ORANGE pico とは
ORANGE pico は、ピコソフト株式会社が出している、電源 (USB 5V)・モニター (NTSC コンポジット信号)、キーボード (PS/2対応) を接続することでBASIC言語によるプログラミングができる小さなパソコンである。
ORANGE pico とシリアル通信
ORANGE pico は、シリアル通信 (UART) によりパソコンやその他のハードウェアとの連携ができる。
type A・type E・type S には、USBシリアル変換モジュール TTL-232R-3V3 との接続に適した6ピンの端子が用意されている。
このモジュールのシリアル通信側は、以下のピン配置になっている。
電源は5V、信号は3.3V (TTLレベル) である。
ケーブルの色 | 信号 |
---|---|
黒 | GND |
茶 | CTS (制御入力) |
赤 | VCC (5V電源出力) |
橙 | TXD (シリアルデータ出力) |
黄 | RXD (シリアルデータ入力) |
緑 | RTS (制御出力) |
とはいえ、このモジュールは執筆時点では秋月電子通商 (M-05840) で3,500円 (税込) と高価である。
そこで、より安価に同様の (端子を1本ずつ接続せず、6ピンを一気に挿すだけでできる) 通信ができる方法を探した。
シリアル通信の端子の仕様を確認する
ORANGE pico のシリアル通信用6ピン端子は、以下のピン配置になっている。
ピン番号 | 信号 |
---|---|
1 | GND |
2 | NC |
3 | 5V (電源入力) |
4 | RXD (データ入力) |
5 | TXD (データ出力) |
6 | NC |
TTL-232R-3V3 とはTXDとRXDが逆になっており、直結できる仕様になっている。
電源入力は三端子レギュレータの入力に接続されており、3.3Vではなく5Vを入力するのが妥当である。
一方、RXDとTXDはそれぞれマイコン (PIC32MX170F256B) のRA4とRB4に接続されている。
これらの端子は5Vトレラントではなく、絶対最大定格における入力電圧の最大は3.6V (VDD+0.3V) である。
よって、入出力電圧が5VのUSBシリアル変換モジュールを直結することはできない。
条件を満たす市販品
FTDI USBシリアル変換アダプター Rev.2 — スイッチサイエンス
このモジュールは、執筆時点で税込1,100円で販売されており、以下の条件を満たす。
- 5Vの電源を供給できる (3.3Vと切替可能)
- 通信の電圧は3.3V
- ORANGE pico に直結可能なピン配置
出力制御信号はRTSではなくDTRとなっているが、ORANGE pico では制御信号は接続されていないので関係ない。
実際に ORANGE pico type S に接続してみると、干渉せず接続することができた。
しかし、接続用のUSB端子が上に出ており、使いにくさを感じた。
直結できるモジュールの自作
今回は、以下の材料を用いて ORANGE pico への直結が可能なUSBシリアル変換モジュールを作製した。
名前 | 個数 | 秋月通販コード | 金額(税込、執筆時) |
---|---|---|---|
FT234X 超小型USBシリアル変換モジュール | 1 | M-08461 | 780円 |
両面スルーホールガラスコンポジット・ユニバーサル基板 Fタイプ | 1 | P-12731 | 15円 |
L型ピンソケット 1×6(6P) | 1 | C-03795 | 20円 |
スズメッキ線(0.6mm 10m) | 適量 | P-02220 | (330円) |
日本アルミット ヤニ入りハンダ こて先食われ対策 0.8mm 100g 鉛フリー | 適量 | T-12535 | (2,240円) |
基板上に、シリアル変換モジュールとピンソケットを以下のように配置し、配線した。
左が基板を上から見た図、右が基板を下から見た図である。
青色の線は、基板裏側での配線を表す。
これに基づいて実際に組み立てを行うと、以下のようになった。
ORANGE pico に接続すると、以下のようになった。
USBの接続が横になり、使いやすくなったように思える。
USBをパソコンに接続し、通信も行うことができた。
制御信号には対応していないが、ORANGE pico 側でも制御信号は接続されていないため、関係ない。
これで、1,000円以下という低価格で ORANGE pico に直結可能なUSBシリアル変換モジュールを作ることができた。
仕上げ
ここまでの製作で動くUSBシリアル変換モジュールを作ることができたが、ピンの役割が表記されておらず、使い方がわかりにくい。
そこで、テプラを用いてピンの役割を明示し、わかりやすくした。
今回は、TEPRA PRO SR-MK1 と、黒字に白文字、幅6mmのテープを用いた。
ラベルの印字内容を画像で作製した。
試した結果、今回の条件 (テープ幅6mm、TEPRA LINK 2 に画像を読み込んでそのまま印刷する) では幅71px、1端子あたりの高さ36px (360dpiでそれぞれ5mm、2.54mm相当) にするとちょうどいい大きさになることがわかった。
以下の写真のラベルは、左から幅57px (4mm相当)、71px (5mm相当)、85px (6mm相当) の画像を使用したものである。
ちょうどいい大きさのラベルの余計な部分を切り取り、ピンソケットに貼ると、以下のようになった。
テープの背景もピンソケットの色も黒なので、遠くから見れば境界が目立たず、いい感じになっている。
結論
小型のUSBシリアル変換モジュールと小さい基板、ピンソケットを用いて、比較的安価で ORANGE pico に直結可能なシリアル変換モジュールを作製することができた。
さらに、テプラを利用し、端子の役割をわかりやすくすることができた。