この記事の目的
近年さまざまな形態で提供される各Db2製品について、おおまかな特徴を整理していきます。
さまざまなDb2製品
Db2製品の種類を簡単に整理します。
Db2は様々な形態で提供され、2022年現在で利用可能なDb2製品としては大きく以下のものがあります。
(1) 従来型のオンプレミス版Db2
(2) DBaaS(PaaS)版Db2
(3) Dockerコンテナ版Db2
(4) Kubernetes対応版Db2
(5) Cloud Pak for Data上で稼働するDb2
この記事では、2022年6月現在の情報を元に、(1),(2)にあたる
- オンプレミス版Db2
- Db2 on Cloud
- Db2 Warehouse on Cloud
について、それぞれの特徴を簡単に整理していきます。
補足
- (1)(2)に絞る理由は、採用数、採用検討候補として挙がる頻度が高いためです。IaaS上で稼働するDb2も同様で、(1)に含みます。
- (3)は試用版の位置付けであり製品サポートは受けられないため本番稼働用途に採用できません。しかしDocker環境さえあれば無期限無課金で利用可能なもので、開発用途であれば便利です。
- (4)(5)は新しく登場した製品提供体系であり、こちらも今後利用検討が進むと思われますが、2022年6月時点の採用数と言う観点では(1)(2)の占める数が大きいため、今回は扱いません。
Db2製品の種類
Db2(※)には、以下の2種類があります。
- 主にオンライントランザクションのシステムで使われるRDBである、Db2
- 分析データウェアハウスである、 Db2 Warehouse
- Db2をベースに開発されたデータウェアハウス製品
- 大容量データの高速並列処理を得意とする列指向データベース(BLU)
(※)この記事では、Db2とはオープン系プラットフォーム用のRDB製品である Db2(旧称:Db2 for LUW) を指します。
Db2製品の提供形態
オンプレミス版はDb2のみを提供します(Db2 Warehouseのオンプレミス版は存在しません)。
DBaaS版としては、Db2を提供する「Db2 on Cloud」とDb2 Warehouseを提供する「Db2 Warehouse on Cloud」というサービスが存在します。
オンプレミス版、Db2 on Cloud、Db2 Warehouse on Cloudの各特徴は以下の通りです。
オンプレミス版Db2 | Db2 on Cloud | Db2 Warehouse on Cloud | |
---|---|---|---|
Db2(OLTP) | 〇 | 〇 | × |
Db2 Warehouse(OLAP) | × | × | 〇 |
サービスが提供されるPublic Cloud環境 | - | IBM Cloud | IBM Cloud AWS |
無償利用 (無期限) |
〇 Community Edition |
〇 Lite Edition |
× |
高可用性構成 | ◎ 自動再起動 HA/HADR構成可 |
◎ 自動再起動 HADR構成可 |
〇 自動再起動 災対としてDRバックアップ有 |
運用 | シェルスクリプト, OSコマンド |
Webコンソール, REST API |
Webコンソール, REST API |
実績 | ◎ | 〇 | 〇 |
上記のような特徴をふまえつつ、ニーズやシステムの形態に沿って選ぶことができます。
1. オンプレミス版Db2(従来型のDb2)
最も古くからある提供形態であり、最も多く使われています。
OS上に展開したインストーラから、Db2製品バイナリをインストールして利用するものです。
IA Linux, z/Linux, AIX , Windows 環境で利用可能です。
近年では、オンプレミスのサーバー上での稼働に加え、クラウド環境(IaaS) のVMwareやKVM、VSI上で稼働させる構成もかなり増えています。
クラウド環境では、仮にサーバー障害が発生した場合には別の場所にあるサーバーにフェイルオーバーを行う構成とすることもできるため、クラウド化によって耐障害性を高め、また災害対策も兼ねることができるというメリットもあります。
特に性能要件が厳しい場合に以下のような、さらなる高速化を実現するための構成を選択することもできます。
-
Database Partitioning Feature(DPF)
- データベースを区分化し、複数サーバーに配置するシェアード・ナッシング型の構成
- 表データはハッシングによって各DBパーティションに分散配置
- SQLやユーティリティーは、各区分で並列処理される
-
pureScale
- 複数のインスタンスで1つのデータベースを共有するシェアード・ディスク型の構成
- クライアントからの多数のデータアクセスを複数のDBサーバーで並行して処理することで同時実行性を高めたアーキテクチャーのデータベース・サーバー群
- いずれかノードでハードウェア障害が発生した場合も、他ノードのDb2インスタンスに接続しているアプリケーションは処理を継続可能
なお、オンプレミス版の提供はDb2のみで、Db2 Warehouse の提供はありません。
2. Db2 on Cloud
Db2 on Cloud は DBaaSとして提供されるDb2で、インストールも必要なく、利用申し込みしたその日から利用開始できます。
例えば新しい機能をとりあえず試したいようなときには無料または低価格のプランで手軽に利用可能ですし、使い勝手がよくそのまま利用したいとなったときには長期契約でサービス・インスタンスを予約し、料金の割引を受けることもできるなど、柔軟性が最大の魅力です。
3. Db2 Warehouse on Cloud(略称:Db2WoC)
Db2 Warehouse on Cloud は、DBaaSとして提供される Db2 Warehouse です。
手軽に利用開始できる点や、接続方法や、運用インターフェースは Db2 on Cloud と同じです。
分析用途のワークロードに最適化されたデータベースエンジンで構成され、様々なデータ分析処理、BIレポーティングなどに強みを発揮する Db2 Warehouseを、フルマネージドのクラウド・データウェアハウスとして利用可能です。
構成も柔軟に選択することができます。
お試し用途であれば1ノードでシンプルに。
大容量データでは複数ノードにデータを分散配置する並列アーキテクチャを選択し、
さらなる高速化を図ることができます。
Db2 Warehouse は、オンプレミス版Db2でも利用可能な Database Partitioning Feature(DPF)構成をベースとし、列指向表を活用することで大量データの並列高速処理を実現するものです。
参考情報
以上です。