2. インターネットトラフィック
2-0. 初めに
本記事はインターネットトラフィックに関する調査を行った記事である.インターネットトラフィックの現状を書き記した.そして最後には,自分なりのインターネットトラフィックの特徴や将来についての分析・考察を上げた.
2-1. インターネット
インターネットは年々、その規模を拡大している。特に、近年のスマートフォンの普及
から、だれでも簡単・即座・どこからでもインターネットに接続ができるようになり、さ
らにインターネット利用者は急増した。国内では 2009 年までは、一世帯におけるスマー
トフォンの保有割合はほとんどゼロであったが、2010 年から徐々に保有割合は増え始め、
2013 年には 62.6%、2018 年には 79.2%まで増加した。
一方個人におけるスマートフォンの保有割合も増加し、2018 年には 64.7%になっている。このようにスマートフォンが普及する前までは、パソコンによるインターネット利用が多かった。現在でも、スマートフォンを除けば、端末別でのインターネット利用率(当該端末を用いてインターネットを利用したことのある人の比率)はパソコンが 48.2%とスマートフォンに次ぐ高い利用率となっている。
しかし、現在ではスマートフォンの利便性から、スマートフォンでインターネットを利用する人が増え、端末別でのインターネット利用率では 59.5%と一番高い割合となっている[1]。つまり、スマートフォンが普及することで、スマートフォンが一般的になる以前とは、比べ物にならない頻度でインターネットが使われるようになったということである。インターネットの利用者が増えれば、自然とインターネットトラフィックも増えてくる。インターネットの現在の状況に加え、その特徴・将来について自分なりの分析・考察を以下にまとめる。
2-2. インターネットトラフィックの現状
国内のブロードバンド契約数は年々増加しており、2018 年度末での固定系ブロードバン
ドの契約数は 4025 万で前年度比 1.5%増である。それに対し、移動系超高速ブロードバン
ド契約のうち、3.9-4 世代携帯電話(LTE)は 1 億 3664 万で前年比 13.2%増 BWA は 6624
万で前年比 13.8%と移動系超高速ブロードバンド契約数は年々大幅に増加している。
また、それぞれの国内におけるインターネットトラフィック数も年々増えており、国内 ISP9
社のブロードバンド契約者のトラフィックについては、ダウンロードトラフィックが月間平均
で 7281.8Gbps と前年同月に比べて 21.8%も増加している[1]。
一方、同年同月のアップロードトラフィックは 929.1Gbps とダウンロードトラフィックとの比は 7.8 倍であり、ダウンロード型の利用が中心であることがわかる。そして、国内 ISP9 社の契約数のシェアから、国内のインターネット上を流通するダウンロードトラフィックを推定すると、2018 年 11 月時点で平均 11.9Tbps のトラフィックがインターネット上を流通していると推定され、同トラフィックは前年比 23.3%となるなど、近年のインターネット上のトラフィックは引き続き増加しているのがわかる。
図 1:国内のブロードバンド契約者の総トラフィック
引用:総務省:令和元年版 情報通信白書
次にインターネットトラフィックの内訳をまとめる。2017 年 5 月における固定通信トラヒ
ックと移動通信トラフィックを比べると、固定通信が 9559Gbps、移動通信が 1910Gbps と
固定通信トラフィックの方が圧倒的に多い[2]。
移動通信は通信料の制限が設けられており、家などでは、固定通信を利用する人の方が多いからだと考えられる。また、2016 年における固定通信トラフィックと移動通信トラフィックの成長率はそれぞれ、53%、34%と固定通信の方が移動通信より成長率は高い。アメリカ、中国などの諸外国と比べてもこれは異例で、諸外国では、固定通信トラフィックに比べ、移動通信トラフィックの成長率が高い傾向にある。しかし、2019 年 5 月の計測によると、直近一年間では約 1.3 倍ものペースで移動通信トラフィックが増加しており、日本国内でも移動通信トラフィックの方が固定通信トラフィックに比べて、成長率が高くなっている。
次にインターネットトラフィックの特性についてまとめる。インターネットトラフィックは、トラフィック量が集中する時間帯とそうではない時間帯がある。ISP9 社のブロードバンド契約者の時間帯別ダウンロードトラフィックの一週間の推移によると、朝の 3 時頃は一番トラフィック量が少なく、日中から夜にかけて増えていき、ピークの時間帯はいずれの曜日も 21 時から 23 時にある。また、土曜日、日曜日は日中時間帯の利用も多い。移動通信のトラフィック推移についても、昼休み帯の 12 時頃に一時的なピークに達するという特性を除けば同様な傾向がある。
また、国内のインターネットにおける、月間のピークトラフィックと平均トラフィック比は拡大傾向にあり、2004 年時点の 1.3 倍から、2017 年 5 月では 1.6倍まで拡大している。このようなトラフィック特性はネットワーク思想や設備投資に影響するので非常に重要なことである。続いて国外も合わせたグローバルのトラフィックの推移・予測をまとめる。世界規模で考えても、今後トラフィック量はさらに増加する見込みであり、特に日本を含むアジア・太平洋地域は平均以上の成長率で増加しており、その規模は他地域と比べ最大となっている。また、セグメント別でみると、コンシューマトラフィックが総トラフィックの約 8 割を占めている。さらに、そのコンシューマトラフィックではインターネット動画が大半であり、約 8 割を占めている。今後 4k 映像配信等の高精度化が進展し、さらに増加すると見込まれる[2]。
2-3. インターネットトラフィックの特徴・将来についての自分なりの分析・考察
2-2 を踏まえたうえで、国内のインターネットトラフィックの特徴・将来についての自分
なりの分析・考察をしていく。まず、国内のインターネットトラフィックの特徴として、ダ
ウンロードトラフィックとアップロードトラフィックの比が 7.8 倍ダウンロードトラフィックの
方が多いという点がある。
これはインターネットの利用者の特性が関係していると考えられる。インターネットの利用の仕方には大きく分けて、インターネットにデータをアップロードする場合と、インターネットからデータをダウンロードする場合がある。インターネットの利用者は圧倒的に後者、ダウンロードする人の方が多い。YouTube を例にしてみれば動画をアップロードする人よりも、動画を検索して見る人の方が多い。そのためダウンロードトラフィックの方が、アップロードトラフィックよりも 7.8 倍も多いということが考えられる。この関係性は将来的に考えても変わらないことだと思う。インターネット利用者は、常に情報を得ることがインターネットを使用する主な目的だからである。情報を得る・探すのに対し、情報を他の人に提供するというのは手間がかかるし面倒である。自分の欲しい情報を欲しいときに得られるという、自分の欲求を満たしてくれることこそがインターネットの利点・便利さである。
続いて「時間帯ごとのインターネットトラフィック」について分析・考察する。国内にお
けるインターネットトラフィックは図 2 のようにダイナミックに変動する。
図 2 ブロードバンドサービス契約者の時間帯別トラフィック
引用:総務省「我が国のインターネットにおけるトラフィックの集計・試算」
この図から、インターネット利用者が最もインターネットトラフィックを発生させる時間帯と、最もインターネットを利用しない時間帯が交互に存在していることがわかる。最もインターネットを利用していない時間帯は午前 3 時頃であり、多くの人が就寝していると考えられる。
一方、最もインターネットトラフィックが発生する午後 20~22 時の時間帯は、膨大なトラフィックを発生させるインターネット動画の視聴者数が多いからだと考えられる。また、このピークトラフィックと平均トラフィックの比が年々拡大しているというのもインターネットトラフィックの特徴である。これは、近年のインターネット動画の画質向上によるデータ量の増加から、インターネット動画を見る視聴者が集中した際に、膨大なダウンロードトラフィックが発生するからだと考えられる。
私は、このピークトラフィックと平均トラフィックの比が拡大傾向にあるという特徴は将来さらに顕著なものになると考える。理由は、さらなる動画の画質向上や、5G の導入など、大量のトラフィックが発生するような新たなサービス・技術が開発されるからである。
次に、「近年の国内におけるインターネットトラフィック急増」について分析・考察する。図 1を見ると、国内のブロードバンド契約者の総ダウンロードトラフィック量が2013~2014年から急増しているのが分かる。理由としては、スマートフォンの普及と 4G 技術の導入が考えられる。国内でスマートフォンの利用が開始されたのは 2009 年であり、毎年利用者数を伸ばしていった。
一方、2012・2013 年頃から導入されていた通信方式は厳密にいうと 3.5G、3.9G と呼ばれるが、その頃から超高速通信が可能になり、スマートフォンによるインターネット利用をさらに加速させたと考えられる。また、スマートフォンの個人保有割合やブロードバンドサービス契約数というのは年々増加してはいるが、その増加率というのは年々陰りが見え始めている。それに対し、インターネットトラフィック量が指数関数的に増加しているというのは、個人におけるトラフィック量が急増しているというのが考えられる。
そして、個人におけるトラフィック量が急増しているのにはインターネットの利用方法が変わってきたことが考えられる。昔はインターネットの利用と言えば、web の閲覧など、トラフィック量が少ないものがメインだったが、今では動画の閲覧などトラフィック量が多いものに利用方法が変わってきている。4G などの通信方式が導入するにつれて、新たな市場が開拓されたのだ。
以上より、「近年の国内におけるインターネットトラフィック急増」の背景にあるのは、多くの人々の私生活に溶け込んだスマートフォンという端末の普及と、超高速通信を可能にさせ、スマートフォンによるインターネット利用を加速させた 4G という技術だということがわかる。このような特徴を踏まえれば、近々導入されるであろう 5G や、IoT 等からはじまる様々な技術・端末の到来というのは、インターネットトラフィックを大幅に増大させると考えられる。5Gの導入により、スポーツ中継を様々な視点から高画質な映像で視聴可能、IoT 技術の発展によるスマートカーの普及など、膨大なトラフィックを発生させる通信サービスが開発・提供されるからだ。
その中でも私が特に注目しているのが VR である。そして、VR は将来のインターネットトラフィックに大きな影響を与えると考えている。
一つ目の理由としては、VR という技術が非常に興味深く、VR 技術が洗練して人々が魅力を感じるサービスを実現できれば、世界中の多くの人が注目をする大きな市場を展開できると考えているからだ。最近では、VTuberなどと呼ばれる、コンピュータ―グラフィックスのキャラクターを用いた YouTuber や VR空間で過ごす VR 市民と呼ばれる人が生まれるなど、一般の人にも VR が注目されてきている。さらには、5G の到来による、仮想現実ストリーミングを利用した 360 度視点のスポーツ観戦やゲームへの適用も期待される。特に、2018 年にアメリカで公開された映画『レディ・プレイヤー1』は非常に興味深かった。実世界に存在する人が、全身にスーツを覆い、自らの動きを VR 空間の自分のアバターと同期させることで、VR 空間にもう一人の自分を存在させ、リアル世界とは“別の自分”の新しい価値を生み出すことを実現していた。もちろん私は VR 技術に詳しくないため、『レディ・プレイヤー1』のようなことが実現できるかはわからない。しかし、自分のアバターを作成し、人々が交流する VR 空間はすでに実現できており、そのような現実世界とは異なる世界で人が生活するような空間ができれば、インターネットを利用する技術の中で最も注目を集めると考えている。
二つ目の理由としては、インターネットを利用して 3 次元 VR 空間を実現するには膨大なトラフィックが生まれるということがある。現在のインターネットトラフィックの過半数を占める動画が一方向の伝達なのに対し、VR は双方向による実時間通信、さらには大きなコンテンツファイルやアプリケーションのダウンロードが必要となってくるなど、膨大なトラフィックが発生すると予想できる。そして、先ほどの VR 世界を実現するのであれば、ユーザがより VR 世界に没入するために高画質の映像も求められる。以上の事を踏まえると、将来 VR を用いたインターネットサービスを実現するにあたり、インターネットトラフィックに大きな影響を与えると考えており、私が非常に注目している。以上がインターネットトラフィックの特徴・将来についての自分なりの分析・考察である。