TurboModule の主な目的:

  1. 起動時間の短縮: アプリケーションの起動時に必要なモジュールをJavaScript側で動的にロードできるようにすることで、初期ロード時間を短縮します。
  2. ランタイムパフォーマンスの向上: JavaScriptとネイティブコード間の通信のオーバーヘッドを削減し、より高速で効率的なデータ交換を可能にします。
  3. 型安全性とコード生成: TypeScriptやFlowなどの型情報を利用して、JavaScriptとネイティブコード間のインターフェースを自動生成します。これにより、型安全性が向上し、ランタイムエラーのリスクが低減します。
  4. コードの共有と保守性の向上: ネイティブモジュールをより構造化された方法で定義できるようになり、大規模なプロジェクトでの保守性が向上します。

🚀 TurboModule の仕組み(従来のブリッジとの比較も交えて)

従来のブリッジとTurboModuleの最も大きな違いは、JavaScriptとネイティブコードがどのように「会話」するか、その通信の基盤にあります。

従来のネイティブモジュール(Old Architecture / Bridge)の仕組み

  1. ブリッジ (Bridge): JavaScriptスレッドとネイティブスレッドの間で、非同期的にメッセージを交換するための「パイプライン」です。
  2. JSONメッセージの交換: JavaScript側からネイティブ機能を呼び出す際、関数名、引数などの情報がJSON形式にシリアル化されてブリッジを介してネイティブに送られます。ネイティブ側ではこれを受け取ってデシリアル化し、対応するネイティブコードを実行します。結果も同様にJSONでシリアル化され、JavaScriptに返されます。
  3. すべてのモジュールの初期ロード: アプリケーションが起動する際、登録されているすべてのネイティブモジュール(例: カメラ、GPSなど)の情報が一度にJavaScript側にロードされます。たとえそのモジュールが実際に使われなくても、初期ロード時にそのオーバーヘッドが発生していました。

課題:

  • JSONのシリアル化/デシリアル化にCPUコストがかかり、特に大量のデータや頻繁な通信でパフォーマンスが低下します。
  • 通信が非同期であるため、結果を待つ際にJavaScriptスレッドがブロックされることはありませんが、ネイティブコードとの密な連携が必要な場合にレイテンシが生じることがあります。
  • すべてのモジュールを初期ロードするため、アプリの起動時間が長くなる原因となることがあります。

TurboModule の仕組み(New Architecture)

TurboModuleは、JSI (JavaScript Interface) という新しい基盤の上に構築されています。

  1. JSI (JavaScript Interface):

    • これは、JavaScriptエンジン(React NativeではHermesなどが使われます)とC++で書かれたネイティブコードの間で直接通信を行うための軽量なインターフェースです。
    • 従来のブリッジが「JSONメッセージの送受信」だったのに対し、JSIは「JavaScriptからC++の関数を直接呼び出す」ようなイメージです。これにより、データがJSON形式にシリアル化/デシリアル化されるオーバーヘッドが大幅に削減されます。JavaScript側からは、あたかもネイティブの関数が直接存在するかのように呼び出すことができるため、より高速で効率的な通信が可能になります。
  2. IDL (Interface Definition Language) と Codegen(コード生成):

    • TurboModuleでは、JavaScript側でネイティブ機能のインターフェース(どのような関数があり、どのような引数をとり、何を返すか)を定義するために、特定の形式(TypeScriptやFlow)を使用します。
    • このインターフェース定義を元に、Codegen(コード生成)ツールが、iOS(Swift/Objective-C)とAndroid(Java/Kotlin)それぞれのネイティブコードと、JavaScript側から呼び出すためのブリッジコードを自動的に生成します。
    • これにより、開発者は手動で多くのボイラープレートコード(定型的なコード)を書く必要がなくなり、JavaScriptとネイティブコード間のインターフェースの型安全性が保証されます。もし型が合わないコードを書くと、ビルド時にエラーを検出できます。
  3. 遅延ロード (Lazy Loading):

    • TurboModuleは、必要なモジュールをJavaScript側で必要になった時に動的にロードすることをサポートします。これにより、アプリの起動時にすべてのモジュールをロードする必要がなくなり、初期ロード時間を大幅に短縮できます。

TurboModule のメリットまとめ:

  • ⚡ 起動速度とランタイム性能の向上: JSONシリアル化/デシリアル化のオーバーヘッド削減と、遅延ロードのサポートによる。
  • 🛡️ 型安全性: 型定義に基づいた自動コード生成により、JavaScriptとネイティブコード間のインターフェースの一貫性と安全性が保証される。
  • 🧑‍💻 開発体験の向上: 手動でのボイラープレートコード作成が減り、自動生成ツールがその役割を担うため、開発者は本質的なロジックに集中できる。
  • 🌳 保守性の向上: より構造化されたネイティブモジュールの定義と型情報により、大規模なプロジェクトでのメンテナンスが容易になる。

💡 TurboModule を使用した場合と従来のブリッジモジュールを使用した場合の比較

特徴 従来のネイティブモジュール(Old Architecture / Bridge) TurboModule(New Architecture)
通信方法 JavaScriptからネイティブへJSONメッセージを非同期送信 JavaScriptからネイティブへJSIを介してC++関数を直接呼び出し
データ処理 シリアル化/デシリアル化のオーバーヘッドあり シリアル化/デシリアル化のオーバーヘッドが大幅に削減される
ロード方法 アプリ起動時にすべてのモジュールをロード(必須) 遅延ロード (Lazy Loading) が可能
型安全性 型チェックは基本的にランタイムに依存(手動での型定義) IDLとCodegenによるビルド時の型安全性確保
パフォーマンス 通信オーバーヘッドが比較的大きく、起動時間が長くなりがち 通信オーバーヘッドが低く、起動時間の短縮とランタイム性能向上を実現
設定/実装 JavaScriptとネイティブコードで手動でブリッジ設定とボイラープレート記述 型定義と自動コード生成ツールによる自動設定
利用シーン ほとんどのシンプルなネイティブ機能に十分対応 パフォーマンスが重要、起動時間が気になる、大規模なプロジェクト、型安全性を求める場合

TurboModule は、React Nativeが「New Architecture(新しいアーキテクチャ)」へと移行する中で、Fabric (新しいレンダリングシステム)、Codegen と並ぶ主要な柱の一つです。既存のプロジェクトをTurboModuleに移行するには手間がかかる場合がありますが、長期的に見ればパフォーマンスと開発体験の両方を大きく向上させる重要な技術です。

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