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リーダー経験ゼロのエンジニアがチームのリーダーに挑戦して、自己組織化したチームに近づいた話

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1. はじめに

1年前の入社4年目の私は、開発チームのリーダーの経験はなく、また、スプリントの計画も立てたことが無いような状態でした。
そんな状態で、突然リーダーとしてプロジェクトの意思決定をすることになりました。
自分に務まるかとても不安で、恐怖すら感じていました

実際にやってみると、これまでいかに作業者視点で物事を考えていたか、プロジェクト全体が見えていなかったのかを痛感しました。

現在では、マネージャーが休みや出張で不在の場合でも、私がいればうまくチームメンバと協力して開発を進めてくれると言っていただけるまでになりました。
それと同時に、より楽しく開発できるようになりました。

本記事では、私がリーダーとして振舞うことになった経緯と、その振る舞いの具体例を紹介します。
同じような開発者の方の参考や励みになればと思います。

2. チームの背景

1年前当時の私が所属しているチームは以下の特徴がありました。

  • スクラム開発を採用
  • 開発メンバ7人中5人が入社4年目以下の若手メンバで、継続的な成長が必要
  • 主体的に成長するために様々な取り組みを実施

私も含め、若手が中心のメンバ構成になっており、各メンバが成長した先の目指すところの一つして、自己組織化したチームになることがあります。
リーダーから指示をされなくても、プロジェクトの状況をみて主体的に判断をして、開発を進められる状態を目指しています。
つまり、チームメンバ1人1人がリーダー目線の考え方ができ、振舞えるようになりたいという背景がありました。

3. チームの理想の姿・現状(1年前)・対策方針

前章でも言っているように、「チームの全メンバがリーダーシップを発揮して、主体的に意思決定ができるようになる」のがチームの理想の姿です。
それに対して当時ぞれぞれのメンバは、マネージャーへの提案までしかできていない状態でした。
たとえば朝会で、以下のような提案はできていました。

  • そのタスクはペアプロしたほうがよいのでは
  • それより先にこちらのタスクをやった方がよいのでは

ただし、私を含め、開発メンバはリーダー目線でプロジェクトの意思決定をしたことがありませんでした。

そこで、以下の対策を実施することにしました。
①私が特定スプリントで、先行してチームのリーダーとなり、プロジェクトの意思決定の経験を積む
②①が成功したら、ほかの若手でもリーダーができると思えるはずなので、他メンバもリーダーを実施する。

①では、私の経験値を増やすことと、先行して実施し、他のメンバでもできることを示すという狙いがあります。
今回は①にフォーカスして詳細を説明します。

4. 特定のスプリントで、自分が先行してチームのリーダーとなる

対策の詳細について説明します。
プロジェクトで意思決定が発生する場面として、例えば、以下があります。

  • 次スプリントの計画
    • 実現するユーザーストーリーの決定
    • スケジュールの作成
  • タスクの優先度決め
  • タスクへのメンバの割り当て
  • 各スクラムイベントの準備と進行
  • 他チームに協力依頼があるときのやり取り

これらの場面で自分で考え決定した事項を元に、開発を進めることをとにかくやってみました。
自分にできるかとても不安でしたし、いざやろうとすると、どうしていいのかわからないといった気持ちがありました。

次の章以降で、3つ具体例と、その中で得られたチームメンバの声を紹介します。

4.1 例1:スプリントレビューと計画ミーティングの準備と進行をやってみる

スクラムイベントであるスプリントレビューおよびスプリント計画ミーティングの準備と進行を実施しました。
いきなりすべてを自分で決めて走り出すのは、さすがにできなかったので、
会議で話す内容と、段取りをマネージャーとペアワークで考え、また、マネージャーに対して会議の場で説明する練習を実施しました。
その後の会議本番で、自分の言葉で説明しました。

これまで会議の場は、決定事項を聞いて確認することが多かったので、自分が喋るとなるととても緊張しました。
また、次スプリントの計画を立てるには、リリースから逆算して数スプリント先まで見通しを立てることが必要ですが、決定する当事者になるまで、全然考えられていなかったことを思い知りました…。

自分自身への効果

自分の言葉で説明する必要があるため、当事者意識をもって、スプリントでやるべきことを考えられました。
また、数スプリント先までの全体像が把握でき、スケジュール作成や日々のやることの決定に生かせました。
さらに、スプリントの計画を立てるための以下の勘所をつかめました。

  • ステークホルダーの意向を理解する(リリースする機能の優先度、リリース時期、プロモーションの仕方、開発のやり方など)
  • 1スプリントでどれぐらいの規模の開発ができるかを把握する
  • どのスプリントでどのユーザーストーリー実現するか、見通しを立てる

チームメンバの声

私の姿をみて、チームメンバからは以下の声をいただきました。

  • 自分がリーダーになったときは立ち振る舞いを参考にしたいと思っています
  • 以前は判断や考えの基準が自分はどうなのかという目線が主であったのに対して、プロジェクトとして・チームとしての意思決定をしている様を見て自分もより広い視点で判断することを意識するようになりました

他メンバから見て、手本となるレベルで実施できるようになれたのかなと思いますし、他メンバの考える範囲を広げるきっかけになれたのかな、と思います。

4.2 例2:タスクの優先度決め、タスクへのメンバの割り当てをやってみる

毎日の朝会の進行役となり、軌道修正が必要であればメンバに指示を出していました。
割り込みがあったり状況が変わったりした場合に、タスクの優先度を再考し、メンバの割り当てを変更していました。

当初は、なかなか決定に自信が持てなかったです。
毎日の決定が積み重なった結果、スプリントのゴールが達成できなかったらどうしようと不安な気持ちでいっぱいでした。
提案をするまでで決定しないことは、とても気楽で考える真剣度合いが違うことを体感しました。

自分自身への効果

当初は自信が無く決定までに時間がかかっていましたが、経験を積んだことで徐々に素早く決定できるようになりました。
また、タスクの優先度決め、メンバを割り当てるための以下の勘所をつかめたと思います。

  • プロジェクトのゴール、スプリントのゴール、残りの期間、現在の各メンバの進捗状況を把握する

チームメンバの声

私の姿をみて、チームメンバからは以下の声をいただきました。

  • 朝会などで日々意思決定を繰り返すことで、意思決定の範囲が広がったり、能力が上がったりするのを見て、自分から積極的に意思決定の経験を積みたいと思った
  • 自身が次行うべきタスクはプロジェクトとして何なのかを常に明確にしておくことや、誰かのタスクを一緒に進めるべきかを考えるようになった

メンバの主体的な意思決定を促したり、考え方や行動を変えるきっかけの一つになれたのかな、と思います。

4.3 例3:他チームに協力依頼があるときのやり取りをやってみる

他チームのマネージャーに何か依頼や相談することもよくありました。
まずは、やり取りの文面を自分で考えてみました。
他チームが関係するため、基本的には文面を送る前にマネージャーに確認してもらっていました。

直接の関わりが無く、目上の方とのやり取りであるため、正直なところ怖かったです。​
また、自分なりに相手の背景をくみ取ってやり取りをしようと思ってはいますが、本当に伝わるのか、対応してもらえるのか、不安でした

自分自身への効果

当初はマネージャーから指摘をもらうことも多かったですが、徐々に指摘なしでやり取りできるようになりました。
また、マネージャーが立て込んでいても、自分の判断でやり取りをして仕事を進めることもできるようになりました。

チームメンバの声

  • 同年代の若手であっても他チームに対しての必要な連絡や依頼をどんどんやっている姿を見て、自身も必要な連絡は毎回マネージャー経由でなく自身がやる前提で行動することを意識するようになりました​

今回の施策の狙いとしていた、他の若手メンバに対して、リーダー目線で意識して行動することを促すような刺激が与えられたのかな、と思います。

5. リーダーとして振る舞ってみた結果は?

「チームの全メンバがリーダーシップを発揮して、プロジェクトの意思決定ができる」状態になるという理想に対して

  • ぞれぞれのメンバは、リーダーへの提案までしかできていない
  • 私を含め、開発メンバはリーダー目線でプロジェクトの意思決定をしたことがない

という状態でした。

そこから、私が特定スプリントで、先行してチームのリーダーとなり、プロジェクトの意思決定をすることで、

  • 私自身、プロジェクトの意思決定をする経験をつめ、考え方や勘所をつかむことができた
  • それを見た他メンバもリーダー目線で物事を考えるよう意識したり、行動が変わったりした

という状態になりました。

さらに、この施策に効果がある、若手でもリーダーとして判断して開発を進められるという前例ができたため、
その後、他のメンバでも同様に特定スプリントでリーダーとして振る舞う施策を実施することとなりました。
次以降のリーダーには私が今回の経験で得た考え方を伝え、意思決定が進むよう補助もしています。
例えば以下の助言をしています。

  • スプリント計画MTGの準備を次のリーダーとペアプロで実施し、次のリーダーが説明できる状態にした
  • 朝会でのタスク割り当て時に助言

これにより、他のメンバもプロジェクトの意思決定ができるようになりました。

6. 自己組織化したチームになれたのか?

まだ、道半ばです。

私自身、判断を誤ったり、漏れていたりして、まだまだマネージャーから指摘されることも全然あります。

ですが、対策前の状況と比較して、私含めて若手メンバがよりプロジェクトの決定事項に対して積極的に意見を言ったり、行動ができるようになっています。

自分自身も施策をやった後では考えられる範囲が広がり、より多くの助言や提案をチームに対してできるようになっています。

7. さいごに

今回の対策をやるまでは、自分のやることや考えることに無意識に線を引いていました
若手であっても、考える範囲を広げて判断をする経験を積ませてもらえて、ありがたいと思っています。
マネージャーも心配があったかと思いますが、それでも思い切って私の背中を押して、時には指導して、時には励まして、ここまで成長させてくださったことに大変感謝しています。
また、その姿をみて、同じ若手メンバの意識や行動に変化が現れるような刺激を与えることができ、チームの理想の姿に近づくための貢献ができ、とても嬉しく思います。

文中に何度も「怖い」「不安」という言葉が出てきていますが、自分の考えが「至らないせい」で失敗して周りに迷惑をかけたくないという気持ちでした。
最初からスムーズできるわけがなく、当初は自分で考えすぎて、相談のバランスが取れず苦しかったです。
結局のところ、マネージャーに認識合わせをたくさんしてもらい不安を解消し、日々決定を繰り返す中で、徐々に考え方や勘所がわかってきて自信が持てるようになっていきました

また、「怖い」「不安」とは言っていますが、真剣に考えれば考えるほど、これまでよりもグッと当事者になれて、より面白く楽しく開発を進められましたし、達成感も大きくありました

この記事が、少しでも同じような開発者の方の参考や励みになれば幸いです。

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