大前提
- Laravel の Eloquent リレーションを前提 とする。
- 原則として DB ビルダー は使わない。つまり、SQL クエリ(が想像できるコード)は書かない。
- たとえ DB ビルダーを使ったとしても as でテーブル名の省略しない(可読性優先)。
- Eloquent で Join 禁止。子テーブルの値を参照するならリレーション、検索判定するなら whereHas がある。
- 原則として select も書かない。
- select で絞るほど多数のカラムがあようなら、「横持ち」から「縦持ち」に設計しなおすべき。
ゆえに、生の SQL クエリ(DBビルダー含む)を書く前提である巷のベストプラクティスとは、真っ向から反する命名規則となる。
Eloquent 前提の命名規則
テーブル、カラム共通
- テーブル名、カラム名ともに小文字でスネークケース(foo_bar)
- ローマ字禁止。英語でがんばる。
- 省略語は禁止。
テーブル名
- テーブルは原則複数形。
- 複数単語の合成後の複数形に自信がないなら単数形(影で笑われる よりもマシ)
- 複数でも単数でも Eloquent モデルの
$table
は必ず書く。
- 複数でも単数でも Eloquent モデルの
- 接頭辞は原則つけない。
- 設計規模が大きすぎるときは接頭辞を検討する。例として:
- m_ :変更がすくないマスター系テーブル
- t_ :ユーザーによる変更される(トランザクション系)
- l_ :ログテーブル
カラム名
-
カラム名にはテーブル名を含めない。
-
product_name
やuser_name
ではなく、name
とする。 - リレーション前提なので
$product->name
が美しい。 - join は使わないし、原則 select も書かないので
name
を区別する必要はない。
-
- プライマリーは必ず
id
。 -
_id
は他テーブルへのリレーションキー。- 論理名が「なんとかID」であっても、物理名は
_key
や_code
、_no
等とする。 - DB レベルの外部キー制約は無理にふる必要はないが、インデックスはふる。
- 論理名が「なんとかID」であっても、物理名は
- Boolean 型は
is_
、has_
、use_
等(_flag
禁止) - Data 型は
_on
。 - Datetime 型は
_at
(Timestamp型は 2038 年問題があるので避ける)
原則は NOT NULL
- すべてのカラムは 原則 NOT NULL とする。
- nullable として良いのは……
- 必須ではないユニークカラム。
- text カラム(DEFAULT を持てないので)
- 初期値を持たない日付カラム。
- nullable でないなら、必ず DEFAULT を定義 する。
- 未定義の文字列なら ""、数値なら 0 を指定。
- カラムにより適切な初期値があるならそれ。
未入力という概念がある数値については、0 を表示しないという処理を laravel でできるので、DB 的には NOT NULL default 0
のほうが扱いやすい。0 を含めた入力値の平均を求めるなら nullable を検討する(想像できないけど)。
NULL を許可しない理由を一言でいうと「MySQL だから」。MySQL ドキュメント「8.4.1 データサイズの最適化」から……
可能な場合は、カラムを NOT NULL として宣言します。 それにより、インデックスを適切に使用し、各値が NULL であるかどうかをテストするためのオーバーヘッドがなくなることで、SQL の操作が速くなります。 カラムあたり 1 ビットでいくらかのストレージ領域も節約します。 テーブルで実際に NULL 値が必要な場合、それらを使用します。 単にすべてのカラムで NULL 値を許可するデフォルトの設定を避けます。
Oracle では空文字列を NULL として扱う ので、Oracle 起源のシステムは NULL が原則となっている。MySQL 開発者は Oracle マスターに引け目があるのか、右にならって NULL を並べてしまうのかもしれないが、デメリットしかない。「NULL撲滅委員会」で検索すると、その主張や論争を知ることができる。なお、PostgreSQL でも同様 のはず。
Laravel には、空文字列を NULL に置換するミドルウェア ConvertEmptyStringsToNull がデフォルトで組み込まれているので忘れずに削除する。……Laravel のマイグレーションのデフォルトは NOT NULL なのに、一貫性がないとないと感じるのは自分だけ?
なお、Quasar という Vue フレームワークを使ったとき、Quasar が空文字を NULL に置き換えていた。メンバーが API を半分使ってしまった後で気づき、大いに困った。
また、必ず default を定義 するのは、まずオブジェクトとしての空レコードを作成する……というコードが必要になる可能性もあるので。カラム指定がなくてもレコード作成が成功する 前提を保つ。
論理削除は使わない
- 論理削除を導入するとユニークを担保できない。
- 削除に見えるもものの多くはステータス変更である。
- 他テーブルとリレーションが発生する前のゴミレコードは物理削除してよい/したい。
- 証跡が必要なら audits ログで対応する。
マイグレーション
開発初期
- 開発初期はテーブルごとに新規作成マイグレーションを作成する。
- 開発中の構造修正もこの新規作成マイグレーションを書き直す。
- データシーダーを作成し、構造変更してもテストデータをリフレッシュできるようにする。
クライアント環境へのデプロイ後
-
php artisan schema:dump
でデータダンプを取得し、既存マイグレーションはdatabase/migrations_backup/
へ移動する(この作業はプロジェクトマネージャが実施) - 以後の構造修正は、修正単位ごとにテーブル更新のマイグレーションを作成し、1テーブル1マイグレーションにはこだわらない。
- マスターデータ内容に追加や修正が必要な場合は、データシーダーを更新するだけでなく、マイグレーション内に insert や update を記述する。
- ただし、
migrate:fresh --seed
したときはシーダーよりマイグレーションが先に走るので、insert が二重にならないような配慮が必要。
// migrate:refresh --seed ではないときに実行
if (!in_array('--seed', $_SERVER['argv'], true)) {
マイグレーションのルール
- default をつけ忘れない。
- すべてのカラムに comment を定義する。
- 同様にテーブルそのものにも comment を定義する。
- リレーションキーは id の型に合わせて unsignedBigInteger とし、インデックスをつける。
- timestamps() は使用せず、datetime で定義する。
- コンポジット(多対多対応の中間)テーブルは複合プライマリーを使う。
- ロードバランサーでクラスターを組んでいるとき、プライマリーではない複合ユニークキーでは更新エラーとなる。
- 複合プライマリーは逆引きには対応できないので、副キー側に独立したインデックスをふる。
Schema::create('users', function (Blueprint $table) {
$table->id();
$table->string('name')->commen('ユーザー名');
$table->string('email')->unique()->comment('メールアドレス');
$table->integer('company_id')->default(0)->index()->comment('会社');
$table->datetime('email_verified_at')->nullable()->comment('メール確認日時');
$table->string('password')->comment('パスワード');
$table->rememberToken()->comment('リメンバートークン');
$table->datetime('created_at')->nullable();
$table->datetime('updated_at')->nullable();
});
DB::statement("ALTER TABLE users COMMENT 'ユーザー';");
// コンポジットテーブル
Schema::create('project_user', function (Blueprint $table) {
$table->integer('project_id')->comment('プロジェクト');
$table->integer('user_id')->comment('ユーザー');
$table->primary(['project_id', 'user_id']); // 複合プライマリ
$table->index('user_id'); // 副キー側のインデックス
});
DB::statement("ALTER TABLE project_user COMMENT 'プロジェクト・ユーザー';");
ファクトリー
- モデルごとに必ずファクトリーを書く。
- ファクトリーは、テーブル(モデル)ごとに1レコードのダミーを定義するもので、そう難しく考えることはない。
- テーブル定義に DEFAULT が指定されているなら、ファクトリーは空でもレコード作成は成功する。
- それっぽい値がほしいカラムにだけ、faker や now()->subDays(rand(7, 30)) 等で値を定義すれば十分。
- ダミーを生成する faker の用法については、「faker チートシート」等で検索 する。
データシーダー
- シーダーは、関連(リレーション)する複数のテーブル(モデル)をまとめて、1つのシーダーとする。
例えば、5個の会社とそれに紐づくユーザーを5~20作成するシーダーは次のように書く。
create に与えた引数は、ファクトリーで定義したランダム値より優先する。
Company::factory()->count(5)->create()->each(function ($company) {
User::factory()->count(rand(5, 20))->create([
'company_id' => $company->id
]);
});
- または次のように書くこともできる。
$rows = [
['company_code' => 'test1'],
['company_code' => 'test2'],
['company_code' => 'test3'],
['company_code' => 'test4'],
['company_code' => 'test5'],
];
foreach ($rows as $row) {
$company = Company::factory()->create($row);
$max = rand(5, 20);
foreach ($i = 0; $i < $max; $i++);
User::factory()->create([
'company_id' => $company->id
]);
});
}
}
- 上記いずれの場合も、User モデルに ユニークカラム(例えば email) があった場合は注意が必要。ファクトリーの unique 指定は一度の ceate の中だけの制限なので、ループさせるとたちまち重複エラーとなる。ファクトリーに任せず、シーダー側でユニーク性を担保する工夫が必要となる。
Company::factory()->count(5)->create()->each(function ($company) {
User::factory()->count(rand(5, 20))->create([
'company_id' => $company->id,
'email' => uniqid() . '@example.com',
]);
});
[参照] マイグレーションで積み上げたテーブル構造を可視化するのは次の記事を参照。