論理学第3回です.
前回は論理演算と条件命題を学習しました.
今回は推論を学習します.
論理演算を出来る前提で進めます. 分からない場合は前回の記事が参考になります.
推論
「前提」である命題 p1, p2, p3, ...
と, 「結論」である命題q
の関係を「推論」として次のように表します.
p1, p2, p3, ...
の並んだ命題は連言(and)になります. なので, p1 ∧ p2 ∧ p3 ...
というふうに考えられます.
推論を日本語で表すと「p1 かつ, p2 かつ, p3 かつ, ...である. ゆえに q である.」というふうになります. もっと数学的に言い換えると「命題 p1, p2, p3, ... が全て真である ならば, 必ず命題q
が真である」となります.
よって, 推論は前回説明した条件命題を用いて表すと次のように表すことが出来ます.
これは, 推論を言い換えただけのものである というのが重要です.
推論の妥当性
推論行なった後, 結果を評価する必要があります. それが論理的に有効であるのか, それとも誤った推論であるのかを判断することが必要です.
例えば, 以下のような条件で推論を考えます.
p1, p2 ⇒ q
p1: 鍵がある
p2: 鍵があるならばドアを開くことが出来る
q: ドアを開くことが出来る
これは論理的に有効な推論であり, このような推論のことを 有効(または妥当) といいます(こちらは後で真理値表を用いて解説します.)
もし, qが「ドアを開くことが出来ない」となっていた場合は論理的に矛盾しており, このような推論のことを 謬論(びゅうろん) と言います.
推論を真理値表を使って機械的にとく
先ほど有効と謬論をについてお話ししましたが, 実際にどのように判定するのでしょうか. これは, 論理演算を行い, 真理値表を作って使ってこの推論が有効なのか謬論なのかを判断することが出来ます. 先ほどの例を使って解説します.
例を再掲します.
p1, p2 ⇒ q
p1: 鍵がある
p2: 鍵があるならばドアを開くことが出来る
q: ドアを開くことが出来る
上の推論の説明でもあった通り,
p1, p2 ⇒ q
という推論は
p1 ∧ p2 → q
上で説明した通り, 条件命題に置き換えることが出来ます. 条件命題であれば, 前回の記事で説明した論理演算で解くことが出来ます.
さらに, ここで前提p2に注目してください. 実はp2も「ならば」とあることから読み取れる通り, 条件命題です. よって, 最終的に推論は以下のような論理式に置き換えることが出来ます.
ここで p2: p1 → q
に置き換えると
p1 ∧ (p1 → q) → q
となります.
この推論の結果がどうなるか論理演算を行い, 真理値表を使って解いてみます.
真理値表より, 推論p1 ∧ (p1 → q) → q
が常に真であることから, この推論は有効だと判断できます.
もし, 推論p1 ∧ (p1 → q) → q
が常に真でなかった場合は, 謬論となります.
おわりに
今回は推論について学びました. 条件命題や論理演算が曖昧な方は少し難しかったのではないでしょうか.
推論は誰もが日常的に行っています. 例えば「今日は空が暗いから雨が降るかもしれない」と考えるのも推論の一つです. また, 「友人の返事が遅いから忙しいのかもしれない」と推測するのもそうです. このくらいであれば少し考えるだけで答えに辿りつけますが, 探偵のように多くの前提から結論を導き出すのは容易ではありません.
そのような時はやはり, 論理学が役に立ちます. 頭だけで考えると煮詰まってきそうな推論を演算によって機械的に解けるのです. そういう意味では, 論理学は人間の理解を超えた解釈を可能にするツールともいえるかもしれません.
今回, 少し複雑な推論については触れられなかったので, また, 後日補足として記事を出すかもしれません. また, 論理演算についての補足も考えています.
次回からは論理学は一旦終了し"関係"の学習へ進みます. 様々な数学の根幹になっている考えであり, その次の学習である代数学にも繋がってきます.