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新卒SAPコンサルのリアル

Last updated at Posted at 2022-12-11

この記事はSAP Advent Calendar 2022の12月12日分の記事として執筆しています。

はじめに

世の中には2種類の人間が存在します。
SAPのProfessionalと、それ以外です。

私、「それ以外」の meow (みゃお)と申します。
某コンサルティングファームに所属している、新卒1年目のしがない猫です。SAPという強力なソリューションを武器に、Valueを発揮しようと日々奮闘中です。
新人とはいえ、SAPを活用した職業(Profession)に従事している以上、いつまでも「それ以外」に安住していてはなりません。「SAPのProfessionalです」と言える日を目指し、日々邁進しています。

さて、昨今はインターネットを介してSAPに関する様々な知見が共有されています。しかし、若手、特に新卒の目線で書かれたものは少なく、「1年目って何をするの?」「SAPってどうやって勉強したらいいの?」といった情報は入手しづらいと感じています。

そこで、この記事では、僭越ながら私が1年目の経験を踏まえて以下の3点をお伝えします。
・1年目に何をしたか
・おすすめの学習方法
・(Appendix) 1年目の反省

対象者

・夢見る就活生/内定者
・希望に満ちた新社会人
・あなた

1年目にやったこと

SAPに関係する分野を中心に、4つ挙げました。各分野の概要と、そこから学んだTipsを記しています。キャリアの形成は千差万別ですが、1年目のイメージの一助となれば幸いです。

FI/CO(財務会計/管理会計)

SAPは業務領域ごとに機能群に分かれており、これを「モジュール」と呼びます。SAPという巨大なシステムを構成する部品のようなものだとイメージしていただければ良いです。

  • 概要

私のSAPキャリアは、FI/CO(財務会計/管理会計)の研修からスタートしました。SD/MM(販売管理/調達・在庫管理)も選択肢として存在しましたが、簿記の学習経験を活かしたいという思いからFI/COを選択しました。

  • Tips

【モジュール間の連携を意識する】
SAPは様々なモジュールに分かれていますが、各モジュールは完全に分断されているわけではなく、相互に連携しています。そして、連携の部分を理解することは、SAP、ひいては業務プロセスの俯瞰的な理解に繋がります。
例えば、FIと並行してSD/MMを学ぶことで、FIのサブモジュール(モジュールを機能毎に分解したもの)であるFI-AR/FI-AP(債権管理/債務管理)を理解しやすくなります。

ABAP

  • 概要

SAP専用のプログラミング言語である、ABAPの研修を受講しました。
学生時代に競技プログラミングや研究活動の中で少しだけPythonを書いていたこともあり、プログラミングへの苦手意識はありませんでしたが、ABAP特有の概念には少々苦戦しました。

  • Tips

【エラー対処の勘所を掴む】
SAPを操作していると、様々なエラーに出会います。些細な設定を変更することで解決できる場合も多いですが、時には開発の領域に立ち入る必要が出てきます。すなわち、開発の案件に携わらずとも、エラー対処のために開発の理解は求められるのです。
ABAPでの開発を経験することで、SAPがどのように動いているかを垣間見ることができます。我々が意識せずとも、裏では数多のプログラムが実行され、幾多のテーブルにデータが格納されていることが実感されます。この感覚は、エラーに対抗する強力な武器となると共に、【モジュール間の連携を意識する】と同様にSAPの俯瞰的な理解に繋がります。

Basis

  • 概要(+余談)

研修を終え、記念すべき初めてのアサインが決まりました。ここでは、Basisという初めて学ぶ分野を迅速に理解し、業務を遂行することが求められました。あえてBasisを一言で表現するのであれば「基盤領域」でしょうか。サーバやネットワークといったIT基盤に関する知識に加え、ユーザアカウントの管理や不具合修正プログラムの適用など、幅広い知識が必要です。

短い期間ではありましたが、Basis特有の「テクニカル」な雰囲気は個人的に結構好きでした。YouTubeで自作PCやガジェット紹介の動画が好きな方、Basis適正あるかもしれません。
余談ですが、とモヤシ さんの動画は全体的にセンスの良さが際立っていて私は好きです。

  • Tips

【英語でのリサーチに慣れる】
実務に取り組むようになると、日本語の情報が見つからず、英語でのリサーチが必要な場合が多々あります。実際、私はBasis業務を担当する中で、SAP公式ドキュメントを読む(英語)→社内で有識者に相談する(日本語)→SAP公式サポートに問い合わせる(英語)といった流れを繰り返しました。
昨今は翻訳サービスが豊富に存在しますが、情報の機密性保持の観点から使えない場合もあります。使用できるとしても、英語に対峙する度に翻訳サービスを使っていたら相応の時間がかかります。
Globalな社会人になる良い機会だと思って、英語、特にリーディングに対する抵抗感は早めに払拭しておくことをお勧めします。

プロセスマイニング

  • 概要

SAPに限らず、企業が利用するシステムには日々の業務データが蓄積されています。これを用いて業務プロセスの可視化・分析を行い、得られた示唆を業務プロセス改善に活用する手法をプロセスマイニングと呼びます。プロセスマイニングのツールはいくつか存在し、代表的なものにCelonisが挙げられます。

プロセスマイニングのイメージを掴むため、ECサイトでのショッピングを例に考えてみましょう。最も標準的なプロセスとして、以下のようなプロセスが考えられます。

[Start] ECサイトにアクセス → キーワードで検索 → 検索結果から気になる商品を探す → 商品ページにアクセス → カートに入れる → カートを確認する → 注文確定 → 発送 → 配送 → 商品の受取 [End]

しかし、実際には標準的なプロセスに沿わないパターンも発生していることでしょう。こうした標準から逸脱しているプロセスの存在が、プロセスマイニングによって可視化されます。例えば以下のようなパターンです。

・カートを確認した後、カートから商品を削除してプロセスが終了している
注文確定の目前で失注しているパターンです。このパターンに限定するフィルターをかけた上で定量的な分析を実施することで、失注原因の仮説を立てることが出来ます。仮に11月上旬/中旬の失注が突出して多いとなれば、(少々安直ではありますが)ブラックフライデーの事前PRが関係しているのではないか、といったことが考えられます。

実務においては、複数の分析観点を組み合わせることで、既存プロセスの奥深くに眠る示唆を導き出すことが求められます。まさにプロセス「マイニング(採掘)」の名の如く、というわけです。

  • Tips

【標準テーブルの理解】
例えば、得意先から発注を受けたらSDモジュールで受注伝票を登録します。「伝票」というと一枚の紙をイメージしがちですが、SAPでは10個以上のテーブルが連携することで受注伝票の機能を実現しています。プロセスマイニングでは、「受注伝票の登録」という一つの行動(アクティビティ)の定義だけでも、関連する複数のテーブルに関する深い理解が活用されています。
プロセスマイニングに携わらずとも、各テーブルがどのような構造になっているか知ることで各伝票に存在する数多の設定項目が理解しやすくなります。最初は難しく思われるかもしれませんが、SAPの操作に慣れてきた頃にテーブルの存在を思い出していただけると、新たな視点でSAPを見つめることが出来るようになるかと思います。

おすすめの学習方法

苦慮の末、4つまで厳選しました。
あくまで私の1年間の経験に基づく「俺が考えた最強の学習プラン」です。私はこれに沿って学んだわけではなく、入社してから必死に追いつきました。皆様には計画的な学習をお勧めいたします。
私は本で一通り全体感を掴むのが好きなタイプなので、書籍を推し気味です。

世界一わかりやすいSAPの教科書

対象:面接が不安な就活生
目的:就活でSAPについて自分の言葉で説明できるようになる
SAPコンサルブログと同じ方が執筆された本です。
何もわからない状態からのスタートでも挫折しづらい、平易な表現でまとめられた1冊です。

よくわかる最新SAPの導入と運用

対象:卒論/修論と戦う内定者
目的:個別論点の学習の前準備として全体感を掴む
こちらも有名な書籍ですが、1冊目というよりは2冊目に最適な本だと思っています。研究活動の息抜きに読むと気分転換になりそうです。
絶対に挫折しないという強い意志がある方はこちらから入ってもよいと思います。

SAPコンサルブログ

対象:卒論/修論が落ち着いた頃の内定者・入社間もない新社会人
目的:トランザクションの粒度でSAPを学ぶ
様々な素晴らしいブログにお世話になっていますが、1つだけ挙げるとしたらこちらかなと思います。
書籍で得た全体感をベースに、一つ一つのトランザクションを理解していきます。「トランザクション」というのは、一言でいえば「機能」です。「受注伝票の登録」や「購買発注の登録」など、機能ごとに理解していくイメージです。

ABAPやBasisなど、技術寄りの内容になってくると以下の2つが強い印象があります。
Biz.Online
ITコン猿の備忘録

実機操作

対象:SAPを操作する環境が整った新社会人
目的:操作やエラー対処に慣れる
決して忘れてはならないのが、学んだ知識をもとに実際にSAPを操作するプロセスです。受験勉強において、公式を覚えるだけでは数学の問題は解けません。スポーツにおいて、ルールを覚えるだけでは試合で活躍できません。SAPも同様に、実際に操作して試行錯誤する経験が不可欠です。

Appendix: 1年目の反省

社会人1年目を経て学んだ個人的な反省を2点ご紹介します。
SAPとかコンサルとか、そういった枠組みに限らない「新卒あるある」だと思います。

無知を認めて早めに相談する

課題に直面した時、まずは自分で試行錯誤してみるべきですが、数時間孤独に悩み続けることは基本的に良い結果をもたらしません。特にリモート環境下だと気軽に相談しづらく陥りがちです。30分など制限時間を決めて、時間内に糸口が見つからなければ迅速に相談すべきです。
理由は2点あります。1点目は、プロジェクトマネージャが進捗を適切に認知し、プロジェクトのスケジュールを調整するためです。そして2点目が特にお伝えしたい部分なのですが、タスクを孤独に抱え続けると無力感に苛まれてそこそこしんどいです。「新卒」という最強カードを使える内にたくさん甘えておきましょう。勿論、先輩や上長に相談する際は、丸投げではなく自分なりに仮説を持った上で伺うことが肝要です。

こまめにレビューを貰って成果物イメージを合わせる

自分では100点の完成品だと思ってレビューに出した資料が、上長のレビューを経て無に帰すことがあります。これは意地悪をしているわけではなく、成果物イメージにズレがあることが問題です。ラーメン二郎に行って美味しいうどんが出てきたらどうでしょうか。アフタヌーンティーに行って素敵なホールケーキが出てきたらどうでしょうか。「違う、そうじゃない」となります。そういうことです。
これを防ぐためには、実際に資料作成に取り組む前に綿密に成果物イメージを擦り合わせておくことが必要です。例えばスライド資料の作成を依頼されたとして、全体のアウトライン、各スライドのリード文など、大きな枠組みを確定させることがまず必要です。加えて、いわゆる「Quick & Dirty」のマインドを意識してみてください。

あとがき

1年目の日々は膨大なインプットの連続でした。充実した研修環境を享受できたことにとても感謝しています。今後はアウトプットにもチャレンジしようと考えています。そしてその第一歩が、この記事の執筆となりました。
偉そうなことを沢山書きましたが、私とて全て出来ていたわけではありません。むしろ、出来なかったからこそ自戒の念を込めて書いています。

この記事が、これからSAPという広大な世界へ漕ぎ出す皆様の一助となれば幸いです。

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