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プログラムの計測と最適化

Last updated at Posted at 2025-05-31

本記事は 技術書典18 で無料配布する同人誌「ゆめみ大技林 '25」の寄稿です。加筆や修正などがある場合はこの記事で行います。

プログラムのパフォーマンスは、アプリケーションの動作速度やユーザー体験に大きく影響を与えます。しかし、単に「速い」コードを書くことだけが重要ではないです。適切な計測をして、ボトルネックを特定し、効率的な最適化を行うことが求められます。

本書では、プログラムのパフォーマンス計測手法の一例を説明して、計測データの分析から最適化までの流れを示します。なお、コード例には Swift および Python を利用します。

計測環境は MacBook Pro 14 インチ 2021 / Apple M1 Pro / メモリ 32 GB / macOS Sequoia 15.3.2 です。ソフトウェアバージョンは Python 3.12.3、Swift 6.0.2(Xcode 16.2)です。

パフォーマンス計測の基礎

プログラムのパフォーマンスを向上させるためには、まず状態を計測することが必要です。計測なしに最適化を行うと、改善の方向性が分からず、逆にパフォーマンスが低下することもあります。そのため、計測を適切に実施し、改善点を明確にすることが重要です。

計測の基本指標

プログラムのパフォーマンスを測定する際に利用する主な指標は次のとおりです。

指標 説明 単位
実行時間 プログラムが完了するまでの時間  秒またはミリ秒
CPU使用率 処理完了にどの程度の CPU リソースを使用したか %
メモリ使用量 プログラムが消費するメモリのサイズ KB や MB など

これらの指標を適切に測定し、分析することで、最適化の方向性を定めることができます。

CPU 使用率について

CPU 使用率は、プログラムがどの程度の CPU 時間を使用しているかを示す指標です。利用する計測ツールでは取得できない場合もありますが、その場合は計算時間から計算します。

$$
{\rm CPU}使用率 = \frac{ユーザー時間 + システム時間}{経過時間}
$$

指標 説明
経過時間 実際にかかった時間
ユーザー時間 CPUがユーザー空間でコードを実行した時間
システム時間 CPUがカーネル空間でコードを実行した時間

ユーザー時間とシステム時間は、CPU 時間とも呼ばれます。経過時間は CPU 時間の他にデータ入出力などの処理時間が含まれます。システムやアプリケーションの特性によって異なりますが、一般的には 70 ~ 80% 程度がよいとされています。

たとえば、プログラムが CPU を 4 秒間利用して総実行時間が 10 秒の場合だと、CPU 使用率は 40% になります。CPU 使用率 40% だと CPU 時間ではなく他要素に時間がかかっているので、データ入出力の処理改善を試みる、またはハードウェア自体を性能高いものに入れ替えるなどのように評価されるでしょう。

パフォーマンス計測

プログラムのパフォーマンスを測定する方法はいくつかありますが、Swift、Python および GNU time コマンドを利用して計測する方法を紹介します。

作成する計測ツールのインタフェースは次のようにします。計測ツールに、計測したい実行ファイルのパスを与えることで、その実行ファイルの実行時間、CPU 使用率およびメモリ使用量を計測します。

% ./measure -e {計測対象の実行ファイルのパス}

なお、本記事では省略していますが、付録に添付するサンプルでは試行回数や CSV 出力のオプションも対応しています。

Swift による計測

Swift で計測ツールを作成します。紙面とコード量の関係で、分割して説明します。実際のコードは付録のサンプルを参考してください。まず、コマンドラインの引数を取得します。なお、対象は iOS ではなく、macOS です。

import Foundation

// 計測対象の実行ファイルのパス
var execPath: String? = nil

// 計測コマンド(今回は measure)を除いた引数
var args = CommandLine.arguments.dropFirst()

while let arg = args.first {
  switch arg {
    case "-e":
      args = args.dropFirst()
      if let value = args.first {
        executablePath = value
        args = args.dropFirst()
      } else {
        print("Error: -e オプションには実行ファイルのパスを指定してください。")
        exit(1)
      }
    default:
      print("不明な引数: \(arg)")
      args = args.dropFirst()
  }
}

計測対象の実行ファイルは、次のように実行します。

let process = Process()
process.executableURL = URL(fileURLWithPath: execPath)

do {
  try process.run()
} catch {
  print("プロセスの起動に失敗しました: \(error)")
  exit(1)
}

実行時間は、実行前後の時間を取得して、その差分を利用します。

// 試行開始時刻
let startTime = Date()

// process.run() で実行ファイルを実行する(略)

// 実行時間(秒)
let execTime = Date().timeIntervalSince(startTime)
print("実行時間: \(String(format: "%.3f", execTime)) 秒")

Swift で CPU 使用率とメモリ使用量を取得したかったのですが、困難でした。そこで、プロセスの情報を表示する ps コマンドを Swift から利用します。

// 引数で指定したプロセス ID の CPU 使用率とメモリ使用量を取得する
func getProcessStats(pid: pid_t) -> (cpu: Double, rss: Double)? {
  let process = Process()
  process.executableURL = URL(fileURLWithPath: "/bin/ps")
  process.arguments = ["-p", "\(pid)", "-o", "%cpu=,rss="]

  let pipe = Pipe()
  process.standardOutput = pipe

  do {
    try process.run()
    process.waitUntilExit()
  } catch {
    return nil
  }

  let data = pipe.fileHandleForReading.readDataToEndOfFile()
  guard let output = String(data: data, encoding: .utf8) else {
    return nil
  }
  let values = output
               .trimmingCharacters(in: .whitespacesAndNewlines)
               .split(separator: " ", omittingEmptySubsequences: true)
  guard let values.count >= 2 else { return nil }

  if let cpu = Double(values[0]), let rss = Double(values[1]){
    return (cpu, rss)
  }
  return nil
}

この getProcessStats(pid:) を利用して、計測対象の CPU 使用率とメモリ使用量を取得します。計測対象のプロセス ID を取得して、計測します。

let process = Process()
process.executableURL = URL(fileURLWithPath: execPath)

do {
  try process.run()
} catch {
  print("プロセスの起動に失敗しました: \(error)")
  exit(1)
}

// ps で計測するため、計測対象のプロセス ID を取得する
let pid = process.processIdentifier

// 試行中の最大値を記録する変数
var cpuRate = 0.0
var memoryValue = 0.0

// プロセスが終了するまで、0.1秒間隔で ps コマンドにより CPU とメモリを監視
while process.isRunning {
  if let stats = getProcessStats(pid: pid) {
    cpuRate = max(cpuRate, stats.cpu)
    memoryValue = max(memoryValue, stats.rss)
  }
  usleep(100_000)  // 100ミリ秒待機
}
    
// プロセスの終了を待機(念のため)
process.waitUntilExit()
    
print("CPU 使用率: \(String(format: "%.2f", cpuRate))%")
print("メモリ使用量: \(String(format: "%.2f", memoryValue / 1_000.0)) MB")

改めて、今回の対象は iOS ではなく、macOS です。iOS アプリが対象なら、Xcode のデバッガーや Instruments を利用しましょう。

Python による計測

Python でも計測プログラムを作りました。実装は Swift とほぼ同等です。Python でも計測のため ps を利用しました。まず pip を利用して psutil をインストールします。

pip install psutil

計測関数は次のとおりです。

import psutil
import subprocess
import time

def monitor_process(executable_path):
  # 測定対象のプログラムを開始
  process = subprocess.Popen([executable_path], stdout=subprocess.PIPE)

  # 初期値を取得
  initial_cpu = psutil.cpu_percent(interval=0.1)
  initial_memory = psutil.virtual_memory().used

  # 最大値を記録するための変数
  max_cpu_usage = 0
  max_memory_usage = 0

  # 試行開始時刻
  start_time = time.time()

  # プロセスが終了するまでモニタリング
  while process.poll() is None:
    # 現在のCPUとメモリの使用量を取得
    cpu_usage = psutil.cpu_percent(interval=0.1)
    memory_info = psutil.virtual_memory().used

    # 最大値を更新
    max_cpu_usage = max(max_cpu_usage, cpu_usage)
    max_memory_usage = max(max_memory_usage, memory_info)

  end_time = time.time()

  # 実行時間を計算
  execution_time = end_time - start_time

  # メモリをMB単位にする
  mb_memory = (max_memory_usage - initial_memory) / (1024 ** 2)

  # 結果を表示
  print(f"実行時間: {execution_time:.2f} seconds")
  print(f"最大 CPU 使用率: {max_cpu_usage:.2f}%")
  print(f"最大メモリ使用量: {mb_memory:.2f} MB")

作成した monitor_process() を使って、計測対象を計測します。

import argparse

if __name__ == "__main__":
  parser = argparse.ArgumentParser(description="measure exe file")
    
  # `-e` or `--exe` のオプション (実行ファイルのパス)
  parser.add_argument("-e", "--exe", required=True, help="file path")
    
  # 引数をパース
  args = parser.parse_args()

  # 計測する
  monitor_process(args.exe)

GNU time を使用した計測

前節まで Swift や Python を使って計測ツールを作りました。しかしながら、内部で ps コマンドを利用しました。素直に専用の計測コマンドを利用するのがよさそうと気づきました。

macOS には計測コマンド time があります(しかも2つも)。ただし、このコマンドは時間計測できまずが、メモリ使用量が取得できません。そこで、メモリ使用量も計測できる GNU time を利用します。これは Homebrew でインストールできます。

brew install gnu-time

GNU time コマンドを使用すると、実行時間やメモリ使用量などを簡単に測定できます。試しに、私の環境にインストールされている Node.js のバージョンを調べるコマンドを計測しました。

% gtime node -v
v22.11.0
0.03user 0.01system 0:00.12elapsed 40%CPU (0avgtext+0avgdata 19360maxresident)k
0inputs+0outputs (12major+2646minor)pagefaults 0swaps

ただし、上記の実行結果を見てもらって分かるように、二次利用も見据えると結果表示が不安です。gtime には出力フォーマットのオプションがあるので、それを設定します。また、計測対象の指定など、簡単なシェルスクリプトを準備します。

#!/bin/bash

# デフォルト値
EXECUTABLE=""

while getopts "e:" opt; do
  case $opt in
    e) EXECUTABLE="$OPTARG" ;;
    *) usage ;;
  esac
done

OUTPUT=$(gtime -f "%e %P %M" "$EXECUTABLE" 2>&1 >/dev/null)

REAL_TIME=$(echo "$OUTPUT" | awk '{print $1}')
CPU_USAGE_RAW=$(echo "$OUTPUT" | awk '{print $2}')
MEMORY_RAW=$(echo "$OUTPUT" | awk '{print $3}')

echo "経過時間 (REAL_TIME): $REAL_TIME 秒"
echo "CPU利用率 (CPU_USAGE): $CPU_USAGE_RAW"
echo "メモリ使用量 (MEMORY): $MEMORY_RAW MB"

3種類の計測ツールを紹介しました。紹介してなんですが、やはり専用の gtime を利用するのが、間違いないでしょう。たとえば、Swift のコードを Swift プロジェクト内で計測したい場合は Swift 一択ですが、そうでない場合は gtime を使うのがお勧めです。

実装差によるパフォーマンスの違い

プログラムの実装方法によって、パフォーマンスに大きな違いが生じます。特に、データ構造の選択やアルゴリズムの違いは、実行速度やリソース使用量に顕著な影響を及ぼします。具体的な例を挙げながら、実装差によるパフォーマンスの違いを分析します。

データ構造の選択による影響

異なるデータ構造を選択することで、処理速度が大きく変わることもあります。たとえば、Python では list と set を使用した場合、検索の速度が異なります。

import time

data = list(range(1000000))
start_time = time.time()
999999 in data  # リストの検索
print("リスト検索時間:", time.time() - start_time)

set_data = set(data)
start_time = time.time()
999999 in set_data  # セットの検索
print("セット検索時間:", time.time() - start_time)
list set
検索時間(ミリ秒) 6.49 0.04

この例では、list は線形検索をするため時間がかかりますが、set はハッシュテーブルを用いるため高速に検索できます。

アルゴリズムの選択による影響

アルゴリズムの選択によっても、パフォーマンスに大きな違いが生じます。たとえば、ソートアルゴリズムを比較すると、バブルソートとクイックソートで処理時間が異なります。

import random
import time

def bubble_sort(arr):
    n = len(arr)
    for i in range(n):
        for j in range(0, n - i - 1):
            if arr[j] > arr[j + 1]:
                arr[j], arr[j + 1] = arr[j + 1], arr[j]

def quick_sort(arr):
    if len(arr) <= 1:
        return arr
    pivot = arr[len(arr) // 2]
    left = [x for x in arr if x < pivot]
    middle = [x for x in arr if x == pivot]
    right = [x for x in arr if x > pivot]
    return quick_sort(left) + middle + quick_sort(right)

バブルソートは $\mathcal{O}(n^2)$ の時間計算量をもつため、大きなデータセットでは極めて遅くなります。一方、クイックソートは $\mathcal{O}(n \log n)$ で動作するので、大幅に高速化されます。

arr = [random.randint(0, 100000) for _ in range(10000)]

start_time = time.time()
bubble_sort(arr.copy())
print("バブルソート時間:", time.time() - start_time)

start_time = time.time()
quick_sort(arr.copy())
print("クイックソート時間:", time.time() - start_time)

なお、通常の開発では、ソート機能をアルゴリズムから実装することは、ほぼないです。標準フレームワークなどで提供されるソート関数を利用しましょう。

start_time = time.time()
arr.copy().sort()
print("組み込みソート時間:", time.time() - start_time)

熟練のフレームワーク製作者の実装なので、安心した結果をもたらします。

バブルソート クイックソート 組み込みソート関数
計算時間(ミリ秒) 3103.04 9.52 1.02

並列処理と逐次処理の違い

CPU のコアを活用することで、パフォーマンスを向上させることができます。たとえば、次の Python の関数を複数実行するシーンを考えます。

# n秒待つだけの関数
def task(n):
  time.sleep(n)
  print(f"Task {n} done")

Python の multiprocessing モジュールを使用すると、複数のプロセスを並列に実行できます。

import multiprocessing
import time

if __name__ == '__main__':

  # 直列処理
  start_time = time.time()
  task(2); task(2); task(2); task(2);
  print("直列処理時間:", time.time() - start_time)

  # 並列処理
  start_time = time.time()

  # 4つのプロセスを作成
  processes = [
    multiprocessing.Process(target=task, args=(2,)) for _ in range(4)
  ]

  # 各プロセスを開始
  for p in processes:
    p.start()

  # すべてのプロセスが終了するのを待つ
  for p in processes:
    p.join()

  print("並列処理時間:", time.time() - start_time)

直列実行すると 8 秒かかる処理も、並列化することで 2 秒で完了します。なお、マルチコアといえど、コア数は限られます。検証環境の MacBook Pro のコア数は 10(パフォーマンス: 8、効率性: 2)個です。同時並列数が 10 を超えるあたりから、パフォーマンスに影響してきます。

並列数 4 8 9 10 16 32 64 128 256
時間(秒) 2.06 2.06 2.07 2.09 2.09 2.15 2.29 2.56 3.15

iPhone 16 シリーズに採用されている Apple A18 のコア数は 6(パフォーマンス: 2、効率性: 4)個です。OS 自体が制御に利用する分を除くと、実際に利用できるコアは少ないです。アプリ内の複数処理を安易に並列処理に回すと、すぐにコア全部を使い切ります。

私は以前、比較的大きいファイルの複数ダウンロード処理のパフォーマンスを改善するため、並列ダウンロードを実装しました。しかし、当初は並列数を適当に決めていたので、逆にパフォーマンスは下がりました。並列数は、利用端末のコア数から動的に設定しましょう。

効率的な最適化 V.S. 可読性や保守性

プログラムのパフォーマンス最適化を追求することは重要ですが、極端に最適化を重視するとコードの可読性や保守性が犠牲になることがあります。最適化のしすぎが問題となる例を挙げつつ、適切なバランスの取り方を考えます。

過度な最適化の例

  • 可読性の低い極端な最適化

次の Python のコードは、リスト内包表記を使ってリストの要素の合計を求めるものですが、可読性は必ずしも高いとはいえないです。

from functools import reduce

data = [1, 2, 3, 4, 5]
result = reduce(lambda x, y: x + y, data)

このコードは reduce() を利用してリストの合計を求めることができますが、合計を求めるならば sum() を利用した場合の方が可読性は高くなります。

data = [1, 2, 3, 4, 5]
result = sum(data)
  • 極端なループの最適化

Swift でリストの合計を求める際に、ループを最適化しすぎた例です。このコードでは &+ を使用してオーバーフローを回避しているので、Int.max を超えてもクラッシュしません。

let data = [1, 2, 3, 4, 5]
var result = 0
for i in 0..<data.count {
    result &+= data[i] // &+ はオーバーフローを防ぐための演算子
}

オーバーフローを考慮しなくても十分な場合もあります。また、オーバーフローが起こるようなレンジを取り扱うのであれば、別のアプローチを考えましょう。過度な最適化といえます。

let data = [1, 2, 3, 4, 5]
let result = data.reduce(0, +)

Swift の標準フレームワークには sum がないので reduce を利用して、書き直しました。

可読性と保守性を優先すべきケース

  • チーム開発時の可読性

コードは自分だけが開発するだけではなく、他の開発者も開発します。最適化を優先するあまり、コードが複雑になりすぎると、今後の修正するのが難しくなります。また、自身が改修する場合でも、数週や数ヶ月も経てば、当時の仕様や実装意図なんて覚えていないものです。

  • 将来的な拡張性

過度に最適化されたコードは、変更が難しくなります。たとえば、次のようなケースです。

def process_data(data):
    return [x * 2 for x in data if x % 2 == 0]

このコードは、フィルタリングとマッピングの処理が一緒になっています。コードゴルフやワンライナーを目指すのであれば十分ですが、一般開発においては機能変更は難しくなります。

def filter_numbers(data):
    return [x for x in data if x % 2 == 0]

def calc_numbers(data):
    return [x * 2 for x in data]

def process_data(data):
    return calc_numbers(filter_numbers(data))

このように関数を分けることで、機能変更を柔軟に対応できます。

最適化と可読性のバランスの取り方

プログラムを最適化する場合は、次のような基準を考えると、バランスが取れたコードを書けるでしょう。ただし、私が考える基準なので、あなたやチームの考えやスキルを考慮して、適宜アップデータしてください。

  1. ボトルネックの特定
    • 最適化を行う前に計測する
    • 本当に問題となっている箇所を特定する
  2. パフォーマンス向上の効果
    • 最適化によるパフォーマンス向上が、コードの可読性や保守性を損なうはないか
    • 多少損なっても、劇的にパフォーマンスが改善されるなど、メリットの方が大きいか
  3. 分かりやすい書き方
    • ソースコードを他の開発者が見ても理解しやすいか
    • 時間経ってから自身が見ても、即座に理解できるか
  4. コメントの活用
    • 最適化したコードには適切なコメントを追加し、意図が伝わるようにする
    • PR でレビュアーに向けて書くコード説明は、ソースコードにも残しておく

まとめ

本記事では、Swift と Python を用いて、パフォーマンス計測を説明し、計測結果の分析方法や最適化の具体例を示しました。また、最適化の重要性と、可読性・保守性とのバランスの取り方について解説しました。最適化を過度に追求することでコードが読みにくくなる場合もあり、状況によってはシンプルな書き方を優先することもあります。

コードへの意識

私がプログラムのパフォーマンスを意識したキッカケはいくつかあります。その度に、私のコードの書き方や意識はアップデートしてきました。

大学院で研究している時、当時の私は MATLAB を利用してシミュレーション実験をしていました。実験時間は一晩かかり、理論やパラメータを修正するのも大変でした。MATLAB はインタプリタ言語であり、並列計算に特化した言語です。その MATLAB の特性上、実装がパフォーマンスに直結します。C 言語のように実装していたソースコードが低パフォーマンスの原因でした。

そこで、リファクタリングを行いました。ループを極力減らし、並列計算で一括計算するように修正しました。その結果、一晩かかっていた実験は、一時間で済むようになりました。プログミング言語の特性を知るのが大切だと認識しました。

そして、時は進み、私は iPhone 3GS でアプリ開発を始めました。当時のハードウェアは品素で、メモリが数 10 MB を超えると、アプリが不安定になり、40 ~ 50 MB でクラッシュするのは当たり前でした。ハードウェアの特性を理解して、実装するのは大切です。

また、アプリ開発において、類似する画面が多く場合に、共通化に走ったときもありました。しかし、共通化や汎用化された View は、特定画面だけの機能や仕様変更などもあり、次第に肥大となり負債になりました。今は過剰な共通化や汎用化はせずに、最小のコンポーネントレベルで純粋関数として切り分けています。

よいコードとは

ソフトウェア開発は常に進化しています。ハードウェアの進歩に伴い、かつては不可欠だった最適化手法が不要になることもあれば、新たなパフォーマンスの課題が生まれることもあります。重要なのは、状況に応じた適切な選択をし続けることです。

また、チーム開発においては、パフォーマンスだけでなく、コードの可読性や保守性、拡張性を意識することが求められます。技術的負債を生まないために、過度な最適化を避け、適切な設計を心がけることが重要です。

この先、さらなるパフォーマンスの追求が必要になる場面も増えるでしょう。そのためにも、基本的なパフォーマンス計測と最適化の知識を持ち、状況に応じた適切な判断を下せるようになることが、開発者にとっての大きな強みになります。

最後に、プログラムのパフォーマンスは単一の指標で測るものではありません。パフォーマンス、可読性そして保守性のバランスを考えながら、最適な設計を選択することが、さらによい開発につながるでしょう。

付録

本記事で挙げたサンプルコードは GitHub のリポジトリを公開しています。

https://github.com/mitsuharu/MeasureScripts
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