はじめに
みなさん、Zabbixって知ってますか?
非常に有名なツールなので、一度は耳にしたことがある方も多いかと思います。
Zabbixは簡単に言うとオープンソースの統合監視ツールです。
非常に利用できる機能が多く、奥が深い非常に強力な監視ツールです。
ですが、初学者にとっては設定の自由度が高すぎる故にどこから手を付ければいいのか、難しいツールでもあります。
そこで、この記事シリーズでは初めてZabbixを使う or 構築するインフラエンジニアに向けた実際の監視環境構築手順や設定方法を解説していきます。
商用環境でも利用されていることが多く、Zabbixの知識を持っていて損はないと思います。
この記事では監視の概念を理解していただくことを念頭に置いています。
実際の構築方法や設定等はこの記事では解説していません。
そもそも監視とは
監視とは、システムが正常に動作しているか定期的に確認することだと思ってください。
また、障害発生等の異常を検知した際に迅速な対応を行うための手段でもあります。
システムの安定運用に欠かせないのが監視システムです。
監視が適切に行われていないと、障害が発生しても気づかずにサービスが長時間停止してしまう可能性もあります。
逆に言えば、適切な監視を行えば、障害の予兆をとらえて事前に対応出来たり、
発生した障害の影響を最小限に抑えることが可能です。
また、障害発生以外でも役に立つケースもあります。
例えば昨今では広く導入されているAWSやAzureなどのパブリッククラウドでは、
サーバのスペックに対して実際に使用されているリソースが適切かどうかを定常的に監視することによってコストの削減などにつながるケースもあります。
監視の目的
1. 可用性の確保(Availability)
可用性の確保とは、システムが常に稼働している状態を維持することを指します。
企業などのITインフラはサーバーやネットワーク機器、ストレージ、データベースなど複数の要素で構成されています。
このうちのいずれかが停止すると、業務に大きな影響を与える場合があります。
可用性を確保するための監視の役割
- ダウンタイムの最小化
監視ツールを使用することで、サーバーやネットワーク機器が停止した際に即座に検知できます。 - システムの正常性を可視化
定期的に稼働状況を記録し、異常が発生する前に予兆を検知できます。 - 複数システムの統合監視
監視ルールを導入することで、Webサーバー、データベース、ネットワーク機器などを一元的に管理できます。
Zabbixによる可用性確保の具体的な機能
- 死活監視(PingやHTTP、TCPポート監視機能など)
サーバーやネットワーク機器が正常に応答しているかを定期的にチェックし、正常性を確認することができます。 - プロセス監視
重要なアプリケーションのプロセスが正常に動作しているかチェックすることで、正常性を確認することができます。 - サービス監視
Webサーバー(Apache, Nginx)、データベース(MySQL, PostgreSQL)などの稼働状況を監視することで正常性を確認することができます。 - 自動通知機能
異常を検知した際に、メールやSlack、LINEなどに通知を送ることで迅速な対応を実現することができます。
2. パフォーマンスの最適化(Performance)
パフォーマンス監視の目的は、リソースの適正な利用を維持し、システムがスムーズに動作するように管理することです。
システムは日々変化し、負荷が増加することでレスポンスが悪化することがあります。
そのため、継続的な監視が必要となります。
パフォーマンスを最適化するための監視の役割
- リソース不足の早期発見
CPUやメモリ、ディスクの使用率を監視し、リソースが逼迫する前に対策をすることができます。 - トラフィック量の監視
ネットワーク帯域の使用状況を監視し、回線の逼迫や異常なトラフィックを検出できます。 - 長期的なデータ分析による最適化
監視データを蓄積し、パフォーマンスの傾向を分析することで、将来的なリソース増強計画を立てやすくなります。
また逆に、余分にリソースを割り当てているサーバーを発見し、コスト削減につなげることもできます。
Zabbixによるパフォーマンス監視の具体的な機能
- CPU使用率、メモリ使用量、ディスクIOの監視
システム負荷をリアルタイムで監視し、しきい値を超えた際に通知できます。 - ネットワークインターフェースの監視
送受信トラフィックの異常を検出し、回線の逼迫を未然に防ぐことができます。 - スワップメモリの監視
メモリ不足が原因でスワップが発生し、システムが重くなる前にアラートすることができます。
3. 障害検知と対応(Fault Detection & Response)
システムの障害は、完全に防ぐことはできないと思ってください。
しかし、監視を適切に設定すれば、障害の影響を最小限に抑え、迅速な対応が可能になります。
障害検知とその対応をするための監視の役割
- 異常の即時検知
しきい値を設定し、正常時と異常時の閾値を超えた際に即座に通知することができます。 - 自動対応の実装
監視ツールのアクション機能を利用し、障害発生時に自動でスクリプトを実行し対応を行うことができます。
例えば、サービスが停止した場合に自動的に再起動する処理を行うなどが挙げられます。 - 障害対応の迅速化
監視ログを活用し、障害発生のタイミングや原因を特定しやすくなります。
複数の機器のログを一元的に管理、監視することでトラブルシューティングが容易になります。
Zabbixによる障害検知の具体的な機能
- トリガー機能による異常検知
CPU負荷、ディスク使用率、アプリケーションの応答遅延などを監視し、しきい値を超えたらアラート発出することができます。 - 通知アクションの自動化
障害時に自動で通知を送信し、運用チームが即座に対応できるようにすることができます。 - ログ監視機能
特定のエラーメッセージがログに記録された場合に即座に検知することができます。
障害の具体例とその対策
システムの安定運用を妨げる要因は、大きく以下の3つに分類することができます。
それぞれのケースで発生し得る問題と、Zabbixを活用した回避策を例として挙げます。
1. ハードウェア障害
具体例:
アプリケーションが動作するサーバーのディスクが突然故障し、データが読めなくなった。
運用チームが障害に気づいたのは、サービスが完全に停止した後だったため、復旧に時間がかかってしまった。
Zabbixを用いた対策:
Zabbixで『ディスクの空き容量』や『温度』を監視することで、
ハードウェア障害の予兆を検知する。
2. ソフトウェア・アプリケーションの異常
具体例:
深夜にデータベースサーバーのメモリ使用率が100%に達し、アプリケーションが応答しなくなった。
運用チームは翌朝になって障害を認識し、サービスが長時間停止していたことが判明。
Zabbixを用いた対策:
Zabbixで『CPU使用率』や『メモリ空き容量』を監視することで、
リソース異常を障害発生前に検知する。
また、『プロセス』を監視することで、即座に障害の発生を検知する。
3. ネットワークの問題
具体例:
拠点間VPNが不安定になり、一部の拠点でクラウドサービスへの接続が頻繁に途切れる。
しかし、ネットワーク機器のログを確認するまで、問題の発生頻度や時間帯が不明だった。
Zabbixを用いた対策:
Zabbixで『Ping応答』や『トラフィック量』を監視することで、
ネットワーク異常やトラフィックの逼迫を検知する。
Zabbixとは
Zabbixは、オープンソースの統合監視ツールです。
無料で使える超強力な監視ツールみたいなものだと思って下さい。
サーバーやネットワーク機器、ストレージ、クラウド環境などさまざまなシステムの状態をリアルタイムで監視し、異常を検知すると即座にアラートを発することができます。
Zabbixは多くの企業や官公庁も導入している、非常に一般的な監視ツールです。
Zabbixの強み
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無料で利用できるオープンソース
何よりの強みと言っても過言ではありません。無料なのです。
企業向けの監視ツールは有料の物が多いですが、Zabbixはライセンス費用が不要で、自由にカスタマイズや拡張が可能です。 -
幅広い監視対象をカバー
Zabbixは、物理サーバー、仮想マシン、ネットワーク機器、クラウドサービス、アプリケーションまで様々なコンポーネントを統合的に監視できます。 -
柔軟なデータ収集と可視化
Zabbixは監視データを長期間保存し、詳細な分析を行うことができます。
取得したデータをリアルタイムでグラフ化などの可視化を行うことで、システムの傾向や異常を直感的に把握できます。 -
強力なアラート・通知機能
Zabbixは、異常を検知すると即座に通知を送ることができます。
通知方法も様々で、メールやSlack、LINE、Teamsなどを使用することができます。 -
拡張性が高く、スクリプト連携が可能
Zabbixは、APIを活用して他のシステムと連携したり、スクリプトを使って監視の自動化を行うことができます。
これにより、大規模な監視環境でも柔軟に対応可能です。
まとめ
監視の基本概念や重要性について理解いただけましたでしょうか。
我々が何気なく使用しているサービスにも、裏では24時間体制でサービスを監視している方々がいて成り立っています。
Zabbixは非常に強力で、多機能です。
それ故に運用監視をしている方々でも、構築方法や設定方法が把握しきれていない、などの状態がよくあります。
だからこそZabbixについて詳しくなることは非常に大きなメリットでもあるのです。
このシリーズを通して少しでもZabbixについての知識を学んでいただければと思います。
次回はZabbixサーバーと監視対象ホストの関係や監視の種類について解説していきます。