2023年10月からの景品表示法の改正に伴う注記:この記事は技術評論社様より献本をいただき、発売前の書籍レビューをするものです。
昨年末からの生成AIブーム、すごいですよね。
勢いを落とすことなく毎日のように新しい技術や製品のアップデートが登場しており、業務やプライベートで生成AIを活用したアプリケーション開発に取り組まれている方も多いのではないでしょうか。
そんな2023年10月、大規模言語モデル(LLM)を利用したアプリケーション開発に入門できる名著が発売されますので紹介します。
紹介したい本
ChatGPT/LangChainによるチャットシステム構築[実践]入門
著:吉田 真吾、大嶋 勇樹
あさって10/18(水) 発売です!
今回ありがたいことに発売前に献本を頂けることになったので、先行レビューをさせていただきます。
この本を読むべき人は誰?
- OpenAIなどの大規模言語モデル(LLM)を活用したアプリ開発に入門したい方
- ChatGPTやLangChainの主要機能を日本語で学びたい方
- LLMアプリの王道「Webチャット」「Slackボット」「社内文書検索(RAG)」を自分でハンズオンしてみたい方
この本のすごいところ
LLMの王道製品を「日本語で」「体系的に」解説してくれている
まだまだ情報の少ない生成AI、特に大規模言語モデルに関する王道製品(ChatGPT、OpenAI、LangChain)の基礎知識を「日本語で」「体系的に」解説してくれています。しかもめちゃ分かりやすい。
書籍ならではのリッチなビジュアル解説
LangChainのようなプログラミング言語のライブラリの動作概念って、かなり抽象的でとっつきづらい部分が多いです。
この本では書籍というフォーマットを活かし、LangChainの主要モジュールの動作フローを図で補足してくれていたり、文中に多数登場する実際のサンプルコードに書き込まれた形で「どの箇所が何の働きをしているのか」が掲載されているため、右脳でバチっと理解しやすいです。
読みながらクラウド上ですぐに開発を試せる
本書の後半では実際にLLMを用いたハンズオンが体験できるのですが、読者のローカルマシンの環境に左右されないよう、クラウドサービスを用いて安価に開発が進められるよう配慮されています。
個人的に、新しい技術を学ぶ際に最も大事なことは「実際に手を動かして実体験から理解すること」だと思っています。
これだけ流行っている生成AI領域でも、ブームから約1年たった今でさえ実際にLangChainのような話題のツールを自分で触って試している人の割合はものすごく限られています。逆に言うと、少し触ってみるだけでも他の大多数の人に大きな差をつけることができます。生成AI関連の企画検討や開発において、具体的な話題にどんどん踏み込めるようになります。
「実践」度合いの高い現実的なアーキテクチャ事例
著者の一人である吉田さんは、AWS Serverless Heroとして世界的にも認められたクラウドのスペシャリストです。もう一人の大嶋さんはUdemyで早くからLangChainの解説講義を配信され人気を博しています。
そんな「LLM開発界のビッグ2」なお二人が書かれた本だからこそ、ハンズオンで登場するクラウドサービスは実務で実際にベストプラクティスとなるケースが多そうな「王道」のものがチョイスされている点も非常に勉強になります。
例えばLangChainを動かすPython実行環境はAWSのLambda、チャット履歴のキャッシュはSaaSのMomento、RAGで利用するベクターDBはSaaSのPinecone…といった具合です。
また、ハンズオンの序盤ではAPIのテストにGoogle Colab、開発環境にAWS Cloud9とGitHub、簡易WebアプリにStreamlitと、本書に限らず技術検証をする際にお手本となりそうな組み合わせでガイドしてくれているのも嬉しい点です。
エンプラの本番環境でLLMをガチ運用する知見が得られる
著者の吉田さんは早くから実際に商用アプリケーションでLLMを活用されており、その中で得られた「企業の本番環境でLLMアプリを実運用するためのナレッジ」に1章をまるまる割いて語ってくれています。
自社ガイドラインの作成方法にはじまり、企画段階のリスク対応、LLMアプリの評価手法、セキュリティ対策、データ保護、海外の規制動向など、実際問題大きめの組織で生成AIをプロダクションに乗せようとすると発生しそうな主要課題について、大きなヒントが得られる点はとても貴重です。
おまけ:出版後もLLMの進化は早い!
RAGの精度を高める応用テクニック
この本の執筆完了後も、次々とLLM関連の新たな技術が登場してきています。
10/5に実施された本書の出版記念勉強会では、著者の大嶋さんが本著の内容にプラスアルファする形でRAGの応用テクニック等について分かりやすく解説くださっています。
登場ホヤホヤのAmazon Bedrockでハンズオンしてみる
また、9月末にはAWSの生成AIサービス「Amazon Bedrock」がリリースされました。
本書で紹介されているハンズオンに基づいて、OpenAIのAPIの代わりにBedrockのClaudeをモデルに利用することも可能です。LangChainが早くもBedrockをサポートしているため、LLMの指定をBedrockのClaude v2モデルに変更すれば登場したばかりのAWSの生成AIサービスを活用したLLMアプリを実際に動かすことができます。