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元記事

TEMは人生のロードマップ

もうすぐ5月ですね。

4月が社会的にも区切りのある時期といえますが、会社によっては現場配属がぼちぼち始まる頃ですね。
エンジニアの皆さんも 新人エンジニアの面倒を見る「教育係」 に着任した人もいると思います。

そんななかで、 「どうしたら新人の子がスムーズに業務に入れるのだろうか?」
「プログラミングとかエンジニアリングは得意だけどコミュニケーションが苦手だなぁ」
と思っている人も多いと思います。

中には「新卒の子が何に困っているかわからない」という人もいると思います。

そこで、こんな資料を見つけました。

image.png

from https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjet/43/4/43_43057/_pdf

これは、TEMという、その人の人生の経験のプロセスを図示したものになります。

もともとは心理学から派生した手法ですが、自分自身でこのような図を描くことでカウンセリングにも役立ちます。

いわば、 TEMは人生のロードマップ といえなくもないですね。

これを使って、世の新人がどのように社会に適応していくか を確認していきましょう!

TEMとは

人はさまざまな社会文化的および歴史的文脈を生きています。
ですが、 TEMの世界では、「異なる人生や発達の径路を歩みながらも,類似の結果にたどり着く」 ことを示す等至性(Equifinality)を基本としており、
これらの類似性について研究する学問がTEMです。

from 安田裕子(2019)「TEA(複線径路等至性アプローチ)」サトウタツヤ・春日秀朗・神崎真実(編)『ワードマップ 質的研究法マッピング』新曜社(pp.16–22)

TEAには三つの基礎概念,すなわち,複線径路等至性モデリング(Trajectory Equifinality Modeling: TEM),歴史的構造化ご招待(Historically Structured Inviting: HSI),
発生の三層モデル(Three Layers of Genesis: TLMG)があります。
これらは,順に,経験のプロセス,広義のサンプリング,プロセスの重要な時点における人間と環境との相互作用を記述するために考案されています。

TEMは,類似した経験である等至点(Equifinality Point: EFP)に注目した場合,人がそこに行き着くプロセスは複数あると想定します

from https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjet/43/4/43_43057/_pdf

新人は何を考えているのか

image.png

上記のTEM図を確認すると、「自分にとって、仕事とは何か?」「仕事で大事にしたいことは何か?」を自覚するためには次の3つのプロセスが必須であることが分かった。

  • OOP1: 仕事の大変さ、難しさに直面する
    • 具体例: “2年目で出向と言われた時には,(中略)「戦力外なんですか?」みたいな(笑).(中略)最初の何か月かくらいは,やっぱりちょっと悩みました.”
    • 具体例:“フラストレーションもあって,(中略)転職活動とかもやっていた”
  • OOP2: 異動、配置がえによりさらに新しい環境に付く。
    • 新しい仕事に就いたことによって本来の強みが活かせることを再確認した事例。
      “会社の規模も今と全然違って500人くらいだったので.ちょっと,聞きに行くとか,誰に聴けばいいというのが,まあ,すぐわかったので.あの,(中略)着手が多分早かったと思うんですね”
  • OOP3: 一人で完結させなければならない重い仕事に就くが、予想外のトラブルに対処を追われる。
    • <やむを得ず,上司・先輩に仕事を代行してもらう>経路。“まだ全然自分ではできていないですけど(中略)なんとか,なんとか,したいなあと.”

上記の内容は新人たちの中で共通の課題であった。

image.png

これらのTEMを研究する中で、論文では以下の「力の動き」を見つけた。

中堅社員が等至点の<「自分にとって仕事とは何か」「仕事で大事にしたいこと」がはっきりする>に至る経路は前節の通りであったが,この経路において等至点から遠ざける動きとして,
社会的方向づけの【業績達成を求める組織風土】が経路に影響を与えていた.

一方で,等至点に向かう動きを促進するものとして,
社会的助成の【周囲の期待・要望】が経路に影響を与えていた.

新人にやるべきでないこと : 業績達成を求める

論文によると、今回の調査のターゲットとなった人物はいずれも【業績達成を求める組織風土】と対峙していた。

このカテゴリーは,以下の二つの概念ね構成されている。

  • 自分が担当する業務の<納期>
  • 上司・部下間や,組織メンバーの間で,目標達成を当然のものと考え,互いにそれを要望しあう<目標達成圧力>

しかし、新人にはこれらの項目【業績達成を求める組織風土】を求めすぎてはいけない

  • 例えば、【システム検証部門技術職男性】 は 【駆け出しの時期】において,上司や先輩から進捗の遅れについて叱責を受けながらも求められる成果を出せない中で,“納期も迫っている”ことを常に圧力として感じていた.
  • 例えば、【財務部門企画職女性】は複数業務を並行して遂行することを上司から強く要望されており,“それだけやっているわけでもないので,ま,目の前の,やらなきゃいけないことの,隙間を縫ってやっていて”と中堅社員として複雑で高度な業務を複数同時に遂行できなければ,自分に与えられた目標が達成できないと認識していた.

なぜ新人に「業績達成」を求めてはいけないのか

こうした組織風土の影響は,

  • 仕事の目的を考えず単純に目先の作業を済ませること
  • 安易に上司や先輩に仕事を任せて主体的な取り組みではなくなる

など、表面的な問題解決による仕事の完了に陥る恐れがあり,
研究協力者が仕事を通じて自分の仕事観・信念を吟味することに至る動きを阻害しようとしていた

新人に必要なのは【周囲の期待・要望】

このような社会的方向づけと拮抗し,研究協力者が自らの仕事観・信念を自覚する等至点に向かう動きを促進していたのが,社会的助成【周囲の期待・要望】であった。

  • 研究協力者自身が認識している 職場内の立場や等級に応じた<役割期待>
  • 日常業務を通じて示される <上司の指導・期待>
  • 同じ職場やプロジェクト内の<同僚支援>
  • 仕事を通じた<顧客期待・要望>

役割期待

役割期待とは、研究協力者自身が「あるべき/ありたい姿」として認識している企業人としてのありようのこと。
これらは、年度ごとの目標設定面談等で公式に提示されるもの だけでなく, 日常の業務指示や職場のメンバー間の会話を通じて暗黙裡に示されるもの も含まれる。

自分が認識した<役割期待>を行動の規範として受け入れ,自身がとるべき行動の基準としていた

"周辺の情報を含めて,無駄なくピックアップするということと,それを適切に分析できるようになること"

上司の指導・期待

日常業務における具体的な指示のほかに,各期において将来の成長や潜在的な能力の発揮を見込んでの期待 のこと。

“この1年の頑張りって重要だよね,と摺合せをしてきていて”

上司が部下について「こうあってほしい姿」を示すことであった

これは自らの経験であるが、上司が部下の方向性を示せないと会社に対する不信感を抱いてしまう。

顧客期待・要望

(顧客の要望に応えることを)“やっぱりやっていかないと,お客さんにも響かないというところもちょっとあった”

社内外の顧客の期待・要望に応えるためには,能動的に仕事に取り組み,トラブルや困難に向き合っていく必要性を認識させていた

さらに興味を持った人は

私はエンジニアでもありますが、心理学/脳科学に興味を持ち勉強しています。
以下のサイトはそのログであり、興味を持った方はぜひ見に来てください。

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