ついにAIエージェントの実践本が発売!
来週2024/11/9(金)、技術評論社より書籍「LangChainとLangGraphによるRAG・AIエージェント[実践]入門」が発売されます。
ありがたいことに、著者のお一人である吉田真吾さんより発売前に献本(ご恵贈)いただいたため、得た学びと書評をみなさんにお届けします。
本書の概要
生成AIブームが始まってはや2年、その中でも今最も注目されている「AIエージェント」を専門に扱うスタートアップ企業であるジェネラティブエージェンツ社の3名が共著で書かれた本です。
筆頭著者であるCEOの西見さんは、昨年末にAIエージェントのビジネス書を出版されベストセラーになったことで有名です。読まれた方も多いのではないでしょうか。
共著のCOO吉田さん、CTO大嶋さんのお二人は、昨年LangChainの入門書を出されており、こちらもエンジニアからとても人気の本で、重版を重ねているベストセラー本です。
今回の「AIエージェント実践本」は、AIエージェントの基本概念・実装方法・デザインパターンといったメインテーマと併せて、基礎となるOpenAI APIやLangChainの利用方法、RAGの応用、監視や評価といったLLMアプリ開発のトレンドがこれでもかと網羅されています。496ページの大作!
この本は誰が読むべき?
ハンズオンを交えた実装解説本となっていますので、基本的にエンジニア向けです。サンプルコードにはPythonが使われていますが、解説がこまめに付いているためプログラミング初級者でも調べながら理解しやすいと思います。
- LLMアプリ開発に入門してみたい方
- 最新版のLangChainに入門したい方
- LangGraphを使ったエージェント開発へ入門、実務活用したい方
- LangSmithやRagasを使った監視・評価に入門したい方
- 最近話題のLLMアプリ開発トレンドを、手を動かしながら学びたい方
Advanced RAGやエージェントデザインパターンなど、非エンジニアでも「最新のトレンド技術の思想を深く理解したい人」に役立つパートもあります。
目次紹介
下記は、本書の各章を 私の独断でセクション分け したものです。
第2・3・4章は、前述のLangChain本をベースに最新情報で大きくアップデートしたものとなっています。
LLMアプリ開発入門
- 第1章 LLMアプリケーション開発の基礎
- 第2章 OpenAIのチャットAPIの基礎
- 第3章 プロンプトエンジニアリング
LangChain入門
- 第4章 LangChainの基礎
- 第5章 LangChain Expression Language(LCEL)徹底解説
RAGのトレンドと評価
- 第6章 Advanced RAG
- 第7章 LangSmithを使ったRAGアプリケーションの評価
AIエージェント入門
- 第8章 AIエージェントとは
- 第9章 LangGraphで作るAIエージェント実践入門
AIエージェント実践編
- 第10章 要件定義書生成AIエージェントの開発
- 第11章 エージェントデザインパターン
- 第12章 LangChain/LangGraphで実装するエージェントデザインパターン
この本のすごいところ
- 生成AIは非常に動きの早い分野のため、日本語で体系的に解説されている書籍がまだまだ少ないです。とりわけ本書は「LCELなど最新版のLangChainをカバーした入門解説」「LangSmith・Ragasを用いた評価入門」「LangGraphの入門解説と実践的なアプリケーションの開発例」といったあたりを分かりやすくまとめてくれている、日本初の書籍となるため大変ありがたいですね。
- 各章の扉に担当著者の名前があるのですが、三名ともLLMアプリ開発の現場で最前線をいきつつ、一方でベストセラー作家でもあるため、解説が非常に分かりやすいことに加えて「実際に現場でどのように使われているか」を掴みやすいように書かれており、いわゆる教科書的になりすぎず即実務で生かしたいエンジニアにとって嬉しい本です。
- 図表も豊富です。概念図やアーキテクチャ、論文の引用やスクリーンショットなど、適度にグラフィックが挟まれているためボリュームの割に読みやすい本だと思います。もちろんサンプルコードとその解説も多数登場します。
私のお気に入りの章
本書全体とおして、日々LLMアプリを作り技術を追っている私にとっては大好物なトピックばかりで、とてもワクワクしながら楽しく読み進めていました。なかでも私が好きで、多くの方に喜ばれそうな章をピックアップして紹介します。
第5章 LangChain Expression Language(LCEL)徹底解説
今年の始めにLangChain v0.1が出てから、チェーンの記法がガラッと変わり、まだ新記法に慣れていない方もそれなりにいるのではないでしょうか。私も周りの方が書いているコードを見て、今でも旧式のチェーンが使われているのを見かけることがあります。そんなLCELを日本語で分かりやすく解説してくれているため、私も「普段ノリで使っていたが、こういうコンポーネントだったんだ!」という発見もあり勉強になりました。
第7章 LangSmithを使ったRAGアプリケーションの評価
本書ではエージェントに比重をおいていますが、RAGは今や多くの組織で実践され、そろそろ「監視・評価」といった本番運用に向けたトピックに関心が集まっています。LLMアプリの評価に関するツールセットは割と定番モノが決まっているのですが、この章ではLangSmithとRagasという王道ツールに入門することができます。
なおRagasは最近v0.2がリリースされましたが、本書ではv0.1.14ベースとなっている点にはご注意ください。ただし本書で基礎を身に付け、バージョン差分は公式ドキュメントやブログ等で補完することができますので、ベースとして最近の断面を日本語で学べるのはありがたいことです。
第9章 LangGraphで作るAIエージェント実践入門
AIエージェントは、実務でガッツリ取り組まれている方と、興味があるのでそろそろ入門したいという方がハッキリ分かれやすい領域ではないかと思います。特にこれから学びたい方にとっては、LangGraphを日本語で体系的に解説してくれている本章は非常に有用です。
この章で基本的なLangGraphのコンポーネントと動かし方を学んだら、後続の章で実践的なデザインパターンや実装例を参照することができるため、自分の開発に活かしやすい動線となっており助かりますね。
おわりに
生成AI、特にエージェント技術は最先端をいくLLMアプリ開発トレンドであり、RAGが広く普及しつつある今、次に世を席巻するのは間違いなくAIエージェントだと思います。実際、大手ITベンダーも続々とAIエージェントを活用したプロダクトを世に出し始めています。
タイムリーな最新技術を日本語で解説する決定版的な書籍を世に出してくれたことに感謝ですね。
本書ではOpenAIのAPIを中心としたコード解説が多めですが、普段クラウドにAWSを用いてアプリを開発している方は、Amazon Bedrock経由でClaude等のLLMを使われる方もいるでしょう。そんな方は、拙著のこちらもぜひ併せてお手に取ってくださいますと幸いです。