こんばんは。今回はポエムです。
中小企業の社内ベンチャーみたいな感じで、プログラム医療機器に手をだして(N=5〜10)得られた知見を共有します。
スタートアップは、プログラム医療機器に手を出すな
めっちゃ法律の壁が高すぎて、
手持ちのスタートアップメソッド(古くはリーンスタートアップとか)がことごとく使えませんでした
一個一個、法律の壁をクリアするための、プログラム開発の本質ではない組織づくりや事務手続きをこなす必要があり、
製品が市場に出る前に、おそらく体力(資金)がつきます。尽きました。
アンチパターン1「プログラム医療機器」と「医療機器プログラム」の違いを理解する(精神論)
最初に精神論です。
あなたが、両者の違いを「理解」しようとしている時点で、おそらくエンジニア気質であるので
この業界に向いていません。
「プログラム医療機器」と「医療機器プログラム」は、いずれも医療の法律の用語なので、それぞれ異なる意味の定義がされているだけなんです。
法律と医療の世界では、だいたいこんなワールドが展開されています。
一方エンジニア界に済んでいる人たちに置きましては
あなたの会社の新入社員が、変数にこんな名前の付け方してたら、まず真っ先に理由を告げて修正してもらいますよね??
だいぶ住む世界がことなっていて、度々話が噛み合いません。
対応:医療や法律分野での人間を「通訳」としてチームに入れるなど。
アンチパターン2 大学との共同研究から始める
共同研究から始めると、いくつか問題が有ります。
まず共同研究を初めてしまった場合、「大学(組織)」「研究者」2種のステークホルダーができあがります。
それぞれの目的はおおむね次のとおりです。
- 企業は、自社の製品を売りたい
- 大学(組織)は、研究費を企業からあつめて売上を上げたい + 特許を取るなど対外実績を作りたい
- 研究者(パターン1)は、特許を取りたい or 論文を書きたいなど対外実績を作りたい
- 研究者(パターン2)は、真に社会課題を解決したい
見ての通り、向いている方向がバラバラです。
大学と研究者がたまたま同じ方向を向くことは有りますが、少なくとも企業とは一致しません。
これだけならまあよくあるビジネスの話なのですが、これにパワーバランスが加わります。
私が経験してきた印象は次のとおりです。
大学>=研究者>>>>>>>>>>>>スタートアップ企業
参考:令和5年度 春期応用情報 午前1 問70 には次のような問題があります。
これの答えは「ゥ」らしいですが、
実際はそんな対等なわけないからな!
企業が費用100%持ちなのに、研究者側のパワーが強くて、作業分担が企業99:1だったりがザラだからな!
対応:大学発スタートアップとかするといいんじゃないでしょうか。少なくともどこぞのウマの骨とも知らんスタートアップより家はあたりが柔らかなたり、同じ方向を向きやすくなったりしそうです。
アンチパターン3「販売チャンネルがない状態で医療機器を目指す」
ここでいう販売チャンネルとは2種類のことをさしており
- 医療機器を売ることを許可された「医薬品製造販売業許可」を持っている企業のこと
- ある分野で権威のある大学教授や学会のこと
のことです。
医薬品製造販売業許可がないとそもそも売れないし、
よしんば医薬品製造販売業の会社が、製造販売で責任持ちますよ、売りますよってなったとしてもポツンポツンと数個売れておわりです。
地方にいると、どうもまだ大学とその傘下の開業医みたいな構図があるので、
鶴の一声で数百のクリニックに一気に導入されるとかザラだし、
その逆も然りで、そういう大学の偉い人の許可がないと、導入に難色を示されます。
(20〜30代の若い開業医の先生方は、あんまりそういう感じはしないのですが)
対策:初手=販売チャンネルづくりです。
ただしそういうとこに話持ってくには、ある程度完成したものじゃないと軽くあしらわれてしまうのもまた事実。うーん。どうしたらいいのか。(未解決)
アンチパターン4「医療機器化のための予算を確保しない」
医療機器化するにはなんさま金と時間がかかります。
知り合いの医療機器(ハード)の社長さんは「10年は耐え忍べよ」とおっしゃっていました。
平均値でそんな感じだと思います。
特に
- 医薬品製造販売業許可
- 医療機器
の要件をとるのにお金がかかります。
金額面は、だいぶ昔に調べた値を記憶しているだけなので曖昧ですが
- 医薬品製造販売業許可は、事務経験のある人を管理責任者としてやとわなければならないので、初年度で1000万くらい
- 医療機器 ... クラス2の新規医療機器にする場合700万円くらい+臨床試験は別持ちなので、やっぱりトータルで1000万くらい
の費用感です。最低2000万。
また臨床試験を行うのにもかなりの時間を有します。
Apple Watchの心電図の医療機器が2018年に発表されてから、日本で医療機器プログラムとされるまで、2年ほどかかっています。
雑に開発後から2年は収入がないと考えてください。
対策:予め予算と期間を考えておく
いかがだったでしょうか、
医療機器はこれほどまでスタートアップと相性が悪かったのです
無論、全部が全部このパターンってわけではなくて、
例えば体力のありそうな大企業の社内ベンチャーとかはこの限りではないかもしれません。