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IEEE S&P 2025 参加レポート:ユーザブルセキュリティに関する研究成果のポスター発表を行いました

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はじめに

2025年5月12日から15日にかけて、サンフランシスコで開催されたIEEE Symposium on Security and Privacy 2025(IEEE S&P 2025)に参加してきました。本記事では、現地で感じた学会の様子やポスター発表について報告します。

IEEE S&P 2025 概要

IEEE S&Pは、セキュリティ分野の4大会議(IEEE S&P, ACM CCS, USENIX Security, NDSS)の一つとして位置づけられる国際会議です。本年は第46回目の開催となり、約650名の研究者・技術者が参加しました。

  • 日程: 2025年5月12日〜15日
  • 会場:Hyatt Regency San Francisco
  • 採択論文数: 256件
  • ポスター採択数: 24件
  • 投稿総数: 1,740件(過去最多)

特筆すべきは、Machine Learning and Computer Securityカテゴリの投稿数が400件を超えて最多であったことです。AI/MLセキュリティ分野への関心の高まりが強く感じられました。

学会の様子

発表形式の変化について

昨年度から導入された新しい発表形式が継続されました。

  • 口頭発表: 8分間のスライド発表(質疑なし)
  • ポスターセッション: 発表後の著者がポスター前で質疑対応

1セッションの90分のうち、およそ8件の発表が続けて行われ、残り時間でポスターセッションが実施されました。従来の形式と比べて口頭発表の情報量は減少したものの、著者との直接的なコンタクトが取りやすくなり、活発な議論が生まれていました。

会場の発表の様子

研究のトレンド

投稿数に占める最多カテゴリにもなっている通り、特にLLMに関わる攻撃・防御手法の研究が目立ちました。また、LLMを活用した研究手法の提案も多く見られました。

そのほか、暗号理論やハードウェアセキュリティだけでなく、ブロックチェーン、人間中心のセキュリティ・プライバシ、モバイルセキュリティなど、多様な研究分野における発表が行われました。

基調講演では、学術コミュニティで注目される課題と実社会のセキュリティ課題との乖離について問題提起がありました。企業の研究者として、実社会で真に役立つ研究に取り組む重要性を改めて認識しました。

ポスター発表について

発表内容

暗号ライブラリのユーザビリティに関する研究成果について「What Are Usability Considerations in Developing Advanced Cryptographic Libraries?」というタイトルでポスター発表を行いました。

ポスター発表の様子

本研究は、東邦大学の金岡研究室との共同研究であり、暗号ライブラリの中でも属性ベース暗号や検索可能暗号などの高機能暗号のライブラリにおいて、誤用によるセキュリティ事故の防止に焦点を当てています。ポスター発表では、属性ベース暗号のライブラリ開発者へのインタビュー分析を通じて得られた課題や考慮事項について報告しました。

発表の反響

2時間のポスターセッションの中でほとんど途切れることなく聴講者が訪れ、暗号の研究者からソフトウェア技術者まで様々なバックグラウンドを持つ方々と議論を行いました。

特に印象的だったのは、同じく暗号ライブラリのユーザビリティの研究を手がけるユーザブルセキュリティ分野のトップ研究者との議論です。研究テーマの重要性について共感を得られ、大きなモチベーション向上につながりました。

余談:完全自動運転タクシー Waymo

学会参加の合間に、Googleから分社化したWaymoの完全自動運転タクシーを体験しました。

路上駐車や電動スクーター利用者が多いサンフランシスコの複雑な交通環境でも、自信に満ちたハンドリングで難なく目的地へ向かう様子に驚かされました。車内のモニターには、リアルタイムで認識された車両や歩行者が表示され、技術の進歩を実感しました。

WaymoのWebサイトには人間のドライバーと比較して事故率が低いというデータが示されており、大変興味深いです。現在東京でのサービス開始に向けて試験運転中とのことです。

まとめ

今回、IEEE S&P 2025に参加し

  • AI/MLセキュリティ分野の急速な発展
  • 実社会課題への応用を意識した研究の重要性
  • 国際的な研究コミュニティとの連携の価値

を実感できました。企業の研究者として、学術的な厳密性と実用性のバランスを取りながら、社会に貢献できる研究を続けていきたいと思います。


※ 本記事は個人の見解であり、所属組織の公式見解ではありません。

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