ついにGenAI on AWSの日本語版が!
IT技術書で有名なオライリー社より、新刊「AWSではじめる生成AI」が来週8/2に出版されます。すでに予約可能。
AWSではじめる生成AI
Chris Fregly、Antje Barth、Shelbee Eigenbrode 著、久富木 隆一 訳、本橋 和貴、久保 隆宏 技術監修
これは昨年11月に刊行された同社の洋書「Generative AI on AWS」の日本語版となります。
原著はAWSの米国拠点で生成AIを担当する3名のエキスパートによる書籍です。AntjeさんはAmazon Bedrock関連のAWS Blogでもよくお見かけしますね。
今回、日本語訳にあたって技術監修をご担当されたAWS Japanの本橋さんと久保さんより、ありがたいことに発売前の献本(ご恵贈)にあずかりましたので、読んだ感想を簡単にアウトプットさせていただきます!
どんな本? 誰が読むべき?
従来の機械学習の延長としての「生成AI」の主要理論を本格的に学び、AWSのサービスを用いた実践への引導を渡してくれるような内容になっています。
私自身はもともと機械学習が専門ではなく、生成AIブームをきっかけにLLMのAPIを用いたAIアプリケーション開発にのめり込んだ身なのですが、よりディープな生成AIの学問理論的な部分や、モデルの開発・学習手法を体系的に学べる素敵な本でした。
読む前に知っておくとよい点
オライリーらしく(?)しっかりと硬派で難しい本に入ると思います。機械学習やデータサイエンスの基礎を習得している方が読むと、生成AIに関する理解を非常に深められると思います。Pythonの基礎知識があるとサンプルコードが理解しやすく、一部の章ではAWSの基礎知識があると活用イメージがわきやすくなります。
また、原著の刊行時期が早かったこともあり、2024年以降に拡充されたAmazon Bedrockの新機能については一部の概要に触れる程度となっています。サンプルコードを掲載している章の多くは、Amazon SageMakerを用いた例を使用しています。
各章の紹介
私の独断と偏見で、各章をグルーピングしたうえで参考難易度を補足しています。
生成AIの初歩とプロンプトエンジニアリングを学べる(難易度 ★☆☆)
- 1章 生成AIのユースケース、基礎、プロジェクトライフサイクル
- 2章 プロンプトエンジニアリングとコンテキスト内学習
LLMの動作機序と学習方法を学べる(難易度 ★★★)
- 3章 大規模言語モデル
- 4章 メモリーと計算リソースの最適化
ファインチューニングの手法と評価・デプロイを学べる(難易度 ★★★)
- 5章 微調整と評価
- 6章 パラメーター効率的微調整
- 7章 人間のフィードバックからの強化学習を用いた微調整
- 8章 モデルのデプロイの最適化
LLMを応用した高度なアプリケーションを学べる(難易度 ★★☆)
- 9章 RAGとエージェントにより文脈に応じた論理的判断を行うアプリケーション
画像生成AIの仕組みと活用方法を学べる(難易度 ★★☆)
- 10章 マルチモーダル基盤モデル
- 11章 Stable Diffusionによる生成の制御と微調整
AWSの新しい生成AIサービスを学べる(難易度 ★☆☆)
- 12章 生成AIのマネージドサービス Amazon Bedrock
- 日本語版付録 生成AI搭載アシスタント Amazon Q
個人的に面白かったところ
- TransformerやLoRAなど、生成AIのAPIを叩いてアプリ開発しているだけだと習得必須ではないものの「よく聞く専門用語」に、改めてDeep Diveして理解するとても良いきっかけとなりました。
- やはり硬派な専門書だけあって、普段の生成AI界隈で何気なく使っているキーワードを、より正しいニュアンスで理解することができ、適切な言葉選びができる自信がつきました。最近は社内外でAI関連の講演や講義を依頼されることも増えていたので、非常にありがたいです。
- 普段さんざん使い慣れているRAGやエージェントについても、いつも便利なフレームワークやマネージドサービスを使っているがゆえに、深く理解できていなかった詳細な動作メカニズムを勉強でき、ありがたかったです。
- 意外と深く学ぶ機会が少なかった画像生成(本書ではマルチモーダルとして整理)の仕組みや活用方法について、色々と知れたのも良かったです。インペインティングなど、こんなこともできたのか!という発見がありました。
- 日本語版の付録のAmazon Qの解説はとてもありがたかったです。最近、BusinessとDeveloperの2種類を中心にカテゴライズされ直したばかりですが、最新の情報をもとに各機能が詳しめに紹介されています。
さいごに
ありがたいことに12章の脚注でも触れていただいたのですが、私も先月Amazon Bedrockの入門書(以下、Bedrock開発入門)を出版させていただきました。
Amazon.co.jp: Amazon Bedrock 生成AIアプリ開発入門 [AWS深掘りガイド] : 御田 稔, 熊田 寛, 森田 和明: 本
今回紹介したオライリー本が「機械学習から発展した生成AIの本格的な理論習得」という強みを発揮しているのに対して、拙著のBedrock開発入門では「より具体的なAWSの機能紹介・開発手順」と「最新の機能をフルカラー&図解で分かりやすく解説」することに重きを置いています。
どっちの本から読むのがいい?
AWSの生成AI書籍というカテゴリーのなかで、両方ともいい感じに棲み分けしている書籍となりますので、Bedrock開発入門をすでにお読みくださった方も、今回のオライリー本を読めばより本格的な深い知識を獲得できるのでご安心ください!
逆に、オライリー本が少し難しいと感じた方は、Bedrock開発入門を先にパラパラと読んでみていただけると、より初歩的な概念や実際の使い方をイメージしたうえで、機械学習のファンダメンタルな理論に深入りしやすくなると思います。
改めて、日本語版の技術監修と素敵な追加章執筆に尽力されたAWS Japanの本橋さん・久保さん、お疲れさまでした! 8/2の刊行が楽しみですね 🎉