💻 CMCとは
CMC(Computer Mediated Communication)とは、その名前の通りコンピューターを通じたコミュニケーションスタイルのことです。
文字を通じたコミュニケーションであり、以下の特徴があります。
- 時間や場所にとらわれない非同期的な通信
- 相手の顔や性別、社会的地位や年齢など、社会的な手がかりが少ない ローコンテキスト なコミュニケーション
🏁 この記事の目的
ここでは、「自己開示(自分のことをどのように伝えるかというコンテキスト)」と「自己呈示(自分のことをどのように見せるかという演出)」
の二つに着目し、CMCのメリットデメリットを洗い出していく。
📃 結論
CMCは
- 「話しやすく」「雑談しやすく自己開示が可能で」「自己分析を促進する」メリットがある
エンジニア心理学
👍 CMCのメリット
CMCは(都合のいい点を?)「話しやすいメディア」
数多くの研究で、対面などのその他のコミュニケーション手法より、CMCが話しやすい という結果が出ている。
電子メールか、音声メッセージのいずれかでディスカッションを行う実験で、「自己紹介が済んでいる」という条件で電子メールの方が話しやすいという結果が得られた。
- メールはなぜ「話しやすい」のか? : CMC(Computer-Mediated Communication)における自己呈示効力感の上昇
- 大学生におけるメディア・コミュニケーションの心理的特性に関する分析 -対面,携帯電話,携帯メール,電子メール条件の比較-
伝達される情報量が最小のCMCが,オンラインであるかオフラインであるかにかかわらず,最も話しやすいと評価されたが,道具としての操作性に関しては,最も低く評定されたことを示している。
(中略)
つまり,情報濾過機能によって,CMCの当事者は,対面事態に比べて,相手から受ける対人圧力が弱まり,話しやすいと感じると解釈することもできる。
CMCが話しやすいという結果に至った原因として、以下が考えられる
- 視覚的匿名性が低いという特徴があるため、非言語的な内容にこだわる必要がなく会話の内容に集中できるという
- 非同期的なコミュニケーションであるため、時間をかけて編集することが可能
CMCは「自己開示しやすいメディア」 / 「雑談しやすいメディア」
CMCはありのままの自分を開示しやすい、「自己開示」 が発生しやすいメディアであるとも評価されている。
ジレンマを伴う議題について、CMC、FTF、ビデオ会議のいずれかの条件を設定した実験において、
CMC条件はFTF条件やビデオ会議に比べて、議題に関係のない自己開示が多く発生していることがわかった。
CMCは、「自己分析を進めやすいメディア」
CMCでの会話は、本当の自己に関する思考を活性化させる効果もある
Note
実験
「普段の自己」と普段は見せない「本当の自己」にまつわる性格特性を実験参加者にリストアップしてもらう
他の実験参加者とCMCまたは対面で会話を行った
そして、会話終了後、実験参加者はコンピューター上のキーを押して判断する課題に取り組んだが、
対面参加者に比べ、CMC参加者の方が本当の事故に関する単語への反応速度が短くなっていた
CMCでの会話が本当の事故に関する思考を活性化した結果、それに関する単語への反応速度が高まると考えられる。
そのほか
CMCでは
- 会話をした相手にも本当の自己が伝わりやすい
- 初対面の人と仲良くなりやすい
CMCでは親密的な関係を築きやすくなる理由
社会的手がかりが少ないCMCにおいて、対面状況よりも相手と親密な関係を築くことができる現象を、ワルサーは「ハイパーパーソナルモデル」として提唱した(1996)
CMCでは親密的な関係を築きやすくなる要因は以下の内容が考えられる。
- 相手に選択的な自己提示ができることにより、自分にとって望ましい自己像を示し、望ましくない自己像を隠すことができること
- 情報の欠如を、アイデンティティやステレオタイプを用いて理想化した形で埋めること
- 十分にメッセージの内容を吟味できること
👎 CMCのデメリット
賛否を伴う議論において、CMCが逸脱的(煽りなど)になる
自分や相手の居場所や組織での地位、性別や年齢などの属性や相手との関係性などの社会的文脈についての手がかりは、通常の会話においては影響を与える。
しかし、CMCにおいては、社会的手がかりが乏しい状況にあり、 焦点が事故に向きやすく逸脱的な行為が促進されるようになる
賛否を伴う議論において、CMCが逸脱的(煽る、強い口調など)になった ということを、実験的に示した研究もある。
Note
3名ずつで自分のキャリア選択について他者の同意を得る目的で集団討議を行うという実験。
対面で討議する条件(FTF)、チェット条件(同期的CMC)、メール条件(非同期的CMC)
を儲けたところ、CMC条件において、議論相手に向けた強い口調や煽るような表現が、多く出現していた
CMCは(都合の悪い点)嘘をつきやすい
CMCのメリット「自己開示しやすいメディア」と似ているが、以下のように捉えられる
- CMCは自分自身にとって都合の悪い点を隠しやすい
- CMCは都合のいい点を提示しやすい
コーンウェルとランドグレンは、恋愛関係を語り合うばにおける対面とCMCの比較調査を行なった。
その結果、年齢や身体的特徴に関しての詐称行動の発生率が、対面よりもCMCの方が発生率が高い傾向を見出している。
すなわち、CMCでは自分の魅力度に影響する内容で視覚的に隠すことが難しい点において、嘘をつきやすいことが示された
Note
また、別の実験では「焦点(自己/他者)」と「内容(肯定的/否定的)」を組み合わせた4つの自己提示状況を設置した。
恋人とのコミュニケーションにおいて、上記の焦点と内容を組み合わせた4つの状況(「自画自賛」「称賛」「懺悔」「非難」)を想像させた上で、
どんな連絡手段が(電話、留守番電話、手紙、電子メール)を望ましく感じる程度を評定させた。その結果、自分に非がある「懺悔」で、メディアを介したコミュニケーションがより好まれた。
この結果は男性において有意出会った。
CMCは「バイアスがかかりやすい」メディア
CMCでは、合意性の過大評価 や **確証バイアス(自分の予想に合う情報のみ注目すること)**が起きやすい。
Note
合意性の過大視についてクルーガーら(2005)は電子メールの送り手が「自己中心性バイアス(自分に都合が良い話を選択し解釈すること)」
に陥りやすいことを示している。
- 対面
- 音声のみ
- 電子メール
のいずれかで、4つの感情(「皮肉、真面目さ、怒り、悲しみ」)のうち一つを含むようにして伝え合った。
送り手は自分の感情がどれくらい受け手に伝わったかを予想し、受けてはどんな感情がメッセージに含まれるかを推測した。
いずれの条件においても、送り手の推測率よりも受け手の正答率の方が低い結果となったが、電子メールではその差分が大きかった。
? (対面:89% -> 73%)に対して、(CMC:89% -> 62%)
このことから、CMCでを通じてメッセージを発信する際は、その内容が独りよがりにならないように、対面や音声でのコミュニケーション以上に最新の注意を払う必要がある
(送り手が思っているよりも30%低く、メッセージが伝わらないこと!)