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Eloquent 前提の MySQL データベース設計

Last updated at Posted at 2022-06-18

大前提

  • Laravel の Eloquent リレーションを前提 とする。
  • 原則として DB ビルダー は使わない。つまり、SQL クエリ(が想像できるコード)は書かない。
  • たとえ DB ビルダーを使ったとしても as でテーブル名の省略しない可読性優先)。
  • Eloquent で Join 禁止。子テーブルの値を参照するならリレーション、検索判定するなら whereHas がある。
  • 原則として select も書かない。
    • select で絞るほど多数のカラムがあようなら、「横持ち」から「縦持ち」に設計しなおすべき。

ゆえに、生の SQL クエリ(DBビルダー含む)を書く前提である巷のベストプラクティスとは、真っ向から反する命名規則となる。

Eloquent 前提の命名規則

テーブル、カラム共通

  • テーブル名、カラム名ともに小文字でスネークケース(foo_bar)
  • ローマ字禁止。英語でがんばる。
  • 省略語は禁止。

テーブル名

  • テーブルは原則複数形。
  • 複数単語の合成後の複数形に自信がないなら単数形(影で笑われる よりもマシ)
    • 複数でも単数でも Eloquent モデルの $table は必ず書く。
  • 接頭辞は原則つけない
  • 設計規模が大きすぎるときは接頭辞を検討する。例として:
    • m_ :変更がすくないマスター系テーブル
    • t_ :ユーザーによる変更される(トランザクション系)
    • l_ :ログテーブル

カラム名

  • カラム名にはテーブル名を含めない
    • product_nameuser_name ではなく、name とする。
    • リレーション前提なので $product->name が美しい。
    • join は使わないし、原則 select も書かないので name を区別する必要はない。
  • プライマリーは必ず id
  • _id は他テーブルへのリレーションキー。
    • 論理名が「なんとかID」であっても、物理名は _key_code_no 等とする。
    • DB レベルの外部キー制約は無理にふる必要はないが、インデックスはふる。
  • Boolean 型は is_has_use_等(_flag 禁止)
  • Data 型は _on
  • Datetime 型は _at(Timestamp型は 2038 年問題があるので避ける)

原則は NOT NULL

  • すべてのカラムは 原則 NOT NULL とする。
  • nullable として良いのは……
    • 必須ではないユニークカラム。
    • text カラム(DEFAULT を持てないので)
    • 初期値を持たない日付カラム。
  • nullable でないなら、必ず DEFAULT を定義 する。
    • 未定義の文字列なら ""、数値なら 0 を指定。
    • カラムにより適切な初期値があるならそれ。

未入力という概念がある数値については、0 を表示しないという処理を laravel でできるので、DB 的には NOT NULL default 0 のほうが扱いやすい。0 を含めた入力値の平均を求めるなら nullable を検討する(想像できないけど)。

NULL を許可しない理由を一言でいうと「MySQL だから」。MySQL ドキュメント「8.4.1 データサイズの最適化」から……

可能な場合は、カラムを NOT NULL として宣言します。 それにより、インデックスを適切に使用し、各値が NULL であるかどうかをテストするためのオーバーヘッドがなくなることで、SQL の操作が速くなります。 カラムあたり 1 ビットでいくらかのストレージ領域も節約します。 テーブルで実際に NULL 値が必要な場合、それらを使用します。 単にすべてのカラムで NULL 値を許可するデフォルトの設定を避けます。

Oracle では空文字列を NULL として扱う ので、Oracle 起源のシステムは NULL が原則となっている。MySQL 開発者は Oracle マスターに引け目があるのか、右にならって NULL を並べてしまうのかもしれないが、デメリットしかない。「NULL撲滅委員会」で検索すると、その主張や論争を知ることができる。なお、PostgreSQL でも同様 のはず。

Laravel には、空文字列を NULL に置換するミドルウェア ConvertEmptyStringsToNull がデフォルトで組み込まれているので忘れずに削除する。……Laravel のマイグレーションのデフォルトは NOT NULL なのに、一貫性がないとないと感じるのは自分だけ?

なお、Quasar という Vue フレームワークを使ったとき、Quasar が空文字を NULL に置き換えていた。メンバーが API を半分使ってしまった後で気づき、大いに困った。

また、必ず default を定義 するのは、まずオブジェクトとしての空レコードを作成する……というコードが必要になる可能性もあるので。カラム指定がなくてもレコード作成が成功する 前提を保つ。

論理削除は使わない

  • 論理削除を導入するとユニークを担保できない。
  • 削除に見えるもものの多くはステータス変更である。
  • 他テーブルとリレーションが発生する前のゴミレコードは物理削除してよい/したい。
  • 証跡が必要なら audits ログで対応する。

マイグレーション

開発初期

  • 開発初期はテーブルごとに新規作成マイグレーションを作成する。
  • 開発中の構造修正もこの新規作成マイグレーションを書き直す。
  • データシーダーを作成し、構造変更してもテストデータをリフレッシュできるようにする。

クライアント環境へのデプロイ後

  • php artisan schema:dump でデータダンプを取得し、既存マイグレーションは database/migrations_backup/ へ移動する(この作業はプロジェクトマネージャが実施)
  • 以後の構造修正は、修正単位ごとにテーブル更新のマイグレーションを作成し、1テーブル1マイグレーションにはこだわらない。
  • マスターデータ内容に追加や修正が必要な場合は、データシーダーを更新するだけでなく、マイグレーション内に insert や update を記述する。
  • ただし、migrate:fresh --seed したときはシーダーよりマイグレーションが先に走るので、insert が二重にならないような配慮が必要。
// migrate:refresh --seed ではないときに実行
if (!in_array('--seed', $_SERVER['argv'], true)) {

マイグレーションのルール

  • default をつけ忘れない。
  • すべてのカラムに comment を定義する。
  • 同様にテーブルそのものにも comment を定義する。
  • リレーションキーは id の型に合わせて unsignedBigInteger とし、インデックスをつける。
  • timestamps() は使用せず、datetime で定義する。
  • コンポジット(多対多対応の中間)テーブルは複合プライマリーを使う。
    • ロードバランサーでクラスターを組んでいるとき、プライマリーではない複合ユニークキーでは更新エラーとなる。
  • 複合プライマリーは逆引きには対応できないので、副キー側に独立したインデックスをふる。
Schema::create('users', function (Blueprint $table) {
    $table->id();
    $table->string('name')->commen('ユーザー名');
    $table->string('email')->unique()->comment('メールアドレス');
    $table->integer('company_id')->default(0)->index()->comment('会社');
    $table->datetime('email_verified_at')->nullable()->comment('メール確認日時');
    $table->string('password')->comment('パスワード');
    $table->rememberToken()->comment('リメンバートークン');
    $table->datetime('created_at')->nullable();
    $table->datetime('updated_at')->nullable();
});
DB::statement("ALTER TABLE users COMMENT 'ユーザー';");

// コンポジットテーブル
Schema::create('project_user', function (Blueprint $table) {
    $table->integer('project_id')->comment('プロジェクト');
    $table->integer('user_id')->comment('ユーザー');
    $table->primary(['project_id', 'user_id']);     // 複合プライマリ
    $table->index('user_id');                       // 副キー側のインデックス
});
DB::statement("ALTER TABLE project_user COMMENT 'プロジェクト・ユーザー';");

ファクトリー

  • モデルごとに必ずファクトリーを書く。
  • ファクトリーは、テーブル(モデル)ごとに1レコードのダミーを定義するもので、そう難しく考えることはない。
  • テーブル定義に DEFAULT が指定されているなら、ファクトリーは空でもレコード作成は成功する。
  • それっぽい値がほしいカラムにだけ、faker や now()->subDays(rand(7, 30)) 等で値を定義すれば十分。
  • ダミーを生成する faker の用法については、「faker チートシート」等で検索 する。

データシーダー

  • シーダーは、関連(リレーション)する複数のテーブル(モデル)をまとめて、1つのシーダーとする。
    例えば、5個の会社とそれに紐づくユーザーを5~20作成するシーダーは次のように書く。
    create に与えた引数は、ファクトリーで定義したランダム値より優先する。
Company::factory()->count(5)->create()->each(function ($company) {
   User::factory()->count(rand(5, 20))->create([
      'company_id' => $company->id
   ]);
});
  • または次のように書くこともできる。
$rows = [
    ['company_code' => 'test1'],
    ['company_code' => 'test2'],
    ['company_code' => 'test3'],
    ['company_code' => 'test4'],
    ['company_code' => 'test5'],
];
foreach ($rows as $row) {
   $company = Company::factory()->create($row);
   $max = rand(5, 20);
   foreach ($i = 0; $i < $max; $i++);
       User::factory()->create([
          'company_id' => $company->id
       ]);
    });
  }
}
  • 上記いずれの場合も、User モデルに ユニークカラム(例えば email) があった場合は注意が必要。ファクトリーの unique 指定は一度の ceate の中だけの制限なので、ループさせるとたちまち重複エラーとなる。ファクトリーに任せず、シーダー側でユニーク性を担保する工夫が必要となる。
Company::factory()->count(5)->create()->each(function ($company) {
   User::factory()->count(rand(5, 20))->create([
      'company_id' => $company->id,
      'email' => uniqid() . '@example.com',
   ]);
});

[参照] マイグレーションで積み上げたテーブル構造を可視化するのは次の記事を参照。

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