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シナプス(Synapse)とは

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シナプスとは、主に**ニューロン(神経細胞)間で情報が伝達される「接合点」のことです。生物の脳では、このシナプスが情報の流れを制御し、学習や記憶といった複雑な脳機能を支えています。人工ニューラルネットワークでは、このシナプスの概念が「重み(Weight)」**としてモデル化されており、入力信号の伝達強度を調整する役割を担っています。


1. 生物学的なシナプス 🧬

私たちの脳や神経系には、約860億個の**ニューロン(神経細胞)**が存在し、それらが複雑にネットワークを形成しています。シナプスは、このニューロン同士が情報をやり取りするための、**物理的な「接続部分」**です。

シナプスの構造 🔬

生物学的なシナプスは、主に以下の3つの部分から構成されます。

  1. シナプス前部(Presynaptic Terminal): 信号を送る側のニューロンの軸索(情報を送るための長い突起)の末端。
  2. シナプス間隙(Synaptic Cleft): シナプス前部とシナプス後部の間のごくわずかな隙間。
  3. シナプス後部(Postsynaptic Terminal): 信号を受け取る側のニューロンの樹状突起(情報を受け取るための枝分かれした突起)や細胞体の膜。

シナプスでの情報の流れ(化学シナプスの場合) ⚡️

人間の脳では、ほとんどのシナプスが「化学シナプス」と呼ばれるタイプで、電気信号が化学物質に変換されて伝達されます。

  1. 電気信号の到達: 信号を送る側のニューロン(シナプス前細胞)で発生した電気信号(活動電位)が、軸索を伝ってシナプス前部に到達します。
  2. 神経伝達物質の放出: 電気信号がシナプス前部に到達すると、神経伝達物質(ドーパミン、セロトニン、グルタミン酸など、様々な種類があります)と呼ばれる化学物質が、シナプス間隙に放出されます。
  3. 受容体への結合: 放出された神経伝達物質は、シナプス間隙を拡散し、信号を受け取る側のニューロン(シナプス後細胞)のシナプス後部にある特定の受容体に結合します。
  4. 電気信号の発生(または抑制): 神経伝達物質が受容体に結合することで、シナプス後細胞に新しい電気信号(興奮性または抑制性)を発生させたり、その発生を抑制したりします。

生物学的シナプスの重要な役割 🧠

  • 情報伝達の制御: シナプスは、情報が次のニューロンにどれくらいの強さで伝わるかを制御します。
  • 学習と記憶: シナプスの結合の強さや効率は、経験や学習によって変化します(これを「シナプス可塑性」と呼びます)。これが、私たちが新しいことを学んだり、記憶を形成したりする生物学的な基盤と考えられています。
  • 脳機能の多様性: シナプスの数や種類、神経伝達物質の違いによって、脳は非常に複雑で多様な情報処理を行うことができます。

2. 人工ニューラルネットワークにおけるシナプス 💻

人工ニューラルネットワークは、生物学的な脳のニューロンとシナプスの仕組みをモデル化したものです。人工ニューラルネットワークでは、シナプスの概念は「重み(Weight)」として表現されます。

人工ニューロンにおけるシナプスの役割(=重み) ⚖️

人工ニューロンは、前の層のニューロンから複数の入力信号を受け取ります。これらの入力信号は、それぞれに割り当てられた**「重み」**を掛け合わせられてから合計されます。

ニューロンの合計入力 = (入力1 × 重み1) + (入力2 × 重み2) + ... + (入力N × 重みN) + バイアス

  • **「重み」が、生物学的なシナプスの「結合強度」や「伝達効率」**に相当します。
  • 重みの値が大きいほど、その入力信号が次のニューロンに与える影響が強くなります。重みが小さい、または負の値であれば、影響が弱くなったり、抑制的になったりします。
  • ニューラルネットワークの学習プロセス(誤差逆伝播法など)は、まさにこの**「重み(=シナプス結合強度)」をデータに基づいて最適な状態に調整する**ことによって行われます。モデルが学習した「知識」や「パターン認識能力」は、この重みの値の集合として表現されます。

まとめると 🤝

特徴 生物学的なシナプス 人工ニューラルネットワークにおけるシナプス
役割 ニューロン間の情報伝達の接合点 ニューロン間の情報伝達の「強さ」
実体 軸索末端と樹状突起/細胞体の間の物理的な隙間と構造物 **「重み(Weight)」**という数値データ
機能 電気信号を化学信号に変換し、次のニューロンを興奮・抑制 入力値に乗算され、出力への影響度を調整
変化 経験や学習により結合強度が変化(シナプス可塑性) 学習(訓練)により重みの値が更新される

シナプスは、脳が学習し、記憶し、考えるための基本的なメカニズムであり、人工知能がデータからパターンを学習し、賢くなるための基礎的な設計思想を提供しています。

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