目次
0. はじめに
街の中には様々な汚れや、劣化が存在します。
そんな汚れや劣化をEnvironmentArtist(3DCGで背景や小物をモデリングする職業)である私が、日々街中を観察して発見したことや考察したことを書き留めた記事です。
(このノートは随時更新して内容を変更いたします。変更内容は一番下のリリースノートに記載)
当記事ではEnvironmentArtistがレイヤーなどの名称をみて、識別できることを目的としているため、詳しい名称などはあまり言及していません。レイヤー名に個別名称を記載してもほかの作業者に渡った際にわかりにくためです。
代わりに私がレイヤーに名前を付けるならこうするだろうな、という名前を[○○]に記載します。
1. 汚れと劣化の区別
まず質感を観察するうえで、この2つを分けて考えます。
・汚れ
物質の上にあとから付着したもの
・劣化
物質そのものが変化したもの
この2つを分けて考えることでenvironmentArtistなどはテクスチャを作成する際にどの質感の上にどの質感を乗せるか、レイヤーの上下関係を正しく設定してあげることができます。
●汚れや劣化のパターン
2. 汚れ
苔(Moss)
ギンゴケ、ホソウリゴケ[MossGreen]
日本で一番目にするメジャーな苔
シルエットとしてはもこもことした形をしていて、皆さんご存じの通り、湿った場所や日陰に多く生息しています。
湿度や水分具合によって鮮やかな緑から画像の様な深緑まで変化するため、その場所がどういった湿度なのか、季節なのか与える印象をコントロールできそう
ロウソクゴケ[MossYellow]
コンクリートや木の樹皮によく生えている
斑点のようにまるい形のものがぽつぽつとしたシルエットが印象的
背丈が低いため、光合成のライバルとなるような背丈の高いコケや植物などが生えているところではなく、表面が比較的凹凸の少ないところに多い
コフキヂリナリア、ムカデゴケ[MossWhite]
こちらも黄色いロウソクゴケと同じく背の低いコケの一種
2枚目の写真はおそらくこれらの一種ではなくギンゴケが乾燥したりなど変化したものかと思いますが
コケには白い色をしたものも見かけますね。石積みや木の幹などによく見かけます。
3. 劣化
コンクリート(concrete)
・白華[Lime(White)Leaking?]
白華現象(英:Efflorescence)という石灰成分が雨などで溶けて割れ目などから垂れることで起こる汚れ。コンクリートや、レンガ造りなどのモルタルにもよく見られる
4. 街中の現象を観察
液だれ[leak]
液だれには様々なシルエットのものが存在します。なぜこのような現象が起こるのでしょうか
答えは大きく分けて3つ考えられると思っています。
1つは、液だれが起こっている壁の材質の粗さ
2つ目は垂れてくる水の量
そして3つ目が私がたどり着くのにはなかなか難しかったのですが、
垂れてくる水の「持続時間」だと考えています。
それぞれ解説していきます。
液だれが起こる理由の考察
液だれから起こる汚れの主な成分はおそらく苔やカビ、空気中の汚れなどで構成されます。
そのため常に水が流れているようなところではこういった垂れたようなシルエット汚れは起こりません。
その点を踏まえてまず1つ目の壁の材質の粗さについて
・垂れてきた水分が表面にどれだけ広がり
・どれだけの時間水分が保持されるか
・また空気中の汚れなどをどれだけ留まらせられるか
にかかわってきます。
2点目は流れてくる水の量
こちらはイメージのままですが、ぽたぽたなのか、ザーザーと流れているのかによって垂の長さだったり広さが変わってくると思います。
最後の3点目ですが
こちらが私が最近この記事を書くにあたり街を観察していく中で発見できたことなのですが、
雨が降った日を想像してみるとあたりの壁はほとんど濡れていました。
ではいつこの垂れた汚れが起こるのか
答えはおそらく「雨が上がった後」ではないでしょうか
雨の日、街の壁たちは基本的には掃除などをしない限りすべて均等に汚れていきます。
その中でこの垂れたちがいつ起こっているのか、それは
「雨が上がった後も持続的に水分が供給される場所」だと思います。
要するにその上の持続時間を変化させるスポンジの部分(水分を保持している建造物や地形)がどれだけ雨が上がった後も持続的に水を供給するか、そして供給される水の量と、表面の材質によってさまざまなシルエットが発生していると考えるととても楽しいですし、テクスチャを描く際にも迷わずに作ることができそうですね!
それを踏まえて下の画像を見てみましょう。
1、2枚目
表面が滑らかなコンクリートの壁+柵から流れてくる水
こちらは上記の画像のように細くて長い汚れとなるようです。
3、4枚目
そして表面が非常に粗いコンクリートブロックの壁+雨どい伝ってくる水
こちらは雨が止んだ後も持続的に屋根にたまった水が雨どいのほうへ流れてきて、表面のも非常に粗いため水分が広がりやすく、空気中の汚れなどもキャッチしやすいため広い汚れとなるようです。
5.【応用編】テクスチャに落とし込む
汚しの色はなにいろ?
突然ですが、上の画像、何色の汚しでどういったシェイプの汚れが入っていると思いますか?
答えは下の画像をご覧ください!
答えと考察
実は「明るい色」、「暗い色」の2種類が乗っていました!下地の色によってここまで見え方が違うんですね!
ただ「純粋な白」、「純粋な黒」ではなく少し緑を混ぜた色にしています。
おそらく皆さんが想像していた色、汚れのシェイプとは違ったのではないでしょうか?
私の場合、以前は参考画像を漁って、例えば白い室外機の様なものの汚しを付ける場合「彩度0ラフネス0のマットブラックのレイヤーを不当明度で微調整!」みたいなことをよくしていました。
ただ上の画像を見てわかる通り、パッと見では気づきませんが、白い物にも、様々な色の汚れが隠れているということが分かりますね!
明度が近い物は隠れてしまい、彩度も下地の色に影響されて無彩色に見えます。そしてシルエットも下地の色で見え方がこんなにも変わってきてしまいます。
(私の場合は基本汚しの色は3パターンくらいを目安に別々の色を乗せることが多いです。)
なので私は日ごろ街を歩く際に、「白い壁の汚れ」と近くにある「黒い壁の汚れ」とを見比べて同じ環境でそれぞれどういう色が隠れているか観察するようにしています。
まとめ
テクスチャを作成する際は参考にしている物の下地の明暗を加味して質感付けをしてあげることで
どんな色の上に汚しレイヤーを乗せてもある程度成り立つような汚しマテリアルが作れる。
そして下地の色にとらわれず、本来のシルエットと色を見極めるには日ごろ観察し頭にストックしておくことが大事!
リリースノート
更新日 | 更新内容 |
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2023-07-15 | 当記事を作成致しました。 |
2023-07-19 | 白い苔類、【応用編】テクスチャに落とし込む についての記事を掲載しました。 |