2023年10月からの景品表示法の改正に伴う注記:この記事は技術評論社様より献本をいただき、発売前の書籍レビューをするものです。
来週1/24にMicrosoft社のAzureクラウドで生成AIアプリケーションを開発する人向けの入門書籍が発売されます。
幸運なことに、著者の一人である吉田真吾さんのご厚意で発売前献本の機会に預かりましたので、先行レビューということでみなさんに紹介させていただきます!
Azure OpenAI ServiceではじめるChatGPT/LLMシステム構築入門
永田 祥平 (著), 伊藤 駿汰 (著), 宮田 大士 (著), 立脇 裕太 (著), 花ケ﨑 伸祐 (著), 蒲生 弘郷 (著), 吉田 真吾 (著) - 技術評論者より2024/1/24発売予定
通称「ドーナツ本」です。おそらくOpenAIのロゴが某ドーナツ屋さんのフレンチ●ルーラーに酷似していることからこのカバー写真になったものと思われます(笑)
私は生成AIブームの初期からAzure OpenAI Serviceを使ってAIチャットアプリ開発を行っていたのと、最近はもともと得意だったAWSでもBedrockが登場したことにより同様の案件をこなせるようになってきたことから、両クラウドのLLM(大規模言語モデル)利用者目線でこの本を紹介します。
最近のAIエンジニアにありがちな課題
2023年は「わが社も生成AIを活用していくのである!オイ君、担当に任命するから推進よろしくな👋」てな感じでLLM特命隊員デビューされた方も多いのではないでしょうか?
AOAI入門あるある
- 生成AIをウチもやっていくぞ! これを機にAzureクラウドに入門しよう。…あれ、意外と入門書籍少ない?
- 生成AIでよく使われるAzureサービスは新しかったりニッチだったりで入門解説書に載っていないものも多い
- 玄人は「MS Learn読めばいいじゃん!」って言うけど、公式トレーニングの類の文章って正直認知負荷が高くて辛い
- クラウドは分かるけど生成AIの基礎知識が足りない。アプリ開発スキルが弱い
この本の凄いところ
お気付きの方もいるかも知れませんが、本書の著者人の多くがAzureの本家Microsoftの中でもOpenAI Serviceの国内コアメンバーたる方々で構成されています。
AOAIを少しかじったことのある方なら、QiitaやZennで日本のMS有志メンバーの方々が良質なアウトプットを発信されているのを見たことがあるのではないでしょうか?
特筆すべき点
- Azure OpenAIの有用なアウトプットを多数発信されている超豪華な執筆陣
- 今月出るホヤホヤの新刊なので、色々あったけど現時点で最新の情報が整理されている
- 図解・スクショたっぷりでめちゃ読みやすい
- 実装だけでなく「評価・運用・ガバナンス」といった "その先" の課題対応も解説
- RAGの次に間違いなく流行る「エージェント」の実装もばっちり記載
やはり生成AI領域でトップラインを走っているAzureだからこそ、こういった完成度の高い書籍が素早く世に出て来れるのだなと思いました。
具体的に面白いポイント
私も早速読んだのですが、特にRAGとエージェントの章はとても興味深く読みふけってしまいました。もともとAzureやAWSでLLMアプリ開発をやってはいるものの、改めてサービスの動作構造を深く理解することができました。
AzureのAI Search(旧Cognitive Search)の仕組みや検索の種類についても分かりやすく解説されていて、「ハイブリッド検索って具体的に何してるの?」みたいなことが結構ちゃんと分かるようになりました。
ここに注目
- RAGの概要やアーキテクチャ紹介はもちろん、実際のコーディング実装例を添えて解説してくれているので「AIに社内文書を食わせる」みたいなフワッとした理解ではなく解像度高くRAGを理解することができる
- Azureの各サービスで実際にどのぐらいの料金が発生するのか、分かりやすくまとめてくれているので個人検証する人も安心
- 社内で「OpenAI API共通基盤」を作ってガバナンスを保つというJTCエンプラあるある感のある実装方法の紹介も
- 新刊だけあって、コラムにHyDEやGPT-4 Turboが出てきたりと比較的新しいLLM技術もちゃっかり解説されている
- 付録でChatGPTの内部構造についての歴史を含めた解説がありとても興味深い
まとめ
LLMアプリケーション開発のサービス提供でとりわけ先行しているAzureの解説書籍なので、AWSやGoogle Cloudなど他のクラウドを主に使っているエンジニアにとっても有用で、生成AI活用の普遍的なナレッジや「競合サービスの比較軸」を理解することができるのでAzureユーザーに限らず読んでおくべき本だと思います。
めちゃ充実していて良かったので、個人的にはこんな本のAWS版も出てくれたらめちゃ嬉しいな〜と思いました😆