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opniz拡張実装方法解説#1 Node.jsからデバイスへのリクエスト拡張編

Last updated at Posted at 2022-12-24

はじめに

opnizというM5ATOMといったESP32系デバイスをNode.jsから制御するIoTフレームを作っています。
M5ATOMであれば専用のArduino Libraryを用意しているのでexampleのBasicスケッチをそのまま書き込めば各種メソッドをNode.js SDKから利用可能です。

しかしある電子パーツと対応するArduinoライブラリを使ってNode.jsから制御したい、といった場合にはopnizを拡張実装する必要があります。
本記事ではopnizの拡張実装方法について解説します。

opnizのしくみ

まずopnizのしくみを簡単に説明します。
opnizはデバイス(Arduino Library)とPC(Node.js SDK)とでWebSocketまたはTCPで接続し、JSON-RPCでやりとりします。

.

JSON-RPCは以下の形式となっておりmethodにRPCで実行したいメソッド名を指定し、必要に応じてparamsにパラメーターを埋め込みます。

JSON-RPC
{
	"method": "method-name",
	"params": ["param1", "param2", "param3"]
}

opnizのNode.js SDKおよびArduino LibraryはこのJSON-RPCを受け取ったらmethodと一致する処理を実行する、という単純なしくみです。

拡張実装の概要

JSON-RPCを受け取ったときに「どんなmethodがきたら」「どんな処理をするか」を定義することがopnizの拡張実装となります。

またopnizは双方向通信を行っているのでJSON-RPCはPC(Node.js SDK)からデバイス(Arduino Library)に送られることもあれば、その逆でデバイス(Arduino Library)からPC(Node.js SDK)に送られることもあります。
たとえばそれぞれ以下のようなケースが考えられます。

  • PC(Node.js SDK)からデバイス(Arduino Library)へのリクエスト
    • 例:PCからデバイスのLEDを制御する、デバイスのセンサー値を取得する
  • デバイス(Arduino Library)からPC(Node.js SDK)へのリクエスト
    • 例:デバイスのボタンが押されたとき、赤外線信号を受信したときにPCへイベントを送る

具体的な拡張実装方法

ここからPC(Node.js SDK)→デバイス(Arduino Library)へリクエストするケースについて拡張実装方法をハンズオン形式で解説していきます。
(解説が長くなってしまうためデバイス(Arduino Library)→PC(Node.js SDK)へリクエストするケースは別記事にします)

Step1 下準備

実装例としてM5ATOMにて拡張実装を行っていきます。
以下を参考にNode.js SDK環境とopnizデバイスを準備してください。

開発環境

バージョンはメジャーバージョンがそろっていればいけると思います。

  • デバイス:M5ATOM
    • M5ATOM Matrix、M5ATOM LiteどちらでもOK
  • Arduino IDE
    • バージョン:v2.0.3
    • ボード:esp32:M5Stack-ATOM
    • ライブラリ
      • M5ATOM@0.1.0
      • FastLED@3.5.0
      • ArduinoJson@6.19.4
      • WebSockets@2.3.6
  • Node.js:v16.17.1

Node.js SDKのコード

以下のコマンドを実行し、index.jsに下記のコードをコピペしてください。

$ npm install opniz
$ touch index.js
index.js
"use strict"
const { Opniz } = require("opniz")

const port = 3000

const opniz = new Opniz.Esp32({ port }) // opnizインスタンス生成(M5ATOMクラスではなくESP32クラスをインスタンス生成)

const main = async () => {
	while (!(await opniz.connectWait())) console.log("connect...") // opnizデバイスへ接続
	console.log("[connected]")
	
	for (;;) { // ループ処理
		console.log("[loop]")
		console.log(await opniz.getFreeHeap()) // デバイスのヒープメモリーサイズを表示
		await opniz.sleep(1000)
	}
}
main()

Arduino Libraryのコード

opniz Arduino Library for M5ATOMをインストールし、以下のコードでスケッチを作成してください。
(opniz Arduino Library for M5ATOMのインストール方法はこちら

スケッチの<SSID><PASSWORD><IP Address>はそれぞれお使いの環境の情報に変更してください。

main.ino
#include <OpnizM5Atom.h>
#include <lib/WiFiConnector.h>

const char* ssid = "<SSID>";         // WiFiのSSIDに書き換え
const char* password = "<PASSWORD>"; // WiFiのパスワードに書き換え

const char* address = "<IP Address>"; // Node.js SDKを実行する端末のIPアドレスを指定
const uint16_t port = 3000;          // Node.js SDKを実行する端末のポート番号を指定

WiFiConnector wifiConnector(ssid, password); // WiFi接続ヘルパーインスタンス生成
Opniz::Esp32* opniz = new Opniz::Esp32(address, port); // opnizインスタンス生成(M5ATOMクラスではなくESP32クラスをインスタンス生成)

void setup() {
    initM5(); // M5ATOM初期化
    wifiConnector.connect(); // WiFi接続
    opniz->connect();        // Node.js SDKへ接続
}

void loop() {
    opniz->loop();         // opnizメインループ
    wifiConnector.watch(); // WiFi接続監視
}

テスト実行

以下のコマンドでNode.jsプログラムを実行します。
1秒おきにデバイスのヒープメモリサイズが表示されればOKです。

$ node index.js

以上で下準備は完了です。
ここから準備したコードへ変更を加えていき拡張実装します。

Step2 最小限の拡張実装

PCからデバイスのLEDを制御する、デバイスのセンサー値を取得するといったケースではNode.js SDKからJSON-RPCを送り、Arduino Libraryにて受け取ったJSON-RPCに一致する処理を実行します。

ここでは例としてM5ATOMの内蔵LEDを制御できるようにしてみましょう。

Node.js SDKの拡張

M5AtomのArduinoライブラリではM5.dis.drawpix関数で内蔵LEDを制御できます。
Node.js SDKを拡張し、M5.dis.drawpixを呼び出すクラスを作ってみましょう。

まずはOpnizクラスを継承実装します。
Opnizは2022/12現在M5AtomクラスとEsp32クラスを提供しています。
M5AtomクラスではすでにM5.dis.drawpixを呼び出す処理が実装されていますので、ここではEsp32クラスを継承実装します。

Opniz.Esp32拡張クラス
class ExtendOpniz extends Opniz.Esp32 {
	async drawpix() {
		await this.exec("drawpix")
	}
}

drawpixメソッドではexecメソッドをawait実行しています。
execメソッドは前述したJSON-RPCのJSONを生成しデバイス側へ送信するメソッドです。
第一引数の値がJSON-RPCのmethodに割り当てられ、第ニ引数以降がparams配列に割り当てられます。

ここでは第一引数にdrawpixのみ指定しているので、以下のようなJSON-RPCが生成されデバイスへ送信されます。

JSON-RPC
{
	"method": "drawpix",
	"params": []
}

上記の拡張クラスを用いたコードは以下のようになります。

index.js
"use strict"
const { Opniz } = require("opniz")

const port = 3000

class ExtendOpniz extends Opniz.Esp32 {
	async drawpix() {
		await this.exec("drawpix")
	}
}

// const opniz = new Opniz.Esp32({ port }) // opnizインスタンス生成(M5ATOMクラスではなくESP32クラスをインスタンス生成)
const opniz = new ExtendOpniz({ port }) // opnizインスタンス生成(ESP32クラスを継承し拡張したExtendOpnizクラスをインスタンス生成)

const main = async () => {
	while (!(await opniz.connectWait())) console.log("connect...") // opnizデバイスへ接続
	console.log("[connected]")
	
	for (;;) { // ループ処理
		console.log("[loop]")
		console.log(await opniz.getFreeHeap()) // デバイスのヒープメモリーサイズを表示
		await opniz.drawpix() // 拡張したLED制御メソッドを実行
		await opniz.sleep(1000)
	}
}
main()

opnizインスタンスの生成箇所がnew Opniz.Esp32からnew ExtendOpnizとなっています。
またループ処理内にて今回実装したopniz.drawpixをawait実行しています。

Arduino Libraryの拡張

続いてopniz Arduino Libraryを拡張実装します。
先ほど拡張実装したNode.js SDKにてExtendOpniz.drawpixを実行するとmethod"drawpix"を指定されたJSON-RPCがデバイス側へ送信されます。
このJSON-RPCを受け取り、実際にM5.dis.drawpix関数を実行する処理を実装します。

opniz Arduino LibraryではNode.js SDKから送られたJSON-RPCに対する処理をハンドラークラスとして定義します。
ハンドラークラスはストラテジーパターンとして実装しています。
BaseHandlerという継承元となるハンドラークラスを用意していますので、これを継承し専用のハンドラークラスを定義します。

Node.jsのExtendOpniz.drawpixから送られるJSON-RPCを受けてM5.dis.drawpix関数を実行するハンドラークラスは以下のようになります。

拡張ハンドラークラス
class DrawpixHandler : public BaseHandler {
public:
    String name() override {
        return "drawpix";
    }
    String procedure(JsonArray params) override {
        M5.dis.drawpix(0, 0x00ff00);
        return "true";
    }
};

BaseHandlerにはnameprocedureの2つのメソッドが用意されています。
BaseHandler.nameはNode.js SDKから送られてきたJSON-RPCのmethodと一致する文字列を返すようオーバーライドします。
BaseHandler.procedureではJSON-RPCのmethodと一致した場合に実行する処理を実装します。

ここではBaseHandler.nameにてdrawpixを返すよう実装することで、JSON-RPCのmethod"drawpix"だった場合にBaseHandler.procedure内のM5.dis.drawpix(0, 0x00ff00);が実行されます。

戻り値はセンサーの値を取得したりする場合はセンサー値を返すよう記述すべきですが、今回のように戻り値が特にない場合は文字列で"true"を返すようにします。

上記の拡張ハンドラークラスを用いたコードは以下のようになります。

main.ino
#include "OpnizM5Atom.h"
#include "lib/WiFiConnector.h"

const char* ssid = "<SSID>";         // WiFiのSSIDに書き換え
const char* password = "<PASSWORD>"; // WiFiのパスワードに書き換え

const char* address = "<IP Address>"; // Node.js SDKを実行する端末のIPアドレスを指定
const uint16_t port = 3000;          // Node.js SDKを実行する端末のポート番号を指定

WiFiConnector wifiConnector(ssid, password); // WiFi接続ヘルパーインスタンス生成
Opniz::Esp32* opniz = new Opniz::Esp32(address, port); // opnizインスタンス生成(M5ATOMクラスではなくESP32クラスをインスタンス生成)

// drawpix用ハンドラークラスを継承実装
class DrawpixHandler : public BaseHandler {
public:
    String name() override {
        return "drawpix";
    }
    String procedure(JsonArray params) override {
        M5.dis.drawpix(0, 0x00ff00);
        return "true";
    }
};

void setup() {
    initM5(); // M5ATOM初期化
    wifiConnector.connect(); // WiFi接続
    
    opniz->addHandler({ new DrawpixHandler }); // drawpix用ハンドラークラスを登録
    opniz->connect();        // Node.js SDKへ接続
}

void loop() {
    opniz->loop();         // opnizメインループ
    wifiConnector.watch(); // WiFi接続監視
}

drawpix用ハンドラークラスの実装に加え、setup関数にてopniz->connectの前にopniz->addHandler({ new DrawpixHandler });を追記しています。
新たに実装したハンドラークラスはopniz->addHandlerにて登録を行います。

ここまでのコードをデバイスへ書き込み、Node.jsを実行するとM5ATOMのLEDが緑色に点灯し続けます。

Step3 JSON-RPCにパラメーターを指定する

上記の実装ではM5.dis.drawpixのピン番号やカラーコードといった引数が固定で実行されている状態です。
これらの引数もNode.js SDKから指定できるように変更してみます。

Node.js SDKへの変更

ここは大した変更ではなくOpniz.Esp32継承クラスにて実行していたexecメソッドに対し、第二、第三引数を追加します。
execを実行するdrawpixメソッドにも同様にパラメーターを追加します。

Opniz.Esp32拡張クラス
class ExtendOpniz extends Opniz.Esp32 {
	async drawpix(ledNumber, colorCode) { // ledNumber, colorCodeを追加
		await this.exec("drawpix", ledNumber, colorCode) // ledNumber, colorCodeを追加
	}
}

この変更によりexecメソッドで生成、送信されるJSON-RPCが以下のようになります。

JSON-RPC
{
	"method": "drawpix",
	"params": ["<ledNumberの値>", "<colorCodeの値>"]
}

あとはExtendOpniz.drawpixを呼び出す側で引数を指定します。
以下のコードではOn/Off状態のフラグ変数を用意し、ループの度にOn/Offを切り替えExtendOpniz.drawpixのカラーコードを変化させています。

index.js
"use strict"
const { Opniz } = require("opniz")

const port = 3000

class ExtendOpniz extends Opniz.Esp32 {
	async drawpix(ledNumber, colorCode) { // ledNumber, colorCodeを追加
		await this.exec("drawpix", ledNumber, colorCode) // ledNumber, colorCodeを追加
	}
}

const opniz = new ExtendOpniz({ port }) // opnizインスタンス生成(ESP32クラスを継承し拡張したExtendOpnizクラスをインスタンス生成)

const main = async () => {
	while (!(await opniz.connectWait())) console.log("connect...") // opnizデバイスへ接続
	console.log("[connected]")
	
	let onOffFlag = true // On/Offフラグ
	
	for (;;) { // ループ処理
		console.log("[loop]")
		console.log(await opniz.getFreeHeap()) // デバイスのヒープメモリーサイズを表示
		
		onOffFlag = !onOffFlag // On/Offフラグ反転
		await opniz.drawpix(0, onOffFlag ? "00ff00" : "000000") // On/Offフラグによりカラーコードを変化
		
		await opniz.sleep(1000)
	}
}
main()

Arduino Libraryへの変更

拡張ハンドラークラスのBaseHandler.procedureに対し変更を行います。

BaseHandler.procedureにはJsonArray paramsというパラメーターがあります。
JSON-RPCのparamsのデータがここに文字列配列として格納されます。

先ほどNode.js SDK側で行った変更によりJSON-RPCのparams["<ledNumberの値>", "<colorCodeの値>"]となりました。
たとえばNode.js側でopniz.drawpix(0, "00ff00")を実行した場合に生成、送信されるJSON-RPCのparams["0", "00ff00"]となります。

JsonArray paramsより値を取り出し、適切な型にキャストしなおしたうえでM5.dis.drawpixの引数に指定します。

拡張ハンドラークラス
class DrawpixHandler : public BaseHandler {
public:
    String name() override {
        return "drawpix";
    }
    String procedure(JsonArray params) override {
        uint8_t ledNumber = (uint8_t)params[0];         // paramsの1つ目の値を取得しuint8_t型にキャスト
        String colorCode = params[1];                   // paramsの2つ目の値を文字列のまま取得
        M5.dis.drawpix(ledNumber, str2crgb(colorCode)); // 取得したparamsの値をM5.dis.drawpixの引数に指定し実行
        return "true";
    }
};

この変更を加えたデバイス側のコードは以下のようになります。

main.ino
#include "OpnizM5Atom.h"
#include "lib/WiFiConnector.h"

const char* ssid = "<SSID>";         // WiFiのSSIDに書き換え
const char* password = "<PASSWORD>"; // WiFiのパスワードに書き換え

const char* address = "<IP Address>"; // Node.js SDKを実行する端末のIPアドレスを指定
const uint16_t port = 3000;          // Node.js SDKを実行する端末のポート番号を指定

WiFiConnector wifiConnector(ssid, password); // WiFi接続ヘルパーインスタンス生成
Opniz::Esp32* opniz = new Opniz::Esp32(address, port); // opnizインスタンス生成(M5ATOMクラスではなくESP32クラスをインスタンス生成)

// drawpix用ハンドラークラスを継承実装
class DrawpixHandler : public BaseHandler {
public:
    String name() override {
        return "drawpix";
    }
    String procedure(JsonArray params) override {
        uint8_t ledNumber = (uint8_t)params[0];         // paramsの1つ目の値を取得しuint8_t型にキャスト
        String colorCode = params[1];                   // paramsの2つ目の値を文字列のまま取得
        M5.dis.drawpix(ledNumber, str2crgb(colorCode)); // 取得したparamsの値をM5.dis.drawpixの引数に指定し実行
        return "true";
    }
};

void setup() {
    initM5(); // M5ATOM初期化
    wifiConnector.connect(); // WiFi接続
    
    opniz->addHandler({ new DrawpixHandler }); // drawpix用ハンドラークラスを登録
    opniz->connect();        // Node.js SDKへ接続
}

void loop() {
    opniz->loop();         // opnizメインループ
    wifiConnector.watch(); // WiFi接続監視
}

ここまでのコードをデバイスへ書き込み、Node.jsを実行するとM5ATOMのLEDが1秒おきに緑色に点滅します。

おわりに

簡単にですが以上がPC(Node.js SDK)→デバイス(Arduino Library)へリクエストするケースでの拡張実装方法となります。
拡張実装を行えばあらゆるArduinoライブラリを活かした開発が可能となります。

わかりやすく説明できているかなんともいえないところですので、ご不明点あればお気軽にコメント欄やDM等でご連絡ください。

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