なぜ信頼関係を構築することが大事なのか
恐怖とは : 最初に行動し、後で考える状態
エンジニアの仕事において、信頼関係を構築することは重要です。
もちろん自身が上長や部下と心地よい関係を作ることで、キャリア上優位に働かせることもできますし、それを目的として信頼関係を構築するのも結果的にはよい行動だと思います。
ですが、エンジニアの場合は信頼関係の構築を行うべきより明確な理由が存在します。
それはクリエイティビティの問題です。
もし あなたの脳が恐怖に支配された状態の時、生物学的な視点では、野生としての生存率は向上しますが、エンジニアとしてのクリエイティビティは失われてしまいます。
これは情緒的な問題でなく、データで証明された理性的な問題です。
「信頼のないチームは存在しません」と Google の業界責任者、ポール・サンタガタ氏は言います。
彼は、チームパフォーマンスに関する2 年間にわたる大規模な調査の結果を知っています。
その結果によると、最高の成績を収めたチームには共通点があることが明らかになりました。
それは、心理的安全性、つまり、ミスをしても罰を受けないという信念です。
研究によると、心理的安全性があれば、適度なリスクを取ること、自分の考えを話すこと、創造性を発揮すること、首を切られることを恐れずに背筋を伸ばすことが可能になります。
これらの行動こそが市場のブレークスルーにつながるのです。心理的安全性が脆弱であると同時に、不確実で相互依存する環境での成功に不可欠である理由は、古代の進化的適応によって説明されています。
脳は、上司、競争力のある同僚、または否定的な部下による挑発を生死の脅威として処理します。
脳の警鐘である扁桃体が闘争・逃走反応を引き起こし、高次脳中枢を乗っ取ります。
この「最初に行動し、後で考える」という脳の構造は、視点と分析的推論を遮断します。
文字通り、最も必要なときに、私たちは正気を失ってしまうのです。
この闘争・逃走反応は、生きるか死ぬかの状況で私たちを救ってくれるかもしれませんが、今日の職場で必要とされる戦略的思考を妨げます。
21 世紀の成功は、別のシステム、つまり、複雑な問題を解決し、協力関係を育むことを可能にする、ポジティブな感情の拡大と構築のモードにかかっています。
ノースカロライナ大学のバーバラ・フレドリクソン氏は、信頼、好奇心、自信、インスピレーションなどのポジティブな感情が心を広げ、心理的、社会的、身体的資源を構築するのに役立つことを発見しました。
安全だと感じると、私たちはよりオープンマインドになり、立ち直りやすくなり、やる気が増し、粘り強くなります。
ユーモアが増し、創造性の基礎となる認知プロセスである解決策の発見や発散的思考も高まります。
上記の引用の中で、最も重要なのは 「脳は、上司、競争力のある同僚、または否定的な部下による挑発を生死の脅威として処理、扁桃体が闘争・逃走反応を引き起こし、高次脳中枢(クリエイティビティを司る脳の部位)を乗っ取ります。この「最初に行動し、後で考える」という脳の構造は、視点と分析的推論を遮断します。 」という部分です。
恐怖の心理学
恐怖を感じたときに、他人が認識できるサインは次の3つです。
- 手汗 : 「手をこする、ズボンで手汗を拭く」 などの動作から判別可能。
- 瞬きの増加 : 瞬きの数を確認すること で判別可能。
- 口渇 : 唾をのむ動作 から判別可能。
他には以下のような症状を記録しています。
- 胸痛
- 寒気
- 吐き気
- 速い心拍
- 呼吸困難
- 発汗
- 震え
- 胃のむかつき
上記のサインを確認した時には、これから紹介する手法で信頼関係の回復に努めることをお勧めします。
ミラーリング
ミラーリングとは、ある人が無意識のうちに別の人の身振り、表情、話し方、姿勢を模倣する行為です。
簡単に説明すると 相手と同じ行動をとることで、好感度が上がる のがミラーリングです。
しかし、厳密なミラーリングには、呼吸数、声の変調、リズム、呼吸の一時停止、動きの強さの模倣など、より細かい調整が含まれます。
リモート通信手段を使用する場合、顔だけが表示されるという事実にもかかわらず、接触とミラーリングの作成における顔の役割は重要です。その逆もまた真です。顔が見えない場合、接触は著しく困難になり、非言語的要素は非常に限られます。
ミラーリングの主な特徴は、他人の活動を無意識に調整してコピーすることであり、これにより、人々の間に微妙な非言語的な接触を確立することができます。
ちなみに、ミラーリングの検証結果を否定する実験結果も出ているが、他のコミュニケーションスキルと並行することでその効果を発揮できるのでは? との考察もある。
全体として,本研究では対話状況においてミラーリングすること(会話相手のしぐさを模倣すること)は「会話の質」「対話相手のイメージ」の評価を向上させる直接的な要因にはならなかった。
しかし,対人魅力を向上するための付加効果であるかもしれないという新たな仮説が生まれた。
Gueguen(2009)は動作だけの模倣に限らず,言葉や応答などでの模倣をしており,池田・片上・新田(2009)はしぐさの模倣以外にも様々なコミュニケーションテクニックを用いることでその効果を検証している。
こういった先行研究と本研究の結果からミラーリングは他のコミュニケーションスキルと並行して用いることでその効果を発揮するということが考えられる。
レスポンスはなるべく素早く
得体の知れないものへの不安の根本的な原因の第 1 は、五感で確認できないことによる。
しかし、仮に五感で確認できても、その力が人智をはるかに超えて巨大すぎるものは、やはり不安をもたらす。
地震・雷・洪水・暴風雨・飢饉などである。
素早いレスポンスは安心感をはぐくみ、信頼関係の構築につなげることができます。
会話の相手からフィードバックがない状態というのは、自分の発言の影響が確認できない状態です。
レスポンスの内容がネガティブであれ、ポジティブであれ、フィードバックがないよりは遥かに良いです。
類似性を表現する
類似性を表現する というのも 対人関係構築の際に重要となる点です。
対人魅力を引き上げるためには類似性が重要ですし、相違点ばかりが強調されてしまうと言葉が通じないようにすら思われてしまいます。
他の動物に対する態度を考えても、その生物への類似度が行動に与える影響は無視できません。
(魚は簡単に捌けますが、人にちかい霊長目はそうはいきません)
容姿や態度,能力や性格などの特性が他者と似ている度合いを類似性と呼ぶ。
類似性に関する先行研究においては,類似性が対人魅力を増加させること,逆に非類似性が対人関係において相補的に機能することなどが報告されてきた。
さらに,類似性-非類似性はすべての特性について同等の効果を持つものではなく,
社会的望ましさや重要度の高さなどの要因が加わることによって差が生じる。
類似性と好感度の関係を調べる研究は多く、そのほとんどが 「回答者の態度が自分の態度に近いほどその回答者に対して被験者は好意的な評価する」
という結論が出ます。
Byrne(1961)は,他者による回答結果だとされた質問紙を被験者に配り,その回答者に対する好意度を尋ねた。
ここで配られた解答用紙はまったく架空のものであった。
回答者の態度が自分の態度に近いほどその回答者に対して被験者は好意的な評価をしていた。
この「類似度」と「好感度」の正の相関にはどのような原理が働くのでしょうか?
Byrneの説明によると,類似性の欲求には,自己の態度の妥当性を保証することについてのイフェクタンス動機(effectance motive)が存在する。
ある者の態度が他者と類似していると,その者の態度に妥当性付与(consensual validation)が行われることになるため,人は態度の類似した他者に魅力を感じるのである。
ちなみに、趣味の類似度は6~7割の一致で好きになるという研究結果もある。
信頼関係構築:ラポール
心理療法で最初に行うべきことは「ラポールの形成」です。
ラポール形成の「ラポール」とは、フランス語で「架け橋」という意味です。
自分と他者との間に橋を架けるように信頼関係を築き、良好な人間関係を保つことを指して用いられます。
ただしラポール形成は、自分が相手を信頼したり、よい関係が築けていると感じたりするだけでなく、相手も同様に感じていなければなりません。
from https://www.m-keiei.jp/musashinocolumn/management/rapportformation
つまり、ラポール形成とは心理学用語における「信頼関係構築」という意味なのです。
ラポール形成の3つの原則
ラポール形成の際には3つのテクニックがあります。
- ミラーリング
- バックトラッキング(オウム返し)
- ラベリング
ミラーリング
ミラーリングとは、簡単に言えば相手の真似をするだけで簡単に相手の信頼を得ることができるというテクニックです。
ミラーリングとは、先述したように相手の警戒心を取り払い、安心感や親近感をつくり、無意識レベルで、深い信頼関係を築くコミュニケーション技法の一つです。
その技法を一言でお伝えすると、相手の動作や静止しているときの手足の位置、また呼吸などを、まさに鏡のように合わせていくというやり方です。
本人も気づかないほど、心がオープンになり、知らず知らずのうちに「この人なら、ここまで話してもいい」と感じてしまうような状態が生まれます。
from https://life-and-mind.com/nlp-mirroring-4657#i-2
あくまでもこのテクニックの目的は相手の信頼を得るためであり、情報を抜き出すテクニックではないことに留意しておいてください。
ここでまねるべき点は以下の通りです。
- しぐさ(相手が足を組んだら足を組む。同じ飲み物を飲んだら同じタイミングで飲む)
- ワードチョイス(相手が使った言葉で会話を行う)
- 会話のテンポ
とにかくありとあらゆる内容を、自分が対象者の鏡であるかのように真似してください!
そうすれば、相手との信頼関係が気づけるはずです。
バックトラッキング
バックトラッキングとは、別名オウム返しとも言われます。
「相手のしゃべった内容を、そのまま返す」というテクニックです。
簡単な例だと以下のような会話です。
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- 相手 :「この前、高校の同窓会に行ってきたんだよ」
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- あなた:「高校の同窓会に行ったんだ」
この場合は「高校の同窓会に行ってきた」という内容をそのまま返しています。
ちなみに、内容や相手が伝えたい内容であれば、少し言葉を変えても問題ありません。
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- 相手 :「この前、高校の同窓会に行ってきたんだよ」
-
- あなた:「高校の同窓会に行ったんだ」
要は、相手が伝えたいと思った内容を「こちら側にも伝わっているよ」ということを伝えてあげるのです。
「自分が伝えたかった内容が相手にちゃんと伝わっている」「この人はちゃんと話を聞いてくれる」と思わせることで信頼関係を結べます。
ラベリング
ここでは先ほどの二つの例と異なり、少し難易度が上がります。
ラベリングとは、個人のペルソナに対して「あだ名」みたいなものを貼り付けていく作業です。
信頼関係構築の際には、相手が望んでいる「ペルソナ」あるいは「なりたい姿」を的中させて、それにふさわしい「名前」を当てはめることで「この人なら自分をわかってくれる」と思ってもらうことができます。
ですが、このラベリングテクニックを使う際には二つの力が必要となります。
- 「相手が望んでいる姿」をズバリ的中させる観察力
- 失礼に当たらないふさわしい「あだ名」を充てる語彙力
この二つが必要不可欠です。
このラベリングテクニックを使用する前に、どのように成立しているか見てみましょう。
ラベリングの具体例
ラベリング理論は、社会が個人または特定のグループにラベルを割り当てると、彼らの行動に影響を与える可能性があることを示しています。
この理論は、社会学、犯罪学、および心理学に関連して、誰かを犯罪者としてレッテルを貼ることが悪い行為につながる可能性があることを示しています。
from https://study.com/learn/lesson/labeling-theory.html
「女の子なんだから、◯◯◯しなさい」
「男の子なんだから、◯◯◯でなければいけない」
この、性別で差を付ける(ジェンダー)も、実はラべリング効果の一種です。男の子に生まれたのだから、重い荷物を持てなければいけない、女の子に生まれたのだから殴り合いのケンカをしてはいけない……など、性別によって決めつける言動は、立派なラベルを貼る行為です。
from https://biz-shinri.com/dictionary/labeling
これらのようなラベリングテクニックは、話し手が一方的に無意識に使った「悪い例」です。
ラベリングをうまく使った例
そうではなく、傾聴において繊細にコントロールされたラベリングを使用することで、信頼関係の構築「ラポール形成」につなげることができます。
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- 相手 :「実は、仕事で失敗してしまったんだ。上司にも怒られたし、将来に不安を感じているんだ。」
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- あなた:「仕事で失敗して上司に怒られたんだね。将来に不安を感じる気持ちは分かるよ。問題を発見して改善したいんだね。」
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- 相手 :「そうなんだ。でも、このままじゃいけないと思っているんだ。何かアドバイスがあれば教えてほしい。」
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- あなた:「自分で解決しようとしている姿勢はさすがだね。問題を発見して、しかも解決しようとするのはすごいよ。そんなOOさんに対してできることは少ないかもだけど...是非詳しく聞かせてくれ!」
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- 相手 :「ありがとう!うれしいよ」
このように、ラベリングテクニックを用いることで、相手の感情や意見を的確に捉え、相手との共感を深め、信頼関係を築くことができます。
相手の話したい話題を振る
同僚を含めた仕事仲間と適切な関係が構築するためには、ある程度の「好感度、信頼関係」が必要になります。
本章でも紹介した通り、好感度を上げるためにはいくつか戦略があります。以下は「プロカウンセラーの聞く技術」より抜粋した好感度をがげるために必要な行動です。
- 自分のしたい話よりも、聞き手に回る
- 相手のほしいタイミングで適切な相槌を打つ
- 1対1であればオウム返しが有効
- 相手の話した「言葉」を違和感なくそのまま反復する技術
ですがエンジニアの好感度を上げるための最も効果的な方法があります。
それは 「相手の好きな話をする」
です。
例えば、女の子に自分の大好きなアニメの話をして自分の話を広げるよりも、その子が大好きなアイドルの話や食べ物の話のほうが以下の点でメリットがあります。
- 女の子が一方的にしゃべってくれる
- 適切なタイミングでうなづくことで、女の子が「自分のことをわかってくれる」と思ってくれる
仕事の話から逸れましたがエンジニア同士の会話でも基本的に同じです。
フロントエンドエンジニア相手に自分の得意なAIの領域の話をしてもなかなか好感度や信頼関係は向上しないです。
それよりも、「AIを扱うためのインターフェース」 の話であればフロントエンドエンジニアとの共通の話題ができ、うまくいけば一方的に話してくれます。
今回はいくつか話題の例を集めてみます。
iPhone15の話
話題を集めるには以下のサイトがおすすめです。
このニュースサイトではプログラミングやITを中心とした変なニュースが中心となって取り上げられています。
著者の編集時点で発売されたiPhon15の話なども、ここから広げるのもありでしょう。
Mac信者向け:Mac vs Windows の話
Mac過激派の話は基本的に裏切りません。
Macが大好きな人には「あえて」WindowsとMacの違いを振ってみるのもありです。
ベテランエンジニア:COBOL, FORTRAN
全日ネット銀行システムのダウンの際、COBOLがシステムに採用されていることが話題になりました。
このように古の技術が注目を浴びたときは、ベテランエンジニアと共通の話題を振るチャンスです。
若手エンジニアが想像もつかないような内容を話してくれるでしょう。