行動の実行はユーザーにとっては負担となってしまう。
物事を選択することでさえ、脳に精神的な負荷がかかってしまう。
だから、その選択をプロダクトが肩代わりすることでユーザーの行動はぐっと変えやすくなる。
ユーザーが選択の合意以外は何もしなくてもよいという画面を作れるのが理想だ。
この戦略は限られた場面でしか使えない代わりに、非常に強力な戦略だ。
デフォルト戦略
行動をデフォルトにするために、ユーザーに代わって実行する内容を見極める。
例えば、ウェブサイトやインストーラーの画面であれば、促したい行動を代わりに実行してもよいか確認する。
その際に、デフォルトで「OK」にチェックを付けておくのだ。
具体例 : 確定拠出型年金のデフォルト戦略
確定拠出型年金のデフォルト戦略。
ユーザーがやるべきことは最小に抑えられており、入社時に配られる書類にサインするだけだ。
これだけで、確定拠出年金に使われるお金が給料から自動で引かれ、退職金用の口座に渡される。
この事例におけるデフォルト戦略の効果は大きく、デフォルト戦略実装前に比べて加入者は2倍となった。
具体例2 : デジタルカメラの機能でデフォルト戦略
デジタルカメラの機能でデフォルト設定を取り入れた事例。
- デジタルカメラを高機能にすればするほど、設定項目が増えて初心者の操作ミスを誘発した。
- デジタルカメラを低機能にするほど、上級者からの支持を得られない。
なので、よく考えられたカメラは「初心者向けのデフォルト機能」「上級者向けの高機能な設定画面」の二つを用意している。
同様の現象はソフトウェアのインストール画面でも見られる。
ついでにする
ビタミンやミネラルを摂取してもらうのに最も効果的な方法について考える。
- 健康的なメリットを訴求する。
- 摂取量に応じてお金を払う。
- 有名人を起用してビタミンミネラルキャンペーンを行う
いろいろな選択肢があるが、最も手っ取り早いのが「本人が毎日食べているものに混ぜてしまう」ということだ。
具体例 : ヨード欠乏症
ヨード欠乏症とは、知的障害の主因であるが、予防可能な病気でもある。
このヨード欠乏症を予防するためには、ヨードを摂取することが一番だ。
加えて、ヨードを塩に添加するのには工数の増加が発生しない。
これらの要因から、ヨーロッパを中心として「塩にデフォルトでヨードを添加する」という案が打ち出された。
しかし、厳密には上記の策は失敗した。
「デフォルトでヨードを添加する」ということは、無添加の塩の選択肢がないに等しくなり、一部の人間の反発を招いたのだ。
デフォルトの戦略ではユーザーに選択肢が与えられない場合、反感を買う可能性が高い
いまでは、同意を得てヨードを添加した地域ではヨード欠乏症はめったに見られなくなった。