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AWS公式資料で挑むMLS認定(8)-Amazon Polly音声変換の仕組み

Last updated at Posted at 2022-05-15
[前回] AWS公式資料で挑むMLS認定(7)-Amazon Pollyの基本

はじめに

前回は、Amazon Pollyの機能とユースケースを勉強しました。
今回は、音声変換における技術トピックを勉強します。

テキストから音声への変換処理品質を判断する尺度

  • 自然に聞こえるか
    • 音声変換出力がどれくらい人間の声に近いか
  • 正確さ
    • 一般的なテキスト解釈システムの能力
      • 略語
      • 数字の羅列
      • ホモグラフ(同一つづりで発音が異なる語彙)
  • わかりやすさ
    • 音声がどれくらいわかりやすいか

Amazon Pollyの仕組み

Amazon Pollyは入力テキストを肉声に近い音声に変換。
処理フロー:

  • 合成するテキストを入力
    • プレーンテキスト
    • または、音声合成マークアップ言語(SSML)形式
      • 発音、ボリューム、ピッチ、話す速度など音声要素を制御可能
  • 音声合成メソッドを呼び出す
    • 音声エンジンをengineプロパティで指定
      • Standard(標準音声)
      • ニューラル音声
    • 音声出力形式を指定
      • Webやモバイルアプリ用、MP3やOgg Vorbis形式
      • AWS IoTデバイスやテレフォニーソリューション用、PCM形式
  • 合成された音声ストリームを出力
    • Amazon Pollyは翻訳サービスではなく、合成音声はテキストと同じ言語
      • ただし、テキストと音声言語が異なる場合、音声言語にて合成される

TTS(標準音声) vs. NTTS(ニューラルTTS)

ニューラルTTSが標準TTS音声より高品質で自然、人間に似たものを生み出す。

  • TTS
    • 標準連結合成技術が使用される
      • 録音された音声の音素をまとめ(連結)、自然な合成音声を生成
      • ただし、波形をセグメント化する手法であるため、音声のバリエーションや品質が制限される
  • NTTS
    • sequence-to-sequenceモデルを使用し、スペクトログラムを生成
      • 音素のシーケンスをスペクトログラムのシーケンスに変換するニューラルネットワーク
        • 音素のシーケンスは、最も基本的な言語単位
        • 入力からのみならず、入力要素シーケンスの連携まで考慮
        • 人間の脳が使用する音響能力を強調する周波数帯域を使用
      • スペクトログラムとは
        • 複合信号を窓関数に通し、周波数スペクトルを計算した結果
        • 3次元(時間、周波数、信号成分の強さ)のグラフで表される
        • 声紋の鑑定、動物の鳴き声の分析、音楽、ソナー/レーダー、音声処理などに使われる
          image.png
          ※ 引用元: Wikipediaのスペクトログラム
      • 汎用連結合成システムの構築に使用される大規模なデータセットでトレーニングさせると
        • より高品質で自然な響きの声を生み出せる
    • ボコーダーを使用し、スペクトログラムを連続したオーディオ信号に変換
      • スペクトログラムが音声波形に変換される
        • スペクトログラムのシーケンスは、異なる周波数帯域のエネルギーレベルのスナップショット
    • NTTSをコンソールまたはAPIで使用時、TTSエンジンパラメータをneuralに設定する必要あり
    • リアルタイムおよび非同期の音声合成オペレーションをサポート

スピーチマーク

  • 合成音声を表すメタデータ
    • 例えば、音声ストリームで文章または単語の開始/終了
    • テキストのスピーチマークをリクエストすると、合成音声の代わりにメタデータを返す
    • 合成スピーチ音声ストリームとスピーチマークを組み合わせ、ビジュアル体験を提供するアプリを構築可能
      • 例えば、
        • スピーチと表情アニメーション(リップシンキング)を同期
        • 読み上げられたとおり書かれた単語をハイライト表示

スピーチマークの種類

  • sentence(文)
    • 入力テキストで文の要素を示す
  • word(単語)
    • 入力テキストで単語の要素を示す
  • viseme(ビゼーム)
    • 音声の視覚的な構成要素で、単語を読み上げる際の顔と口の位置/形を表す
      • 話されている各音素に対応する顔と口の動き
    • 単語が作られる基本的な音声単位である音素と視覚的に同等
    • 各言語に、特定の音素に対応するビゼームセットが含まれている
    • すべてのビゼームが特定音素にマッピングできるとは限らない
      • 理由は、音声が異なる場合でも、読み上げる際に膨大な音素が表示されるため
      • たとえば、英語のpetbetという単語は聴覚的に異なるが、視覚的に同じ
  • ssml
    • SSML入力テキストからの<mark>要素を表す

スピーチマークのリクエスト方法

  • コマンド
    • SynthesizeSpeech
    • または、StartSpeechSynthesisTask
  • オプション
    • --output-format json
      • JSON形式のみサポート
      • 未サポート出力形式を使用する場合、Amazon Pollyは例外をスロー
    • --voice-id Joanna
      • メタデータを音声ストリームと一致させるため指定
      • 合成スピーチ音声ストリームの生成に使用されている音声を指定
    • --text-type
      • デフォルトの入力テキストは、プレーンテキスト
      • SSMLスピーチマークを返す場合は、--text-type ssmlを使用する必要あり
    • --outfile
      • メタデータが書き込まれた出力ファイルを指定
    • --speech-mark-types='["sentence", "word", "viseme", "ssml"]'
      • 入力テキストから返すメタデータ要素を指定
      • 最大4種類のメタデータをリクエスト可能
      • リクエストごとに1種類以上を指定する必要あり

スピーチマークの出力フォーマット

スピーチマークのオブジェクトは、改行で区切られたJSONストリーム。
オブジェクトに含まれるフィールド

  • time(時間)
    • 対応する音声ストリームの開始からのタイムスタンプ(ミリ秒)
  • type(種類)
    • スピーチマークの種類(文、単語、ビゼーム、ssml)
  • start(開始)
    • 入力テキストオブジェクトの開始からのオフセット(文字ではなくバイト)(ビゼームマークを含まない)
  • end(終了)
    • 入力テキストオブジェクトの終了のオフセット(文字ではなくバイト)(ビゼームマークを含まない)
  • value(値)
    • スピーチマークの種類によって異なる
      • SSML: <mark>SSMLタグ
      • viseme: ビゼーム名
      • word/sentence: 入力テキストの部分文字列
        • 開始/終了フィールドで区切られる
      • 例: 入力テキスト: Mary had a little lamb
        • 生成されるwordスピーチマークのオブジェクト
        • {"time":373,"type":"word","start":5,"end":8,"value":"had"}
          • 単語hadは、音声ストリーム開始後373ミリ秒後に開始
          • 入力テキストの5バイト目で開始、8バイト目で終了

スピーチマークの例

  • 例1: SSMLを使用しないスピーチマーク
aws polly synthesize-speech \
  --output-format json \
  --voice-id Joanna \
  --text 'Mary had a little lamb.' \
  --speech-mark-types='["viseme", "word", "sentence"]' \
  MaryLamb.txt

スピーチマーク単位で出力が返却される

出力.txtファイル
{"time":0,"type":"sentence","start":0,"end":23,"value":"Mary had a little lamb."}
{"time":6,"type":"word","start":0,"end":4,"value":"Mary"}
{"time":6,"type":"viseme","value":"p"}
{"time":73,"type":"viseme","value":"E"}
{"time":180,"type":"viseme","value":"r"}
{"time":292,"type":"viseme","value":"i"}
{"time":373,"type":"word","start":5,"end":8,"value":"had"}
{"time":373,"type":"viseme","value":"k"}
{"time":460,"type":"viseme","value":"a"}
{"time":521,"type":"viseme","value":"t"}
{"time":604,"type":"word","start":9,"end":10,"value":"a"}
{"time":604,"type":"viseme","value":"@"}
{"time":643,"type":"word","start":11,"end":17,"value":"little"}
{"time":643,"type":"viseme","value":"t"}
{"time":739,"type":"viseme","value":"i"}
{"time":769,"type":"viseme","value":"t"}
{"time":799,"type":"viseme","value":"t"}
{"time":882,"type":"word","start":18,"end":22,"value":"lamb"}
{"time":882,"type":"viseme","value":"t"}
{"time":964,"type":"viseme","value":"a"}
{"time":1082,"type":"viseme","value":"p"} 
  • 例2: SSMLを使用したスピーチマーク
aws polly synthesize-speech \
  --output-format json \
  --voice-id Joanna \
  --text-type ssml \
  --text '<speak><prosody volume="+20dB">Mary had <break time="300ms"/>a little <mark name="animal"/>lamb</prosody></speak>' \
  --speech-mark-types='["sentence", "word", "ssml"]' \
  output.txt
出力.txtファイル
{"time":0,"type":"sentence","start":31,"end":95,"value":"Mary had <break time=\"300ms\"\/>a little <mark name=\"animal\"\/>lamb"}
{"time":6,"type":"word","start":31,"end":35,"value":"Mary"}
{"time":325,"type":"word","start":36,"end":39,"value":"had"}
{"time":897,"type":"word","start":40,"end":61,"value":"<break time=\"300ms\"\/>"}
{"time":1291,"type":"word","start":61,"end":62,"value":"a"}
{"time":1373,"type":"word","start":63,"end":69,"value":"little"}
{"time":1635,"type":"ssml","start":70,"end":91,"value":"animal"}
{"time":1635,"type":"word","start":91,"end":95,"value":"lamb"} 

SSMLドキュメントからの音声生成

  • SSML拡張テキストを使用し、テキストからの音声生成方法を制御

    • テキスト内に長い一時停止時間を追加
    • 話す速度やピッチを変更
    • 特定の単語やフレーズを強調する
    • 発音記号を使用する
    • 呼吸音を含む
    • ウィスパー
    • ニュースキャスターの話し方
  • エスケープ処理が必要な予約文字

    • 引用符(二重引用符)": &quot;にエスケープが必要
    • アンパサンド&: &amp;にエスケープが必要
    • 一重引用符(アポストロフィまたは)': &apos;にエスケープが必要
    • 小なり記号<: &lt;にエスケープが必要
    • 大なり記号>: &gt;にエスケープが必要
  • サポートされるSSMLタグ

    • タグ例: <speak>タグ
      • すべてのAmazon Polly SSMLテキストのルート要素
      • SSML拡張テキストはすべて<speak>タグで囲む必要あり

レキシコンの管理

  • 発音レキシコンとは
    • APIオペレーションを使用し、単語の発音をカスタマイズ
    • レキシコンはAWSリージョンに依存
      • SynthesizeSpeechオペレーションを使用しテキスト合成時、同じリージョンから1つ以上のレキシコンを使用
      • 合成が始まる前に、入力テキストに指定されたレキシコンが適用される
  • 音声合成エンジンでレキシコンのユースケース
    • テキスト内のW3Cなど頭文字に対し、レキシコンを使用しエイリアスを定義
      • 例: W3Cを完全な形のWorld Wide Web Consortiumに置き換えて読み上げる
    • 選択した言語で一般的でない単語に対し、音声記号を使用し発音を指定可能

複数レキシコンの適用方法

  • テキストに最大5つのレキシコンを適用可能
  • テキストに適用する複数のレキシコンに同じ書記素がある場合
    • 適用順序により音声の結果が異なる

例として、テキストHello, my name is Bobに、二つのレキシコンを適用した場合、
適用順序により、同じ書記素Bobに異なる語彙素RobertまたはBobbyが使用される。

  • 二つのレキシコンを用意
<lexeme>
   <grapheme>Bob</grapheme>
   <alias>Robert</alias>
</lexeme>
<lexeme>
   <grapheme>Bob</grapheme>
   <alias>Bobby</alias>
</lexeme>
  • LexA、LexBの順に適用
aws polly synthesize-speech \
--lexicon-names LexA LexB \
--output-format mp3 \
--text 'Hello, my name is Bob' \
--voice-id Justin \
bobAB.mp3

音声出力
Hello, my name is Robert.

  • LexB、LexAの順に適用
aws polly synthesize-speech \
--lexicon-names LexB LexA \
--output-format mp3 \
--text 'Hello, my name is Bob' \
--voice-id Justin \
bobBA.mp3

音声出力
Hello, my name is Bobby.

非同期合成による長い音声ファイルの作成

  • 通常のSynthesizeSpeechオペレーションの制限
    • 3000文字まで合成可能
    • ほぼリアルタイムにオーディオを生成
  • 大規模テキストのTTSファイル作成
    • Amazon Pollyの非同期合成機能を使用

非同期合成で使用する3つのSpeechSynthesisTask API

  • StartSpeechSynthesisTask
    • 新しい合成タスクを開始
    • リクエストがキューに入れられ、システムリソースが利用可能になると非同期処理開始
  • GetSpeechSynthesisTask
    • 以前送信された合成タスクの詳細を返す
  • ListSpeechSynthesisTasks
    • 送信された合成タスクを一覧表示

出力結果の保存と通知

  • 作成されたスピーチまたはスピーチマークストリームをAmazon S3バケット(必須)に直接アップロード
  • 完了したファイルの可用性について、SNSトピック(オプション)を通じて通知

処理可能サイズ

リクエスト可能な最大サイズは、テキスト毎に100,000文字(または合計200,000文字)

暗号化(Encryption)

  • 出力ファイルを暗号化された形式でS3バケットに保存可能
  • Amazon S3バケットの暗号化を有効にする
    • ブロック暗号の256ビット高度暗号化規格AES-256を使用
      • ブロック暗号とは、共通鍵暗号の一種で、固定長のデータを単位として処理する暗号の総称

非同期合成用のIAMポリシー設定

次のIAM許可ポリシーが必要

  • 新しいAmazon Pollyオペレーションの使用
  • 出力S3バケットへの書き込み
  • ステータスSNSトピックへの発行(オプション)
{
  "Version": "2012-10-17",
  "Statement": [
    {  
      "Effect": "Allow",
      "Action": [
        "polly:StartSpeechSynthesisTask",
        "polly:GetSpeechSynthesisTask",
        "polly:ListSpeechSynthesisTasks"
      ],
      "Resource": "*"
    },
    {
      "Effect": "Allow",
      "Action": "s3:PutObject",
      "Resource": "arn:aws:s3:::bucket-name/*"
    },
    {
      "Effect": "Allow",
      "Action": "sns:Publish",
      "Resource": "arn:aws:sns:region:account:topic"
    }
  ]
}

おわりに

机上ではありますが、Amazon Pollyを技術の観点から理解しました。
次回は、実際AWS環境で手を動かしながら、Amazon Pollyの理解を深めます。
お楽しみに。

[次回] AWS公式資料で挑むMLS認定(9)-Amazon PollyをPython Boto3で検証
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