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シャープポケットコンピュータ PC-1262内部解析

Last updated at Posted at 2019-01-07

PC-1262 内部解析

はじめに

本稿はシャープ ポケットコンピュータ PC-1262のアーキテクチャに関して書籍およびWEBから収集した情報を整理したものに、筆者の独自解析結果を一部加えたものである。
2019年現在において失われつつあるこれらの情報を再度集積し、保管することを目的として作成した。

ROMバージョンについて

参考文献[1]によればPC-1260/PC-1261/PC-1262には3種類のROMバージョンがあり,アドレス\$F200の値によって判別することができる。

\$F200の値 備考
\$C3
\$22
\$54 最後期型?PC-1262が該当

筆者の手元にある実機が(\$F200)==\$54のPC-1262のみであるため,他のバージョンについての検証を行っていない。ただしPC-1262がPC-1261よりも後に出た価格改定版という経緯から考え,PC-1262であればROMバージョン\$54であることがほぼ確実と思われる。

参考文献[2]によればHELP機能のNEXTの使用例がFOTとなっているバージョンが存在するようである。\$C3が該当バージョンではないかと想像するものの確認できていない。参考までに\$54のNEXTのオンラインHELPを示す。

NEXTのHELP
FOR N=1 TO 5
NEXT N

メモリマップ

アドレス空間

よく知られたことだがPC-1262のCPU ESR-H(SC61860)にはプログラムカウンタがアクセスできる通常のRAM・ROMのアドレス空間64KBと内部RAM 96バイトの二つのアドレス空間がある。周辺デバイスのうちLCDのVRAMのみが通常アドレス空間にマップされ,その他が内部RAMにマップされている。

RAM・ROMメモリマップ

バージョン(\$F200)==\$54

アドレス 内容
0000~1FFF 内部ROM (8KB)
2000~20BF VRAM (DISP1)
2800~28BF VRAM (DISP2)
3000~20BF VRAM (DISP1 image)
3800~38BF VRAM (DISP2 image)
4000 (RAM先頭)
4080~64FF フリーエリア
6500~65CF 固定変数エリア
65D0~65FF リザーブ・エリア
6650~667F プリント・バッファ
66DB~66DD CALL文用ジャンプポインタ
66E1~66E2 BASICプログラム先頭アドレス・ポインタ
66E3~66E4 BASICプログラム終了アドレス・ポインタ
66F7 ストリングバッファ・ポインタ
66FC~66FD 変数ポインタ
6760~67AF ストリングバッファ・エリア
67FF (RAM末尾)
6800~7FFF (未実装)
8000~8044 ジャンプテーブル(IOCS?)
8045~8391 フォント
A43B~A6B1 中間コードテーブル?
~FFFF (ROM)

内部RAM

機種違いだが,参考文献[3]がわかりやすい。アドレス\$4~\$7の外部RAMポインタを参考文献[1]などでX,Yとしているが,システム・サブルーチンの使用する演算レジスタX,Yとの混同を避けるため本稿ではIX,IYと呼称する。

アドレス 内容
0 I カウンタ
1 J カウンタ
2 A アキュムレータ
3 B アキュムレータ
4~5 IX 読み込み用 外部RAMポインタ
6~7 IY 書き込み用 外部RAMポインタ
8 K 汎用レジスタ
9 L 汎用レジスタ
A M 汎用レジスタ
B N 汎用レジスタ
C~F 汎用RAM
10~17 演算レジスタX
18~1F 演算レジスタY
20~27 演算レジスタZ
28~2F 演算レジスタW
3A~3D 行番号サーチの結果
~5B スタック
5C IA I/Oポートレジスタ
5D IB I/Oポートレジスタ
5E FO I/Oポートレジスタ
5F OUTC コントロールポートレジスタ

システム・サブルーチン

システム・サブルーチン一覧

参考文献[1]より

機能 (\$F200)
==\$C3
\$22 \$54
印字ルーチンへ入る 0975 0975 0975
印字ルーチンを抜ける 097F 097F 097F
(印字)データセット 9E3A A09C A282
(2変数)加算 860F 87CA 88AE
(2変数)減算 8626 87E1 88C5
(2変数)乗算 8630 87EB 88CF
(2変数)除算 863A 87F5 88D9
(2変数)べき乗算 8643 87FE 88E2
(1変数)EXP 8659 8814 88F8
(1変数)SIN 8667 8822 8906
(1変数)COS 866E 8829 890D
(1変数)TAN 8675 8830 8914
(1変数)ASN 867C 8837 891B
(1変数)ACS 8683 883E 8922
(1変数)ATN 868A 8845 8929
(1変数)DEG 8698 8853 8937
(1変数)DMS 869F 885A 893E
(1変数)ABS 8C52 8E26 8F0D
(1変数)INT 8C2E 8E02 8EE9
(1変数)SGN 86AD 8868 894C
(1変数)RND 86A6 8861 8945
(1変数)SQR 8660 881B 88FF
(1変数)LOG 8652 880D 88F1
(1変数)LN 864A 8805 88E9
ASC 87B0 8984 8A68
CHR\$ 87CF 89A3 8A87
STR\$ 882C 8A00 8AE4
VAL 888A 8A5E 8B42
(比較・数値)<> 87A1 8975 8A59
(比較・数値)< 872E 88EE 89D2
(比較・数値)> 8749 891D 8A01
(比較・数値)= 878D 8961 8A45
(比較・数値)≦ 86CC 8887 896B
(比較・数値)≧ 86D9 8894 8978
(比較・文字)<> 879C 8970 8A54
(比較・文字)< 86E1 889C 8980
(比較・文字)> 86E3 889E 8982
(比較・文字)= 8751 8925 8A09
(比較・文字)≦ 8770 897E 8A62
(比較・文字)≧ 86C7 8882 8966
表示ON 043B 043B 043B
表示OFF 0437 0437 0437
全画面表示 CB0B CE2E D0F3
プリントバッファクリア 1B2F 1B2F 1B2F
キースキャン 03C1 03C1 03C1
10進→2進変換 負号あり 13D2 13D2 13D2
10進→2進変換 負号なし 13DD 13DD 13DD
2進→10進変換 負号あり 10E7 10E7 10E7
2進→10進変換 負号なし 10E0 10E0 10E0
行番号 サーチ 2進表現 B411 B6DB B8ED
変数のアドレスサーチ
単純変数
1865 1865 1865
変数のアドレスサーチ
配列変数
157A 157A 157A

参考文献[1]にないもの

仮称 機能 (\$F200)==\$54
_MOVE_IY_BA レジスタBAをIYにコピー 0222
_MOVE_IX_BA レジスタBAをIXにコピー 0225
_LOAD_IX_FONT フォントアドレスをIXにセット 135F
_PRINT 全画面表示 800F

全般的にJ=1を前提とした処理があるので注意。

システム・サブルーチン詳細

_PRINT

アドレス

\$800F

機能

全画面表示

入力

\$6650~\$667F (プリント・バッファ)

出力

\$2000~\$203B,\$2040~\$207B,\$2800~\$283B,\$2840~\$287B (VRAM)

破壊

少なくともA,B,P,Q,I,IX,IY,K,L,DP

前提

J=1,M=?

解説

プリント・バッファに書き込まれた文字列を画面表示する。参考文献[1]に記載の\$D0F3ではうまくいかない。(以下のサンプルコードの20行目をCALL &D0F3とすることで確認できる)

\$D225からのルーチンで内部RAM \$0A(レジスタM)と表示文字が一致した場合に何らかの処理を行っているが,内容を追い切れていない。M=0としておくのが無難と思われる。

サンプルコード
_PRINT.BAS
10:FOR I=0 to 47: POKE (&D6650+I),(&41+I): NEXT I
20:CALL &800F: CALL &043B
30:FOR I=0 TO 500: NEXT I
備考

解析の便のため,調査した呼び出し順序を以下に示す。

\$800F → \$D1D4 (BA=\$2000,\$2080,\$2040,\$2840を順次セット) → \$D205 (VRAMへの書き込み,DXL/IYSを5回繰り返す) → \$D225 → \$135F ( _LOAD_IX_FONT )

_LOAD_IX_FONT

アドレス

\$135F

機能

フォントアドレスをIXにセット

入力

A

出力

IX

破壊

P,Q,I

前提

J=1

解説

アキュムレータAの内容を文字コードとしてフォントアドレスを計算し,IXに格納する。文字コード\$20~に対応するフォントが\$8045~にある。

_MOVE_IY_BA

アドレス

\$0222

機能

アキュムレータBAをIYにコピー

入力

BA

出力

IY

破壊

P,Q,I

前提

J=1

実装
LP  $06
LIQ $02
MVB
解説

アキュムレータBAの値を書き込み用外部RAMポインタIYに代入するマクロ。J=1でなければ正常動作しないはずなので注意。本ルーチンを引数固定で呼び出すルーチンがいくつかあるので,下表に示す。

アドレス 機能
\$0242 IY=BA-1
\$023E BA=\$67B0,IY=\$67B0-1
\$0246 BA=\$2080,IY=\$2080-1

_MOVE_IX_BA

アドレス

\$0225

機能

アキュムレータBAをIXにコピー

入力

BA

出力

IX

破壊

P,Q,I

前提

J=1

実装
LP  $04
LIQ $02
MVB
解説

アキュムレータBAの値を読み込み用外部RAMポインタIXに代入するマクロ。J=1でなければ正常動作しないはずなので注意。本ルーチンを引数固定で呼び出すルーチンがいくつかあるので,下表に示す。

アドレス 機能
\$022E IY=BA-1
\$022A BA=\$67B0,IY=\$67B0-1
\$0232 BA=\$6650,IY=\$6650-1
\$0238 BA=\$2080,IY=\$2080-1

各種テーブル

ジャンプテーブル

IOCSと呼ぶ人もいるようだが?

アドレス 飛び先 機能
8000 8930
8003 8D2F
8006 AC85
8009 879D
800C D690
800F D1D4 全画面表示
8012 A92C
8015 AADC
8018 D702
801B 9062
801E 8FBD
8021 A305
8024 04B4
8027 04B6
802A 0516
802D 0518
8030 054E
8033 0550
8036 9AF2
8039 8BFF
803C 8C83
803F 8C32
8042 CF55

中間コードテーブル

マーク(下位ニブルが文字数),予約語,中間コード,アドレス となっている

予約語 中間コード アドレス マーク
AREAD E1 C41F B5
AND A1 8781 A3
ABS 99 8781 A3
ATN 9F 8781 A3
ASN 9D 8781 A3
ACS 9E 8781 A3
ASC A4 8781 A3
BEEP C4 C147 B4
CONT B2 C4C4 F4
CLEAR C9 C17B C5
CLOAD B7 9695 E5
CSAVE B6 9513 C5
COS 96 8781 E3
CHR\$ A8 8781 A4
CALL CC C191 A4
CLS CE C0FA E3
CHAIN E5 963C A5
CURSOR CF C10C A6
DIM CB BD7B B3
DEGREE C1 C3A8 E6
DEG 9B 8937 E3
DMS 9C 893E A3
DATA DC C41F A4
END D8 C324 B3
EXP 93 8781 A3
EQU# B9 C624 84
FOR D5 BE0F D3
GOTO C6 BFC4 B4
GOSUB E0 BFFA E5
GRAD C3 C3B8 A4
INPUT DF C4E5 F5
IF D4 C29D E2
INT 98 8781 A3
INKEY\$ AD 8781 A6
LIST B4 C596 D4
LLIST B5 C7D6 C5
LPRINT E2 C786 C6
LOG 92 8781 A3
LN 91 8781 A2
LET D6 C066 A3
LEN A6 8781 A3
LEFT\$ AB 8781 85
MEM AF 8781 D3
MEM# BA 8781 C4
MID\$ AA 8781 C4
MERGE B8 96BD C5
NEXT D9 BEB2 D4
NOT A3 8781 A3
NEW B1 BC72 A3
ON D3 C3C0 F2
OR A2 8781 A2
PRINT DE C6E1 B5
PASS B3 C437 E4
PI AE 8781 C2
PEEK A7 8781 C4
POKE CD C1AE A4
PAUSE DD C348 E5
RUN B0 BD07 B3
RETURN E3 C2D6 C6
READ DB C1EF A4
RESTORE E4 C26D A7
RND A0 8781 A3
RANDOM C0 C0F7 A6
RIGHT\$ AC 8781 E6
RADIAN C2 C3B0 C6
REM D7 C2CF E3
STOP DA C33C B4
SQR 94 8781 A3
SIN 95 8781 A3
SGN 9A 8781 A3
STR\$ A9 8781 A4
STEP D1 0FC1 A4
THEN D2 0FC1 F4
TAN 97 8781 E3
TRON C7 C340 A4
TROFF C8 C344 E5
TO D0 0FC1 E2
USING CA C5F8 F5
VAL A5 8781 F3
WAIT C5 C384 94

フォントROM

\$8045~
抜けは詰められている

その他

CALL文用ジャンプポインタ

\$66DBに\$79(JP命令),\$66DC~\$66DDにCALL文の引数(飛び先)が入る。
CALL文の内部でCALL \$66DBとして間接コールを実現している。
リロケータブルプログラムの間接ジャンプに活用可能。

参考文献

  1. シャープポケットコンピュータ機械語マニュアル,シャープ株式会社 工学社企画・編集,工学社,1986
  2. PC-1261の小技:マイブーム,Jimmy, http://cyndi.cocolog-nifty.com/blog/2007/07/pc1261_4ea9.html ,2019/01 閲覧
  3. ポケコン SHARP PC-1401 SC61860 機械語資料,VisualBasist, http://gojigen.myhome.cx/SC61860.html ,2019/01 閲覧
  4. ポケコンマシン語入門,I/O編集部 編著,工学社,1984
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